熊本市消防局は、育児や介護などで24時間勤務が難しい救急隊員のために、日中のみ現場に出動する「日勤救急隊」を導入している。2人の息子を育てながら、毎日多くの命を救うママさん救命士を取材した。

働き方改革の一環として3年前から導入

8人の女性隊員が所属する熊本市消防局の救急隊。東消防署から出動するのは、2人の息子を育てる救急隊長・竹谷麻美さんだ。

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熊本市消防局東消防署 日勤救急隊・竹谷麻美隊長:
上が9歳で、下が5歳です

熊本市消防局東消防署 日勤救急隊・竹谷麻美隊長:
(高校生の時に)たまたまテレビで、熊本市で女性の救急救命士が活躍しているのを見て、10代の私にはとても衝撃的で、女性でも救急の現場の最前線で働いている人が同じ地域にいるんだという衝撃的で。絶対に私もなりたいと思って

約10年間、救急救命士として多くの命を救ってきたが、出産を機に一度は現場を離れた。育児中の隊員は、どうしても24時間勤務が難しく、日勤の部署へと異動せざるを得ないのが実情だった。

そこで、働き方改革の一環として3年前から導入を進めているのが「日勤救急隊」だ。現在、熊本市内で最も出動が多い2つの署に配備されていて、竹谷さんは東消防署で隊長を務めている。

熊本市消防局東消防署 日勤救急隊・竹谷麻美隊長:
おはようございます。保育園に(子どもを)送って、それから来ました

通常、救急隊は24時間勤務の2交替制で働いているが、「日勤救急隊」の業務は、平日の午前8時半から午後5時15分まで。育休明けの女性に限らず、介護などさまざまな家庭の事情を考慮して選択することができる。

熊本市消防局東消防署 日勤救急隊・竹谷麻美隊長:
今、いろいろな家庭のスタイルがあって、男性の職員の中で隔日勤務が難しい人でも現場で働きたいという人が働けるというのは、とても素晴らしい制度だと思います

「日勤救急隊」導入で到着時間が“37秒”短縮

東消防署の車庫に並ぶ2台の救急車。「日勤救急隊」と24時間態勢で働く「救急隊」との2つの態勢で、年間3,000件を超える現場をカバーしている。

日中の救急要請がピークを迎えると、「日勤救急隊」が威力を発揮する。

ママさん救命士の救急車は、女性患者や子どもに対応する際に、安心感を与えるメリットも大きいという。さらに「日勤救急隊」の導入は、命の現場でこんな効果も発揮している。

熊本東消防署・吉本直樹警防課長:
出場時間が前年等に比べると平均で約37秒、現場への到着時間が短縮された。市民の命を助けるためには、37秒の到着時間短縮というのは、非常に効果的

熊本市全体で救急車が出動するのは年間約4万件。
多い日には1つの隊で6件の出動があり、遠方の病院に患者を搬送すると、1件あたりの活動時間は大幅に増加し、休む時間はほとんどない。

熊本市消防局東消防署 日勤救急隊・竹谷麻美隊長:
久々に12時台に(昼食を)食べた気がします。食べられない日も多いです

熊本市消防局東消防署 日勤救急隊・浜田恭典さん:
いつも頼もしいです。背中で引っ張ってくれている頼もしい隊長です

ママさん救命士は、息子を保育園にお迎えに行く時間まで現場に飛び出す。

医療はどんどん進歩…現場復帰が早いメリットも

日進月歩の医療技術を常のアップデートすることが必要な救急救命士。子どもが育ってからではなく、手のかかる小さいころから現場に復帰できるというのも一つのメリットだ。

熊本市消防局東消防署 日勤救急隊・片山未希さん:
長いブランクの間に医療はどんどん進歩するが、自分の知識はどんどん衰えていく。ブランクが短い方が復帰するときの自分の不安が少ないかなと思います

報告書の作成など、事務作業をしてこの日の業務は終了。

熊本市消防局東消防署 日勤救急隊・竹谷麻美隊長:
お疲れさまでした。今から家に帰って、保育園に子どもを迎えに行きます

熊本市消防局東消防署 日勤救急隊・竹谷麻美隊長:
人の役に立ちたいという気持ちが一番強い。私の持っているもので還元できるのが救急の現場なのかなと今は思います

現場までの“命の1秒”を縮める新たな働き方。
ママさん救命士の救急車は、明るい時間の現場できょうも多くの命に寄り添う。

(テレビ熊本)

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