G7広島サミットは5月19日金曜からだが、各国の首脳による原爆資料館の見学や被爆者との面会が調整されている。自身も過酷な被爆体験をもつ原爆資料館の元館長は、首脳らが被爆証言を直接聞くことの重要性を強調する。

火の海の中、人の体を踏んで逃げるしかなかった

原田浩さん、83歳。1993年から4年間、原爆資料館の9代目の館長を務め、国内外から資料館訪れた要人たちを案内してきた。

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原田浩さん:
リストが、これです。アメリカ、コロンビア…

原爆資料館の訪問者リスト
原爆資料館の訪問者リスト

被爆50年の1995年には、当時の天皇皇后両陛下(現上皇后両陛下)のほか、ドイツ統一に貢献したワイツゼッカー元大統領などが原田さんの案内で資料館を見学。

ワイツゼッカー元大統領は、「ヒロシマを訪れたことのある人々は、以後生きている限り、世界に平和のメッセージを伝えることだろう」という言葉を残している。

原田さんが案内をする時に大切にしていたのは、自身の”被爆証言”だ。

原田さん:
いきなり閃光(せんこう)がはしって、あとに爆風が来たわけですが、火の海の中を逃れるだけで精いっぱい。死体というか、生きた人もいたと思うけど、その上を踏んで逃げるしかなかった。それは現在でも非常に心が痛む…

原田浩さん(83)
原田浩さん(83)

原田さんは6歳の時、爆心地からおよそ2キロの広島駅で被爆。

遺体を踏んで逃げた時の感触は、いまも鮮明に記憶に残っているという。

“世界中のだれにも自分と同じ苦しみをさせたくない” 館長となった原田さんは強い思いをもって「被爆の実相」を訴え続けてきた。

右は橋本龍太郎元首相
右は橋本龍太郎元首相

サミット首脳らに被爆証言を直接聞いてもらうことが重要

今回の広島サミットでは、各国の首脳による原爆資料館の見学や被爆者との面会が調整されている。

自らの体験を語り続けてきた原田さんは、被爆者との面会だけでは不十分で、直接、被爆証言を聞かなければ意味がないと訴える。

原田さん:
資料館の中だけを見ても十分ではありません。いちばん聞いてほしいのは、被爆者の証言。広島の惨状がいかに悲惨だったのかということを、しっかりと伝えるような、その場面を作って欲しい。

原田さん:
広島でやる以上、十分なことができなかったら、サミットが広島で行われる意味はどこにあるのかと言わざるを得ない

原田さんが、首脳らに求めることは、さらにその先へと続く。

原田さん:
この間の外相会合を見ても、核軍縮とかそういったところはもちろんやるんでしょうけど、それ以上のこと、つまり廃絶は全く出てこない

原田さん:
ヒロシマの悲惨な体験そのものを自らの体験として、どこまで受け止めていけるのか。今からそれをどう行動に繋げていくのかということをしっかりとやってほしい。今回の極めて大きなチャンスをどう生かすのかが問われている

核兵器が使われるとこうなるというヒロシマの「被爆の実相」を各国の首脳らがいかに受け止めるかが問われている。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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