ウクライナのゼレンスキー大統領がアジアで初めて来訪するなど大きな話題となったG7サミット。会場となった広島市で日本自動車工業会(自工会)が19日~22日まで脱炭素に向けた最新技術を搭載した日本の自動車を数多く展示するイベントを行った。G7にあわせ、環境問題への対応に寄与する姿勢をアピールした形だ。

G7開催の広島で「日本の強み」をアピール

このイベントのキーワードは「多様な選択肢」だ。

開催に先立って行われた記者会見で自工会の豊田章男会長は「技術の多様性こそが、これまで培ってきた日本の自動車産業の強み」「日本らしいカーボンニュートラルへの山の登り方を提案したい」と強調し、それを体現した催しとなった。

豊田章男会長(自工会記者会見 5月18日) 
豊田章男会長(自工会記者会見 5月18日) 
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 世界では、ヨーロッパのメーカーのほとんどが「EVに特化する」方針を発表し、中国もEVシフトを加速させている。

こうしたなか、「全方位戦略(オールパスウェイ)」を掲げてきたのが日本の自動車業界だ。

今回のイベントには、多様な技術をが強みだとする日本メーカーがその多様性を世界に向けて発信するねらいがあった。

EV、水素燃料車、バイオマス燃料車までフルラインナップ

 会場には、乗用車から軽自動車、二輪車までフルラインナップがそろった。

EV=電気自動車はもちろん、水素燃料電池車、バイオマス燃料車のほか、牛のふんに含まれるメタンを活用するタイプなど、「脱炭素」に向けた最新車が勢ぞろいした。

牛のふんを燃料にした車
牛のふんを燃料にした車

トヨタは、「水素」を前面に出し、開発中のSUVタイプの水素エンジン車やいすゞや日野自動車と協力してつくった大型トラックなどを展示したほか、日産は、最新のEVと給電システムを展開、広島が本拠地のマツダは、使用済みの食用油などを活用できるバイオマス燃料車でアピールした。

 重さ10キロの持ち運べるバッテリー

着脱式の充電池システムと、それを利用した電動バイクなどを並べたのがホンダだ。

取り外せるバッテリーは重さ10キロほどで、女性が持ち運ぶこともでき、災害時の緊急電源としても利用できる。

取り外せる10キロほどのバッテリーを持つホンダの三部敏弘社長
取り外せる10キロほどのバッテリーを持つホンダの三部敏弘社長

報道陣とともに会場を回ったホンダの三部敏弘社長は、自ら手に取り、「交換式バッテリーがインフラとして広がればそれを使うモビリティも広がっていく」と強調した。

「世界が日本から学んでいる」

G7の舞台、広島で発信された「脱炭素の多様なニーズに応える」という日本の自動車業界のメッセージ。

会場には、海外からの観光客やメディア関係者の姿が多く見られた。

ベルギーから来た人は「新しい技術に触れるのは非常におもしろい」と話した
ベルギーから来た人は「新しい技術に触れるのは非常におもしろい」と話した

ニュージーランドから自動車関連の仕事で来日したという人は、「世界が日本から学んでいる。日本の取り組みがとても好きだ」と話していたほか、G7を取材中だというベルギー人は「新しい技術に触れるのは非常におもしろい」と興味深そうに会場を回っていた。

バイオマス燃料車と合成燃料車
バイオマス燃料車と合成燃料車

脱炭素をめぐる技術革新が急速に進むなか、開発競争は激化し、主導権争いはし烈さを増している。

「多様性」という日本らしさで、世界をリードできるのか。

今後の貢献度が引き続き問われることになる。

(執筆:フジテレビ自動車担当 木沢基)

木沢 基
木沢 基

フジテレビ報道局経済部記者。記者歴3年。
電動化を進める自動車業界や、コロナ禍を経て変革している小売り業界などを担当した後、現在は内閣府、消費者庁を担当。

経済部
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「経済部」は、「日本や世界の経済」を、多角的にウォッチする部。「生活者の目線」を忘れずに、政府の経済政策や企業の活動、株価や為替の動きなどを継続的に定点観測し、時に深堀りすることで、日本社会の「今」を「経済の視点」から浮き彫りにしていく役割を担っている。
世界的な課題となっている温室効果ガス削減をはじめ、AIや自動運転などをめぐる最先端テクノロジーの取材も続け、技術革新のうねりをカバー。
生産・販売・消費の現場で、タイムリーな話題を掘り下げて取材し、映像化に知恵を絞り、わかりやすく伝えていくのが経済部の目標。

財務省や総務省、経産省などの省庁や日銀・東京証券取引所のほか、金融機関、自動車をはじめとした製造業、流通・情報通信・外食など幅広い経済分野を取材している。