来年、創業140周年を迎える老舗旅館「つるや」は後継者がいないという問題に直面していた。そんな中、「加賀屋グループ」がつるやを買い取り、加賀屋の5代目社長が経営者として事業を引き継ぐことに。新社長に老舗旅館の改革や、北陸新幹線の県内開業に向けた戦略などを伺った。

「加賀屋」元社長による“老舗旅館改革”

福井・あわら市には県内屈指の温泉街「あわら温泉」がある。「関西の奥座敷」とも呼ばれ、特に冬のカニシーズンには県内外から大勢の人が訪れる。

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そのあわら温泉で最も古い旅館の1つが、明治17(1884)年創業の「つるや」だ。2024年には140周年を迎え、戦争、地震、大火を乗り越えてきた。

ただ近年、後継者がいないという問題を抱えてきた。それが解決されたのは2022年5月。“日本一の旅館”とも呼ばれる石川の「加賀屋グループ」が買い取り、5代目社長がつるやの経営者として事業を引き継いだからだ。

旅行業界で最も権威と歴史のあるランキング「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」で、加賀屋は通算40回以上、総合1位に輝いているのが、石川・和倉温泉にある「加賀屋」だ

加賀屋の5代目社長として手腕を振るっていた小田與之彦さんは2022年5月、経営の拠点を石川から福井に変えて、老舗旅館「つるや」の改革を進めている。

つるやの経営者として事業を引き継いだ小田與之彦さん
つるやの経営者として事業を引き継いだ小田與之彦さん

あわら温泉 つるや・小田與之彦社長:
あっという間の1年だった。旅館の規模が違うが、やっていることはお客さまに喜んでいただくことで、基本的には変わっていない

後継者がいなかったつるやの前社長から相談を受ける形で、加賀屋グループが買い取った。その後、つるやはグループから独立。小田さんは加賀屋の若おかみだった妻・絵里香さんと従業員5人を連れ、つるやの経営に専念することになった。

背景には2022年、加賀屋の代表取締役に復帰した父との間で「目指す路線や考え方の違い」があったからだという。

あわら温泉 つるや・小田與之彦社長:
私の考えは現場で一番お客さまをみている人が正しいと思う考え方を採用して、それを方向付けるというもの。今の時代はエンパワーメント(権限の委譲)が大切だと思う

加賀屋で培ったノウハウを活用

小田社長は「あわら温泉には良いものがたくさんあるが、全国に周知されていない」と指摘する。その分、“伸びしろ”と“可能性”を感じている。

つるやでは老舗旅館の良さを残しながら、ハードとソフトの両面で独自の改革を進めている。

そのうちの1つに厨房(ちゅうぼう)の場所の移動がある。1階にあった厨房を2月、宴会場のある2階に上げた。配膳の負担を軽減し、「おもてなしの時間を増やす」のが狙い。客の満足度向上を図る。

加賀屋で培ったノウハウを導入し、宿泊客との接点を増やしたり、従業員を社員化したりと改革を続けている。

「新幹線と温泉」の関係構築

そして、2023年春の新幹線県内延伸に向けては、北陸の温泉地全体の連携強化を呼びかける。石川・富山・福井の3県が北陸新幹線で結ばれることで、「温泉新幹線(おんせんしんかんせん)」をキーワードとともに、「北陸=温泉」というイメージづくりを図りたいとしている。

温泉地全体の連携強化を呼びかけている
温泉地全体の連携強化を呼びかけている

あわら温泉 つるや・小田與之彦社長:
富山には「黒部宇奈月温泉駅」、石川には「加賀温泉駅」があり、福井にも「芦原温泉駅」ができる。3県の温泉街が連携をとって、旅行に行くなら北陸新幹線。北陸新幹線に乗ったら温泉に行くという流れをつくっていきたい

(福井テレビ)

福井テレビ
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