新型コロナウイルスの5類への移行に伴い、新型コロナ対策をめぐる行政の中枢を担った県の対策本部もその役目を終えた。 

最前線で陣頭指揮を取った県保健医療部の糸数公部長と患者の入院調整に力を尽くした佐々木秀章医師のインタビューを交えながら、医療崩壊の危機を乗り越えた3年間を振り返る。 

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感染者の初確認から3年余り全国最悪の感染状況も 

2020年2月14日、県内で初めて新型コロナウイルスの感染者が確認された。 
那覇に寄港したクルーズ船の乗客を乗せたタクシーの運転手だった。 

新型コロナの封じ込めへ緊急事態宣言をはじめ、さまざまな対策が講じられてきたが、沖縄ではこの3年余りで感染の波が次々押し寄せ全国最悪の感染状況も経験してきた。 

変異するウイルスの猛威 医者・専門家の意見を踏まえ対応を模索 

県保健医療部 糸数公 統括監(当時): 
本来であれば病院で治療をすることが望ましい方の中でも、在宅で看ざるを得ない状況となっています 

当時は統括監として県内の感染状況や分析結果を毎日報告してきたのが県保健医療部の糸数公部長だ。 

県保健医療部 糸数公 部長: 
常に全国の一番先に流行して、どうしたらいいのかと国にもなかなか聞けないなかで、現場の先生方との声や専門家の意見を踏まえて、行政としてどういう対応ができるかということで常に取り組んできました 

未知のウイルスに対し得られた知見をもとに対策を講じるなかで、感染力が高まる変異ウイルスの猛威を目の当たりにしてきた。 

県保健医療部 糸数公 部長: 
毎日ブリーフィングしているなかで、医師から「もう重症者を収容できるベッドが埋まりました」と非常に切羽詰まった形でそのことを言われたことは、いま一番印象に残っています。現場の先生たちも、あの時の夏が一番きつかったという方が多いと思います 

2021年の第5波、病床が圧倒的に不足し医療崩壊に直面 

県庁4階の講堂では、新型コロナの対策本部が設置されてからおよそ3年、県の職員や医療従事者が昼夜を問わず対応にあたってきた。 

もともとは会議や表彰式などに使用されてきた講堂にテーブルやモニターなどを持ち込み、災害対応さながらの姿になった。 

「最もきつい夏」とされるのが、変異ウイルス・デルタ株が流行した2021年の第5波。 

急激に増加する重症患者に対し、病床が圧倒的に不足し「医療崩壊」に直面した。 

県新型コロナ対策本部 医療コーディネーター 佐々木秀章 医師: 
病院がどんなに努力しても限界があります。重症の患者さんが病院の中に本当にたくさんいるので、新規の人を受け入れるのがとても難しくなっています 

希望に沿う形の看取りができなくなり辛い思いも 

対策本部で入院調整などを担ってきた、医療コーディネーターの佐々木秀章医師。 
患者の受け入れ先を探しながら、最期をどのように迎えるか家族に確認する重い仕事も行ってきた。 

県新型コロナ対策本部 医療コーディネーター 佐々木秀章 医師: 
例えば、おじいちゃんやおばあちゃんの最期のときにどうしたいとか、きちんとした重症者対応、そういったものを求めるかどうか。そういったのを全く面識のない人に毎日電話で聞くわけですよね。希望に沿う形の看取り方ができなくなってしまっていたというのは、とてもつらいところでした 

医療現場の底力、沖縄県独自の入院調整システム 

対策本部では、医師を中心に独自に構築してきたシステムがある。 

離島を含め県全体の入院状況などが一目でわかる「OCAS(オーキャス)」だ。 

第5波の際は空いた病床数がゼロで、画面は真っ赤だった。 

入院調整は困難を極めたが、情報をリアルタイムで共有していた医療現場のその底力を目の当たりにすることになる。 

県保健医療部 糸数公 部長: 
病床の数を隠すとかそんなことはなく、いまあそこの病院が大変だから、もうちょっとうちも頑張ろうかといった病院同士のコミュニケーションにも繋がって、それはとてもこの大きな原動力になったかなと思っています 

入院待機ステーションや広域ワクチン接種センターの設置など、さまざまな取り組みに全庁体制であたってきた。 

オミクロン株に置き換わった第7波では、1日あたり6000人を超える新規感染者が確認され、4万人あまりが自宅で療養するなか、一人ひとりに毎日健康チェックを行うなど、膨大な業務にあたってきた県の職員は、この3年余りで延べ800人に上った。 

社会にとってあなたの感染対策が必要ということを伝えていきたい 

幾多の感染の波を乗り越えてきた対策本部の機能はその役割を終える。 

県新型コロナ対策本部 医療コーディネーター 佐々木秀章 医師: 
亡くなったり負担がかかったりするのはやっぱ高齢の人とか、もともと基礎疾患があってワクチンを受けられなかった方とかで、そういった人たちについてはやはりきちんと感染対策してあげないと守れないんじゃないかなと思います。社会にとって、あなたの感染対策が必要なんですよっていうのを、ぜひ県民に伝えていただきたいと思います 

糸数部長はおよそ3年の間で培ってきた対策は、次の感染症がきた時にも確実に活かされると強調した上で、次のように述べた。 

県保健医療部 糸数公 部長: 
5類という法律上の位置づけは変わりましたが、感染力が強いのは間違いなく変わらないと思いますし、罹って重症化する人がいるというのも確かではあります。ご自分の健康、感染防止と周りに広がらないかというところをまた気に留めなてもらわないといけないと思っています 

(沖縄テレビ)

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