統一地方選で地方議員の目標数を大きく上回った日本維新の会は、次期衆院選で野党第1党となることを次の目標とする。勢いをどう全国に波及させ支持拡大に繋げるか。BSフジLIVE「プライムニュース」では日本維新の会の馬場伸幸代表、橋下徹元大阪市長、田﨑史郎氏、伊藤惇夫氏を迎え議論した。

「保守政党は保守に弱い」躍進の維新に自民は警戒感

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新美有加キャスター:
4月23日に行われた統一地方選挙。維新の改選前議席数は469で、目標議席数は600以上としていた。結果、維新独自の集計結果によれば地方議員と地方自治体の首長24人を含め775に躍進。勝因は。

馬場伸幸 日本維新の会代表: 
今の自民党支持が消極的支持で、緊張感を持たせる政党を国民の皆さんが求めている。そこで一番マシなのが維新だと。これも消極的支持だが、投票への意識が働いたと思う。

政治アナリスト 伊藤惇夫氏:
まず2021年の総選挙以降の露出度上昇。立憲より維新を扱うメディアがかなり多く、認知度を上げた。また安倍・菅政権時代の維新は自民と仲が良い印象が非常に強かったが、立憲とも政策面で協力関係を結ぶなど、自民と距離を置き始めた保守政党の印象が広まった。自民も危機感を持っている。立憲と違い、維新には票を食われる危険性がある。

政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏:
保守政党は保守に弱い。自民は明らかに警戒感を持ち始めている。今国会の防衛費、原発、入管法などの法案では、立憲を外しての修正協議に維新の協力を得たい。だが選挙での維新は戦う政党。区分けをはっきりして冷静に付き合おう、となってきている。

馬場伸幸 日本維新の会代表
馬場伸幸 日本維新の会代表

馬場伸幸 日本維新の会代表:
これまで自民からも協力いただき、持ちつ持たれつの色合いが強い時期もあった。だが旧統一教会の被害者救済法では自民が消極的で、立憲と協定を結び進めた。維新はイデオロギーではなく、政治を前に動かし結果を出すことを目標としている。

橋下徹 弁護士 元大阪市長:
大阪で盤石の強さがある維新も、現市長が政策をしっかり実行している高槻、寝屋川、吹田の各市では市長選に負けた。大阪府の43市町村のうち、維新所属の19の首長も政策をしっかり実行している。首長を取ることは重要。立憲も参考にしてもらいたい。

全国政党を目指す維新の課題は立候補者の選定

反町理キャスター:
奈良県知事選では、自民党県連が推した平木氏と前知事の荒井氏の得票を足せば維新・山下氏の票を超えるが、この保守分裂の影響で維新が勝利。

馬場伸幸 日本維新の会代表:
組織の応援がない我々は全国にじわじわ浸透していくしかない。それを加速させる上で、権限のある首長を預かることは大きい。大層に言うと日本の民主主義に大きな影響を与えたのではと思う。

新美有加キャスター:
維新の地方議員数を見ると、都市部の人数が多い。

橋下徹 弁護士 元大阪市長:
維新の支持者層は特定の団体に所属していない。地方ではいろんな組織に属す人が多く、そういう層は自民党ががっちり掴んでいる。なんとなく議席数を600人に増やす、国会議員も増やす、というのではなく、自公を過半数割れに追い込むために都市部の戦略を練るなどが必要。その目的には都市部の議席数で十分だと思う。

馬場伸幸 日本維新の会代表:
現実論はおっしゃる通り。不平や不満のない地方で改革と言っても全然刺さらないが、都市部で改革を訴えると反応がある。

政治アナリスト 伊藤惇夫氏
政治アナリスト 伊藤惇夫氏

政治アナリスト 伊藤惇夫氏:
野党第1党から次の政権交代を狙うとなれば全国政党にならざるを得ない。気になるのは人材育成。イギリスの保守党は優秀な学生をリクルートして教育し、選抜して落下傘として選挙に出している。維新も時間をかけて候補者を養成し、地方にばら撒くという方法もあるのでは。

馬場伸幸 日本維新の会代表:
54議席を得た日本維新の会デビューの2012年、私も面接担当をしたが、恐ろしい数の応募があった。国政に行き最初に感じたのは「珍獣ランド」。

反町理キャスター:
除名した国会議員が何人もいた。

馬場伸幸 日本維新の会代表:
政治には数も質も要るが、一番難しいのは適任の立候補者を探すこと。議論して党と候補者がお互いある程度納得できるよう、擁立のやり方も変えた。だがやっぱり、いい人材はまず自民党へ行く。断られた人が野党側に来る。

維新の目標は野党第1党、野党間の候補者調整はしない

新美有加キャスター:
和歌山1区では維新の新人、林佑美氏が自民・共産の候補者を抑えてトップ当選。

馬場伸幸 日本維新の会代表:
和歌山は自民王国と言われてきたが、維新での立候補を考える方々に対する実証にもなったと思う。

政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏
政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏

政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏:
自民は二階俊博さんや世耕弘成さんが全力を傾けたが負けた。従来型の集票が通じない。敗因分析が大事。「大阪万博に尽力する鶴保庸介参議院議員を自民が立てるなら、維新は立てないというサインが維新側からあった」と自民側から聞いた。党の事情で門博文氏にした点が最大の敗因。

橋下徹 弁護士 元大阪市長:
都市型政党の維新をある意味象徴している。和歌山1区は大阪との県境で無党派層が多い。おそらく維新は、こういうところに重点的に候補者を立てていく。本当に維新が立憲の支持層も含めてまとめ二大政党制の一翼を担うなら、自公の過半数割れを念頭に、都市部でどの選挙区を取るか考えていくべき。

新美有加キャスター:
一方、千葉5区では自民の新人候補が勝利。野党は各党候補がばらけ、組織力で勝てなかったとの指摘も。

馬場伸幸 日本維新の会代表:
街頭演説では「維新の候補がようやくこの選挙区に来てくれた」という方が何人もいた。潜在的な支持が浮き彫りになった意味で、流れが変わりつつある。

政治アナリスト 伊藤惇夫氏:
奈良県知事選の逆。保守分裂なら自民党が負け、野党乱立なら自民党が勝つ。野党間で部分的にでも候補者調整が進むなら、今後の総選挙でも野党勝利のケースが出てくる可能性がある。

反町理キャスター:
4月24日の当番組での立憲・大串博志選対委員長の発言。「『ウチの候補者が弱いなら候補を下ろすのは可だ』と言った」。千葉5区では一本化調整に応じる用意があったが、維新は乗らず。だが維新の次の目標が野党第1党になることなら、立憲との候補者調整はあり得ない? あるいは橋下さんがかつて言った野党間での予備選は。

馬場伸幸 日本維新の会代表:
大串さんのコメントは裏返しで「立憲の候補者が強いから維新は下ろせ」の意味。有権者は、裏で野合・談合しているような候補者は絶対に落とす。また予備選は、政治家目線の考え方だと思う。

橋下徹 弁護士 元大阪市長:
密室での候補者調整は政治家目線で、僕も反対。だが予備選こそが有権者目線だと思う。衆議院の本選挙で立憲と戦えば、結局自民党を利する。候補者一本化の過程で有権者の声を聞かずにとにかく維新の票だけを増やしていけば、結局は二大政党制に近づかない。

馬場伸幸 日本維新の会代表:
予備選をするのは、選挙がうまくいった場合の連立の枠組みを事前に作ること。理念は理解できるが、やっぱりこの人とはできないという政治家はいる。

大阪都構想と衆院6議席をめぐる維新・公明のバーターの今後

新美有加キャスター:
維新が公明党との間で行ってきた選挙協力。前回、2021年の衆院選では、大阪府と兵庫県で公明党が候補者を立てた合計6区で維新は候補者を擁立せず。今回、馬場さんはこの選挙協力をリセットするとしているが。

馬場伸幸 日本維新の会代表:
大阪都構想の住民投票をすることへの協力と、6選挙区に候補者を出さないことのバーターだった。今後は、吉村洋文大阪府知事や横山英幸大阪市長らの話を聞き、藤田文武幹事長とも相談して方針を決める。

反町理キャスター:
府政や市政のために国政の基本方針を歪めるように聞こえるが。

馬場伸幸 日本維新の会代表:
維新は大阪で生まれた政党で、地方から国を変える発想。矛盾ではないと思う。

政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏:
維新は、公明党が何をしてくれるのか見ているのでは。トータルでどちらが得なのかを判断しようと。そこで大阪都構想のようにバーターとして成り立つものがあるか。

橋下徹 弁護士 元大阪市長
橋下徹 弁護士 元大阪市長

橋下徹 弁護士 元大阪市長:
吉村さんはその大阪都構想の3回目の住民投票を考えている。そこでの公明の協力は、おそらく思いきり都構想への賛成運動をすること。

反町理キャスター:
住民投票が今すぐにできないなら、総選挙が先になる。公明が先に6議席を取ってしまう?

橋下徹 弁護士 元大阪市長:
いや、維新が取った上で議席を次に公明に渡すかどうかになる。これは党運営にもう全く関与していない僕の妄想ですよ。

反町理キャスター:
ええっ、そういうこと? えぐいわ。次の次の総選挙に向けたバーターをするのでは、と。馬場さん、はいともいいえとも言いにくいですよね。

新美有加キャスター(左)、反町理キャスター
新美有加キャスター(左)、反町理キャスター

馬場伸幸 日本維新の会代表:
僕のイメージが悪なります(笑)。とにかくあらゆるケースを想定して、大阪都構想については一旦立ち止まって考えないと。統治機構改革は維新の党是だが、実現方法はいろいろある。

反町理キャスター:
維新には様々な可能性も課題もある。今後、維新が大きく失敗するなら何が原因となるか。

政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏:
維新は、しっかり仕事をする与党のように見えたり、おかしなことはおかしいと言う野党に見えたりする政党。そのバランスが崩れるときが危機だろう。

政治アナリスト 伊藤惇夫氏:
過去に多くの勢いある新党が自民党の牙城に迫りかけたが、ほぼ失敗している。それは結果的に自民党との距離の問題。自民党を視野外に置いて、自分たちはこういう国を作るんだと明確に打ち出し、それを有権者に納得させる政党に脱皮できるか。

(BSフジLIVE「プライムニュース」5月2日放送)