2018年、愛知医科大学病院に入院していた生後7カ月の男の子が、突然意識不明になった。2023年5月、両親は「医療ミスが原因」だとして裁判を起こしたが、5年近くが経過したこのタイミングでの提訴には、息子を想う母の苦しみがあった。
母「昼間と打って変わって本当に変わり果てた姿になっていて…」
動画の中で、母親の声に応えるように病院のベッドで体を動かす、当時生後7カ月のれお君。
この記事の画像(14枚)愛くるしい姿を見せていたが、この翌日、れお君は意識不明の重体になった。今も意識が戻らないまま、5年が経とうとしている。
母親:
本当に今思い出しても涙が出るんですけど、昼間と打って変わって本当に変わり果てた姿になっていて
名古屋市に住むれおくんの母親は、明らかに不審な点があったと語る。
母親:
私の素人目で見ても、「あ、やばいことが起きたな。良からぬことが起きたな」と
訴状などによると、問題の始まりは2018年7月。当時7カ月だったれお君は、ウイルス性の肺炎と気管支炎を発症。長久手市にある愛知医科大学病院の集中治療室に入院していた。
症状は回復に向かっていたが、容体が急変した。
母親:
瞳の光をすべて失ってしまって、ずっと特殊なしゃっくりのようなものをしていて。口からは延々とよだれがずっと流れ続ける状態で。今にも壊れてしまいそうなガラス細工のように思えてしまって
突然、意識不明となったれお君。一命は取り留めたものの、30分ほどにわたって心臓がとまったことで重度の低酸素脳症となり、5年が経った今も意識が戻っていない。
れお君の母親は、重大な医療ミスがあったと話す。
母親:
(事故直後)病院長が「病院は真っ黒です」と、「病院に全責任があって、病院は真っ黒だ」と
母親が病院から受けた説明によると、容体が急変する直前、れお君のベッドの周りには看護師3人が集まっていた。
そして、れお君の体の向きを整えようと体を持ち上げて下ろした際、気管に挿入されていた酸素を送る管が外れたという。
母親:
本来であれば、その場で速やかに医師に報告して再挿管をすれば、何事も起こらないんですけれども、看護師さんがその後、人工呼吸器のアラームが鳴った直後に、左手で(管を)押し込みました
酸素を送る管は、誤って気管ではなく「食道」に挿入されていた。
当時、病院側は、酸素を送る管が気管から外れ食道に入っていたことや、看護師の対応に問題があったことは認めたものの、未だ原因の究明はなされていない。
母親:
事故が起きてすぐに他の病院にも連絡をしたんですけれども、幼い子供、しかも呼吸器が事故によって24時間離せなくなってしまったことで、なかなか受け入れが難しいと
受け入れ先がなく、今もこの病院に入院し続けているれお君。
医療事故の1年半後には、別の看護師がれお君の陰部を消毒する際に、誤って通常の500倍の濃さの消毒液を使用し、化学熱傷を負うミスがあったという。
母親:
何度も事故を繰り返さないというのもそうですし、命に対して真摯に向き合ってほしい
2022年12月、ベッドの上で5回目の誕生日を迎えたれお君。
母親:
これが今年のクリスマスですね。息子は目が見えないんですけれども、少しでも季節を感じてほしいなと思って。朝日が昇るのを見ると、今日もまた1日息子と過ごせるなという思いがわいてくるので
両親は2023年に入り、業務上過失致傷の疑いで、看護師3人を愛知県警に刑事告訴。さらに約1億7000万円の損害賠償を求めて病院側を提訴したが、事故から5年近くが経ったこのタイミングになった背景には、息子を想う母の苦しみがあった。
母親:
度重なる事故と、目の前の息子の命を守ることに精一杯で、息子を守るということに全力を尽くした結果、今となったということです
問題の病院に入院し続けているれお君を守りたい。葛藤を続けてきたが、民事と刑事ともに「時効」となる5年が迫り、決断した。
母親:
時効が来たら息子の事故自体をなかったことに、闇に葬られてしまうのではないかということで。小さな子の前で大の大人が隠蔽したり誤魔化したり、そんな恥ずかしいことはこれ以上してほしくないなと
5月26日、両親が真相解明を求める民事裁判の第一回口頭弁論が開かれた。裁判で病院側は「看護師は気管から管が抜けた可能性を疑ったものの、認識はしていなかった。管を押し込んだ事実も認められない」と主張し、争う姿勢を示した。
母親:
以前認めていたものを、この期に及んで全部覆してくる。答弁書を読ませていただいた第一印象は、見苦しいの一言ですね。重大な事故を起こしているという認識を、まず病院には持っていただきたい
(東海テレビ)