東京を拠点に活動する熊本・山鹿市出身の俳優・知江崎ハルカさんは、がんを乗り越え、舞台に立ち続けている。好きな道をひたむきに走り、今を生きる。その素顔に迫った。

熊本を離れて時代劇の技術を習得

2022年夏、約2週間にわたって行われた映画「骨なし灯籠」の撮影に、山鹿市出身の知江崎ハルカさんが参加していた。生まれ育った山鹿の町を舞台に役を演じる日が来たことを喜んでいた。

地元・山鹿市で撮影をする知江崎さん
地元・山鹿市で撮影をする知江崎さん
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エキストラの男性:
じゃあ1つ僕が年下です。(山鹿市立)鶴城中?

知江崎ハルカさん:
鶴城中です

エキストラの男性:
話がつながりましたね

知江崎ハルカさん:
つながりがりましたねー

知江崎ハルカさん:
地元では気づかない、地元の魅力を気づかされる映画だなと。出演できることは地元民として、出身の役者としてうれしい限りです

演劇ユニット「翠座」を主宰
演劇ユニット「翠座」を主宰

知江崎さんは、東京を拠点に演劇ユニット「翠座」を主宰。別の演劇ユニットにも参加し、脚本・演出も務める作品を定期的に上演している。きっかけは、子どもの頃にテレビで見た宝塚歌劇「ベルサイユのばら」だった。

知江崎ハルカさん:
すてきだなと思って、だんだんと向こう側の方に行きたいとなった時に演劇に出会って

高校時代の知江崎さん
高校時代の知江崎さん

高校で演劇部に入り、卒業後は医療系の専門学校へ。そして、歯科医院で働きながら熊本市内の劇団で活動してきた。20歳の時に熊本を離れ、「伊勢戦国時代村」や「日光江戸村」などで働いた。

知江崎ハルカさん:
やっぱり時代劇は厳しそうじゃないですか。とにかく自分を厳しい場所に置きたかったので、灯篭(とうろう)踊りをやっていたのは役に立ちました。着こなしなのか、指の使い方なのか。テーマパークなので、道行く人を振り向かせなきゃいけないとか、見ている人に楽しんでもらいたい、そういうことを表現できる人になりたいと思って

時代劇に必要な技術を習得
時代劇に必要な技術を習得

茶道や日舞、立ち回りなど時代劇に必要な技術を習得し、さらに南京玉すだれも覚えた。現在、南京玉すだれ芸人「すえきち」としても活動。23歳で東京に移り、テレビドラマや映画、CMなどにも出演し、今に至る。

知江崎ハルカさん:
私もやって元気をもらえるし、お客さまも見て元気をもらえて、あっという気づきがあったりとか、きっかけをつくることができたりするのが演劇のいいところだと思う

がん判明も舞台に立ち続けた

後輩たちを引っ張り、客演も含めると年に約10本の舞台作品に出演。忙しく過ごしていた2018年の春、検査で子宮頸(けい)がんが見つかった。

知江崎ハルカさん:
子宮筋腫が超音波で見つかって、「精密検査した方がいいですよ」となって、調べてみたら、転移しやすい種類のがんだったので

病気のことは関係者数人だけに伝え、アクションやダンスを控え、舞台に立ち続けた。

知江崎ハルカさん:
1回目の手術でがんを取りきれなかったときは、ものすごく不安はありました。2回目は子宮を全部取ってしまったので、半年後の病理検査の結果、どこにも転移してなかったんです

知江崎ハルカさんのブログ
知江崎ハルカさんのブログ

半年後、初めてブログで病気を公表し、定期健診の必要性を伝えた。

知江崎ハルカさんのブログ
知江崎ハルカさんのブログ

知江崎さんのブログ「がまだしてGO!」2018年10月27日
がんは取りきれたとのこと。安心しました。
早期発見の大事さ。
例え体が多少変わっても、生きてればなんとかなる!
なくなったらなくなったで、有るものでなんとか動くんですよ。
人間の体って凄い!
役者のみんな!
健康診断はしよう!
精一杯がまだします!

知江崎ハルカさん:
フリーの役者さんは、日頃から定期健診や健康診断をしている人は少ないと思うので、検査行った方がいいかなというきっかけになればと思って公表しました。「私もあれ見て行ったよ」みたいな声はいろいろ聞きました

いつか家族の物語を

2022年9月、東京・赤坂で上演した翠座の楽娯シリーズ「猫岳参り」の舞台は、むかしむかしの肥後の国。歌、ダンス、落語、立ち回り、そして、観客も参加する即興芝居まで盛り込んだにぎやかな作品だった。知江崎さんは剣の達人の猫役だ。

観客:
めちゃくちゃ良かったです。面白い(コメディー)のを期待していたんですけど、めっちゃ感動しました

知江崎ハルカさん:
コロナもありまして、不要不急のっていうところで、演劇はどうなんだとか、音楽はどうなんだとか、芸術系がいろいろ言われた時期もありましたけど、それでもお客さまが「見たい」とおっしゃって、じゃあ、どんな形でできるだろうと頑張って、いろいろ試行錯誤しながら、ここ数年をやってきて、どんどん皆さんとつくる演劇ができたらと思います

母親との写真
母親との写真

コメディー作品を多く手がける知江崎さんだが、いつか家族の物語を書きたいと考えている。高校生のときに突然、母親(享年42)を亡くした。

知江崎ハルカさん:
さっきまで台所で洗い物をしていた人が突然倒れて亡くなったので

ーー今、お母さんと話ができたらどんな話をしますか?

知江崎ハルカさん:
謝りたいことが多いですね。でも、何が楽しかったのか聞いてみたいですね。あまりいい子どもではなかったので。なんかこうやって引っかかってるんですよね。だから、そういうことをぶつけられるのが今、私の中では演劇なので

次作品「我が名もオスカル!」の撮影
次作品「我が名もオスカル!」の撮影

3月、翠座の次の作品のチラシ用写真などの撮影が行われた。タイトルは「我が名もオスカル!」。廃部寸前の高校演劇部を舞台に、文化祭で上演する劇のヒロインにみんなが名乗りを上げるというドタバタコメディー。
知江崎さんが好きなもの、やりたいものを詰め込んでいる。

知江崎ハルカさん:
今は自分の中で演劇しかないなと。自分が打ち込めることがあって良かったなと思っています

演劇ユニット「翠座」のメンバーと写真を撮る知江崎ハルカさん(中央)
演劇ユニット「翠座」のメンバーと写真を撮る知江崎ハルカさん(中央)

「精一杯がまだします!」知江崎ハルカさんはがんを乗り越え、今を生きる。

知江崎さんの演劇ユニット翠座の「我が名もオスカル!」は、東京の劇場で11日上演開始。21日(日)から配信で視聴できる予定だ。

(テレビ熊本)

テレビ熊本
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