主要7カ国のトップが一堂に会するG7広島サミットが、5月19日から開催される。今回の主要テーマの1つに挙げられているのが、ロシアのウクライナ侵攻にどう対応するのか、という点だ。
ウクライナから広島県に避難した女性を取材。今も夫が暮らす祖国に帰りたくても帰れない…。その避難生活と、G7に望むことを聞いた。
避難から約1年 日本での生活にも慣れ…
広島市にある平和公園。対岸にあるのが、原爆ドームだ。

宮司愛海キャスター:
外国の方々が何やら見ているようです。原爆ドームに関する説明ですね。様々な言語で記載されています。英語、中国語、韓国語、少なくとも3カ国語以上の言語で書かれています。

イギリスからの観光客:
歴史的な意味を持つ場所だし、とてもショッキングな出来事なので、その場所を訪れたいと思った。
ドイツからの観光客:
世界中で平和を維持することの重要さを認識しました。
被爆地の歴史と現実を知るために、世界から訪れる人々。その誰もが「平和」への思いを新たにしていた。

その広島に、祖国の平和を強く願う1人の女性がいる。アンナ・セメネンコさん(40)。ウクライナの中でも戦火が激しいハルキウからの避難民だ。
広島県福山市で6歳の長女・エヴァちゃんと、2歳の次女・ソフィアちゃんの3人で暮らし始めてから、まもなく1年になる。

近所の子供:
こんにちは。
アンナさん:
久しぶりだね。いつか遊びましょうね。
近所の親:
遊びましょうね。
2人の娘には友達もでき、日本での避難生活に不自由はないと話す。

アンナさん:
ソフィアは2歳になった時に、ちょっとわがままになりました。
そのソフィアちゃんが買い物中、大事そうに抱えてカゴに入れたのは「納豆」だった。

アンナさん:
大好きです。毎日食べます。
好物の日本食もできたという子どもたち。こうして日本での生活に慣れる一方、頭から離れないのは父親のこと。今もウクライナで暮らしている。

祖国に残る父と毎日電話「悲しいよ」
宮司愛海キャスター:
2人ともやっぱり、お父さんに会いたいと言っている?


アンナさん:
娘たちはとても寂しがっています。ウクライナに持ち帰るためにおもちゃを集めています。今朝、起きた時は、おばあちゃんの村に行くと言っていました。
毎日欠かさないというパパとの電話。決して楽しい会話だけではない。

ソフィアちゃん:
はい、パパ。悲しいよ。
アンナさん:
悲しいんだって。
アンドリーさん:
どうしてだい?

ソフィアちゃん:
悲しいから。
アンナさん:
悲しまないで。

今も攻撃の恐怖にさらされるハルキウで、仕事を続けているという夫のアンドリーさん(44)。

アンナさんは、夫が残るウクライナの状況が今年の夏にはきっと変わると信じ、毎日を懸命に生きている。
奪われた“人生” ロシア軍打ち破る助けを
アンナ・セメネンコさん:
私は、ウクライナが戦争に勝って領土を奪還できると信じています。兵士の力を信じています。もう少し我慢しなければなりません。

この1年間、ウクライナから避難し続けたということは「1年分の命が奪われた」ようなものと、アンナさんは話す。

アンナ・セメネンコさん:
戦争前の私の人生はとても良かったです。私は幸せな人生を送っていたのに、それが一瞬にして崩れ去ってしまったので、なおさらつらいです。こんなことが起こるとは思いませんでした。信じられない、1年たちました。

宮司愛海キャスター:
1年たったのが信じられない。

アンナ・セメネンコさん:
信じられない。1年分の命が奪われたような気持ちです。それでもまだ、何も終わっていません。

宮司愛海キャスター:
日本にいてウクライナの今の状況を見て、どんな思いがありますか?

アンナ・セメネンコさん:
ロシア軍たちは、ただ私たちの家や国を壊しているだけだと思っています。人を殺すということに対して何も感じていません。

そう言って涙を流したアンナさん。ロシアに奪われた人生を取り戻すために、広島に集うG7の首脳に何を求めたいかを聞いた。

宮司愛海キャスター:
この広島でいろんな国のリーダーたちが集まって、平和についても話すと。そのことについてどんな思いを持っていますか?


アンナ・セメネンコさん:
一つの希望は、ウクライナ軍が私たちの領土でロシア軍を打ち破ることです。リーダーたちが、それがかなうように助けてくれることを願っています。何らかの禁止措置があればいいと思います。ロシアが法律を順守していないのは明らかですから。最も重要な指導者や影響力のあるエリート層の制裁を更に強化すべきだと思います。
(「イット!」5月15日放送より)