基地のない平和な島の実現を願った復帰から2023年で51年となるが、依然として広大なアメリカ軍基地は横たわり、基地が汚染源と見られる水の汚染も続いている。 

県民の命にも関わるこの問題に県や自治体も対策を講じているが、根本的な解決には至っておらず、市民の不安も続いている。 

総事業費1億1000万円あまりをかけて整備したものは... 

豊富な湧き水を利用したビオトープが作られた宜野湾市の公園。 

この記事の画像(28枚)

なんの変哲もないように見える公園のせせらぎだが、子どもたちが水に触れられる環境を整えるには多くの時間がかかった。 

公園の一角に作られた施設は、有機フッ素化合物・PFASを除去するための施設。 

宜野湾市 松川市長: 
市民の不安が少しでも和らげばいいという思いで手がけています 

湧き水からは2020年、人体に有害な有機フッ素化合物・PFASが国の暫定指針値のおよそ4倍、210ナノグラムの値で検出されたのだ。 

このため市は防衛省の補助金の活用と一部を市が負担し、総事業費1億1000万円あまりをかけて水処理施設を完成させた。 

PFASは発がん性のほか、子どもの成長に悪影響も 

有機フッ素化合物・PFASの問題が発覚したのが2016年 

県企業局 平良敏昭 局長(当時): 
PFOSが企業局の水源である北谷浄水場の水源である比謝川や嘉手納井戸群において、他水源と比較して高濃度で検出されました

沖縄市や那覇市など中南部の7つの市町村に水を供給する県内最大の北谷浄水場。 

およそ45万人に供給される水道水に含まれていた有機フッ素化合物・PFASはアメリカ軍が使用してきた泡消火剤に含まれ、発がん性のほか子どもの成長に悪影響を及ぼす可能性が指摘されている。 

2016年にPFASが検出されてから県が取ってきた対策とは。 

県企業局 配水管理課 國吉真也 危機管理室長: 
二つ大きな対策とっておりまして、まず一つはダム水を活用することによりまして、中部水源をなるべくとらないようにすることです。取水停止または抑制するということをやっております 

対策1 中部の河川からの取水停止

北谷浄水場の取水源である比謝川などの河川で高濃度のPFASが検出されていることから、そこからの取水を停止・抑制した。 

2018年度の北谷浄水場の取水の割合は中部河川が25%あまり。 

2022年度はそれを0.4%まで抑制した。 

不足する分は国が管理するダムからの取水と、海水淡水化センターの生産量を増やして補っている。そのため、少雨傾向などでダムの貯水率が下がったときには、再び中部河川からの取水を再開しなければならない。 

県企業局 配水管理課 國吉真也 危機管理室長:
渇水が起こった場合、断水を回避するためにはどうしても中部河川を取らざるを得ないという場合が発生することもありうると思っています 

対策2 高性能の粒状活性炭の導入 

そしてもう一つの対策は、PFASの除去に効果があるとされる高性能の粒状活性炭の導入だ。 

2021年度から取り換え工事が行われた結果、水道水に含まれるPFASの値は低減されているという。 

県企業局 配水管理課 國吉真也 危機管理室長: 
2023年の1月以降は1未満ということで、ほぼ検出されてないという状況が続いています。両方の対策が効いているものだと思っております 

県の取り組みで北谷浄水場から供給される水道水のPFAS濃度は1リットルあたり3ナノグラムとなり、厚生労働省の暫定目標値50ナノグラムを下回っている。 

ただ、アメリカではPFASの毒性を重くみて、1リットル当たり4ナノグラム以下という規制値案が示されていて、日本でも国民の命の守るための方策が求められている。

PFASを除去するための活性炭導入の総工費は16億円にのぼり、その費用の3分の2は防衛省が補助しているものの、残り3分の1にあたる5億円あまりは県が負担。 

県は発生源の汚染除去をしなければ高額な費用が恒久的に必要となるため、基地内への立ち入り調査をもとめているものの、問題発覚から7年経った今なお実現していない。 

人権が侵されている、それが子どもたちに及んでいることが一番むなしい 

町田直美さん: 
この現状を、1人でも多くに知らせたいなと、それだけです 

こうした現状に目を向けてもらおうと、宜野湾市役所の前では2022年から毎週土曜日、市民の有志によるスタンディング活動が続けられている。 

照屋正史さん: 
汚染については、原因者が負担すべきだと思います。そういう点からいうと、非常に腑に落ちません。まずは原因者を探す、汚染源を探す。そして原因者に負担していただいてっていうのが一番筋が通っていると思いますので、それを目指したいです 

市民は県民集会を企画したり、基地に隣接する小学校の土壌調査を独自に実施するなど活動を続けてきた。 

町田直美さん: 
人権が侵されているんだっていうことを沖縄の人たちってあまりわかっていなくて、それが子どもたちに及んでいることが一番むなしいです。もっと子どもたちの未来、沖縄の未来が今の状況よりも少しでも良くなってバトンタッチしたいと思っています 

生活に欠かすことができない水に起きた問題に、市民が声を上げ続けなければならない状況が続いている。 

沖縄テレビ
沖縄テレビ

沖縄の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。