難病で車いす生活となった元自衛官の女子大生が熊本市にいる。病と闘いながら、新たな夢に向かって挑戦を続ける彼女に密着した。

入隊後、身体に異変が

熊本市で1人暮らしをする山本栞奈さん(25)は筋肉が固まる進行性の難病で、現在車いすの生活。日常生活でも呼吸器や酸素が欠かせず、食事もチューブを使って胃に直接入れている。

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栞奈さんは5歳から18歳まで県内の児童養護施設で育った。高校時代は陸上部に所属。卒業後は陸上自衛隊に入隊したが、そのころからよくつまずくなど異変が出るように。次第に仕事どころか生活もままならなくなった。

約2年で自衛隊を除隊。2022年3月からは1人暮らしをしている。栞奈さんには介護を頼れる親族もいないため、福祉サービスを利用したり、自らボランティアを募るなどして生活を維持している。

幼いころから集団生活をしていた栞奈さんにとって、現在の住まいは大切な空間。サポートしてくれる人たちとの何げない会話もかけがえのないものだ。

訪問看護師:
アイス、何がいい

山本栞奈さん:
さっぱり系

訪問看護師:
さっぱり系ね

たまに数口だけ味わうことができるアイスが楽しみ。

山本栞奈さん:
他人から自分の話を聞いてもらって、そして自分のための時間はすごくいい時間だなと思います

「社会福祉士」との出会い

栞奈さんにはかなえたい夢がある。その夢を実現するために熊本学園大学で学んでいる。

目指すのは社会福祉士。福祉タクシーで登校し、看護師のサポートは欠かせない。手が動かせない栞奈さんに代わり、大学のボランティアが手伝ってくれる。

授業の時間によっては酸素が持たないこともあり、途中で帰らないといけない時もある。たくさんの人に支えられながら学ぶ理由に、車いす利用者で社会福祉士の女性との出会いがあった。

山本栞奈さん:
私でもやれるかもって。同じ境遇だったりヤングケアラーだったり、若者と気持ちを共有したり、そっと支えてあげられるような相談窓口をつくれたらいいなと思っています

現在3年生で、先日は社会福祉士の資格に必要な実習にも参加した。

熊本学園大学社会福祉学部・山崎史郎名誉教授:
提出物なんかもきちんとしていて期限も早いですし、内容も自分の経験を踏まえて意欲的に取り組んでいると思います。彼女の感性が広がって実現していける、そういうチャンスがあると思います

“自分の生きる意味”

常に前向きに進んできた栞奈さんだが、病気が進行し、年末には医師から気管切開の手術を勧められた。それには自分の声で話せなくなる上、たんの吸引など24時間の介護が必要になってくる。

栞奈さんが住む熊本市では、これまで24時間隙間がないように介護を提供した実績がなかったため、通学を諦めて実績のあるほかの自治体へ引っ越しをすることも考えた。

命をつなぐためとはいえ、簡単に夢を諦めきれず、熊本県に出向き、窮状を訴えたこともあった。

山本栞奈さん:
何度も(大学がある)熊本市に近い合志市や菊陽町に引っ越そうかなと考えることもあったけど、なかなか諦めることができず。自分が先頭に立って何か変わればいいなと。もしもそれが不可能であっても、やることに意味があると思っているので

木村敬副知事:
ほかの人では知り得ない、あなただけの唯一無二の世界があるので、それをぜひ言葉で表現していってほしい

勇気を出して声を上げ、少しずつ前に進んでいくことも覚えた。
大学以外にも新たに挑戦していることもある。それは「ICT情報通信技術」を身につけることだ。これは熊本県が重度障害者を対象にした初めての事業で、デジタル化を図り社会参加を促すもの。栞奈さんは2022年10月から、スマートフォンでパソコンの画面を操作してプログラミングなどを学んでいる。

アプリに「アイスをもっとたくさん食べたいです」と録音
アプリに「アイスをもっとたくさん食べたいです」と録音

経済的にも自立できるよう就労も視野に入れている。病状が悪化したら緊急に手術をして声を失うかもしれない。それでもコミュニケーションは自分の声でやりたいと、アプリに声を録音して入力した文章を読んでもらえるよう準備をしている。

山本栞奈さん:
今は、できるチャレンジを私はしていきたい。やりたいことをやるっていうことが、それが目標で自分の生きる意味かなと思っています

次は旅行で全国を回りたいという栞奈さん。夢に向かって歩みは続く。

(テレビ熊本)

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