ウクライナのゼレンスキー大統領がアジアで初めて来訪するなど大きな話題となったG7サミット。会場となった広島市で日本自動車工業会(自工会)が19日~22日まで脱炭素に向けた最新技術を搭載した日本の自動車を数多く展示するイベントを行った。G7にあわせ、環境問題への対応に寄与する姿勢をアピールした形だ。
G7開催の広島で「日本の強み」をアピール
このイベントのキーワードは「多様な選択肢」だ。
開催に先立って行われた記者会見で自工会の豊田章男会長は「技術の多様性こそが、これまで培ってきた日本の自動車産業の強み」「日本らしいカーボンニュートラルへの山の登り方を提案したい」と強調し、それを体現した催しとなった。

世界では、ヨーロッパのメーカーのほとんどが「EVに特化する」方針を発表し、中国もEVシフトを加速させている。
こうしたなか、「全方位戦略(オールパスウェイ)」を掲げてきたのが日本の自動車業界だ。
今回のイベントには、多様な技術をが強みだとする日本メーカーがその多様性を世界に向けて発信するねらいがあった。
EV、水素燃料車、バイオマス燃料車までフルラインナップ
会場には、乗用車から軽自動車、二輪車までフルラインナップがそろった。
EV=電気自動車はもちろん、水素燃料電池車、バイオマス燃料車のほか、牛のふんに含まれるメタンを活用するタイプなど、「脱炭素」に向けた最新車が勢ぞろいした。

トヨタは、「水素」を前面に出し、開発中のSUVタイプの水素エンジン車やいすゞや日野自動車と協力してつくった大型トラックなどを展示したほか、日産は、最新のEVと給電システムを展開、広島が本拠地のマツダは、使用済みの食用油などを活用できるバイオマス燃料車でアピールした。
重さ10キロの持ち運べるバッテリー
着脱式の充電池システムと、それを利用した電動バイクなどを並べたのがホンダだ。
取り外せるバッテリーは重さ10キロほどで、女性が持ち運ぶこともでき、災害時の緊急電源としても利用できる。

報道陣とともに会場を回ったホンダの三部敏弘社長は、自ら手に取り、「交換式バッテリーがインフラとして広がればそれを使うモビリティも広がっていく」と強調した。
「世界が日本から学んでいる」
G7の舞台、広島で発信された「脱炭素の多様なニーズに応える」という日本の自動車業界のメッセージ。
会場には、海外からの観光客やメディア関係者の姿が多く見られた。

ニュージーランドから自動車関連の仕事で来日したという人は、「世界が日本から学んでいる。日本の取り組みがとても好きだ」と話していたほか、G7を取材中だというベルギー人は「新しい技術に触れるのは非常におもしろい」と興味深そうに会場を回っていた。

脱炭素をめぐる技術革新が急速に進むなか、開発競争は激化し、主導権争いはし烈さを増している。
「多様性」という日本らしさで、世界をリードできるのか。
今後の貢献度が引き続き問われることになる。
(執筆:フジテレビ自動車担当 木沢基)