2021年度の総務省の統計でスマートフォンの世帯保有率は88.6%と、生活に欠かせない存在となっているが、使いすぎにも注意が必要だ。1日に2時間以上使う人は「スマホ認知症」に要注意というデータもある。
使い過ぎが原因で“脳過労”の状態「スマホ認知症」
この記事の画像(17枚)スマートフォンは日常生活に必要不可欠なツールになったが、使いすぎると「もの忘れ」や「言語障害」といった、認知症と同じような症状を起こすことがわかってきた。スマホを1日2時間以上使うという人は、注意が必要という。
女性A:
(1日に)2~3時間見ているかな。気づいたら触っちゃうんで
男性:
たぶん、12時間以上見ていると思います。起きているあいだ、ずっとです
女性B:
目的なく見ています。忘れっぽいです
女性C:
4時間くらい見ちゃうかもしれない。(Q.疲れたとか忘れっぽいなと感じたことは)ある…。これしようって思っていたのに、1分後に「あれ?何しようとしてたっけ」って
「スマホ認知症」の患者を数多く診察している、岐阜県岐南町の「おくむらメモリークリニック」の奥村歩先生に話を聞いた。
奥村先生は脳神経外科が専門だ。
2018年に「スマホ認知症」の危険性を指摘すると、2022年、その対策について記した本を出版した。
奥村歩先生:
肝心な時、必要な時に、重要な情報を取り出すことができない。それで生活に支障が出るのが、「スマホ認知症」なんですね。スマホの使い過ぎが原因で脳の働きが低下する、これを「脳過労」と言っていますが、そのことによって認知症のような状態になっている方が非常に多いんです
20代から50代という働き盛りの世代にも多く見られるという「スマホ認知症」。ひどくなると、「めまい」や「睡眠障害」、そして「うつ症状」が出てくることもあるという。
奥村先生は「スマホ認知症」の原因は、何気なく長時間スマホを使うことで起こる「脳の過労」と話す。
「使いすぎ」と「使用制限」で脳の状態の違いは一目瞭然
奥村先生のクリニックで受診する人にいつも行う、脳の過労度を測る「10のチェックリスト」がある。
・もの忘れが増えた
・名前がすぐに出てこない
・何かを取りに来て目的を忘れる
・約束を忘れる
・3日前何をしていたか思い出せない
・話題のニュースを3つ挙げられない
・最近漢字が書けなくなった
・最近簡単な計算を間違える
・検索すればわかることは覚えない
・スマホに頼って道を覚えられない
リポーターが試してみたところ、10のチェックリストのうち、5つに該当した。
奥村歩先生:
そうすると残念ながら、「脳過労」のチェックには該当するということになります。脳がちょっと疲れている。情報処理能力が、本来の自分より低下しているということ
スマホを使い過ぎたときの脳の状態を表す画像を見ると、青い部分は脳が過労状態になっていることを表している。
スマホの使用を制限したところ、青い部分は減少した。
脳の疲れが回復したことがわかる。
脳の「過労状態」の理由と解消法
なぜスマホを使いすぎると、脳は過労状態になるのか。ヒトの脳には、情報を取り入れること(入力)、そして取り入れた情報を整理整頓すること(整理整頓)、最後に必要な情報を取り出すこと(取り出し)、という大きくわけて3つの役割がある。
ところが、スマホを長時間使うと、情報過多となり取り出すことができなくなるという。1日あたりの情報量は江戸時代の人の1年分ともいわれていて、その多くをスマホから得ている。
奥村先生によると「情報処理ができなくなり、脳の中がゴミ屋敷のような状態」になっていて、情報入力を遮断しない限り、整理整頓の機能が働かない。
「スマホ認知症」を予防するためには、脳の疲労を取る必要がある。ポイントとなるのが、一定のリズムで動作を行うことだ。例えば「キャベツの千切り」や「皿洗い」、「ジョギング・散歩」「靴磨き」などがおすすめで、動きに意識を集中させると、脳がリラックスした状態になるという。
奥村先生は、毎日10分程度でいいので、脳をリラックスさせる時間を作ると、スマホ認知症の予防に効果的と説明している。
それでもついスマホを見てしまうという人には「タイムロッキングコンテナ」というグッズもある。様々なタイプがあるが、専用ケースにスマホを入れてロックすると設定した時間内は、電話機能以外使用できなくなる「禁欲ボックス」ともいわれる商品もある。
脳の過労状態が続くと、本当の認知症につながっていく危険性も高い。
奥村歩先生:
日本人は、認知症の有病率が世界でもダントツに高いんです。本来の認知症、アルツハイマー型認知症は、脳が疲れて神経細胞が疲れ果てた老廃物が原因です。そもそも脳が疲れること自体、スマホ認知症を予防する毎日の運動、散歩、リズム運動は、アルツハイマー型認知症予防にも役立つんです
2023年2月15日放送
(東海テレビ)