マイナンバーカードを健康保険証として利用できる「マイナ保険証」。
命につながる大事な情報が、別人の情報にひも付けられる“誤った登録”が問題になっています。
政府は2024年秋までに健康保険証の廃止と「マイナ保険証」への一本化を進めていますが、これに対して、医師や歯科医師でつくる団体「全国保険医団体連合会」が運用停止を訴える“異例の事態”に発展しました。
全国保険医団体連合会 住江憲勇 会長:
医療事故など発生してからでは遅い。デジタル化が人の命より優先されることはありえない。マイナ保険証義務化(健康保険証廃止)法案は廃案すべき。
その理由は、全国の医療機関に対して行った調査結果。
全国保険医団体連合会 竹田智雄 副会長:
トラブル件数は1429件でございます。「資格無効・該当なし」が67%で最多。「他人の情報がひも付けられていた」 が37件ございました。
29日までに報告があった東京や大阪など10都府県の医療機関で、「他人の情報にひも付けられていた」との回答を今年4月以降、少なくとも37件確認。
本人の情報のほかに、氏名や生年月日が異なる2人分の情報が表示されたケースもあったといいます。
一歩間違えば、処方する薬を間違え、医療事故にもつながりかねない危険な“問題”。
その他にも、患者の情報が正しく反映されない、読み取り機やパソコン、カードの不具合で情報が読み取れなかったケースもあったといいます。
全国保険医団体連合会 竹田智雄 副会長:
医療情報において(誤登録は)1件たりともあってはならない。医療崩壊が目に見えていますので、なんとしてでも保険証をとにかく残してください。
医療現場では、今、何が起きているのでしょうか?
「いとう王子神谷内科外科クリニック」の伊藤院長に話を聞くと…。
いとう王子神谷内科外科クリニック 伊藤博道 院長:
1日だいたい100人から130人ぐらい(診察している)。1人から2人ぐらいはそういう該当なしという方がいるんですね。このままいったら現場で毎日、大混乱。スタッフも本来の業務の以前の問題で、機械がきちんと患者さんの情報を電子カルテに取り込めないっていうレベルで止まってしまって、本来の業務に移行できる前に時間・労力を取られてしまうと思います。
「マイナ保険証」を読み取ると「資格無効」や「該当なし」などの表示が出る人が、毎日1人から2人いるといいます。
伊藤院長によると、今年の3月に保険証を変更したという男性の情報が、2カ月たった今も「該当なし」と表示されています。
中には、登録はされているものの、名前に「はしごだか」や「たつさき」など、いくつかの種類のある漢字が「●」になってしまい、正しい名前が表示されず保険証が使用できないケースも。
現在、厚生労働省のホームページによりますと「マイナ保険証」を登録しているのは、5月21日の時点で約6200万人。
政府は2024年の秋には健康保険証の廃止を目指していますが、伊藤院長は慎重な姿勢を崩しません。
いとう王子神谷内科外科クリニック 伊藤博道 院長:
(今は)現物の保険証が補うっていう段階なんじゃないかと思うんですよ。まだ、あくまで保険証がメインで、それがないときとかをマイナ保険証が補っていると。最後の段階になってほとんど問題点がないところまできた時に、初めてマイナ保険証がもう99%で。(そこでようやく)保険証はなくてもいいかどうか?という議論ができるんだと思うんです。現場としては、やはり保険証をなくして、マイナ保険証だけでやっていけるレベルにはまだまだ達してないというふうに思います。
(めざまし8 「わかるまで解説」より5月30日放送)