4月23日、統一地方選挙の後半戦と衆参補欠選挙の投開票が行われた。与野党が5つの議席を争った衆参補欠選挙の結果は自民4勝、維新1勝。BSフジLIVE「プライムニュース」では与野党幹部を招き、選挙結果の国政への影響と今後各党が国会に臨む姿勢を議論した。

衆参補欠選は「新しい人を求める傾向」で若い世代・女性が当選

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新美有加キャスター:
5つの選挙区で争われた衆参補欠選挙では、自民党が千葉5区、山口2区、山口4区、大分選挙区で勝利、和歌山1区で維新の新人候補が勝利。

政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏:
初めて国政選挙を戦う人が勝ち、以前国政選挙に立った人が全員落ちた。統一地方選挙も含め、政権交代は求めずとも、若い人や女性など新しい人を求める傾向があった。

井上信治 自民党幹事長代理:
和歌山は残念だが、まずまずの勝利。新人候補の清新な印象の効果を出せた。だが思わぬ苦戦を強いられた選挙区もあり、分析と対策が必要。

馬場伸幸 日本維新の会代表:
都会でも地方でも、政府の方向性がおかしいと思う方が増えている。政党・党派にこだわる方ばかりではないと思う。方向性を変えるため若い方を選ぶ傾向があったのでは。

大串博志 立憲民主党選対委員長:
5選挙区に立てた3人の公認候補が全て敗れた。だが千葉5区では野党がばらけたが、かなり競った。大分も僅差。岸田政権への不満の声、受け皿を求める声はあった。私たちは一定の存在だったと思う。だが負けは負け。分析して出直さなければ。

各選挙区の分析 林氏か吉田氏か、山口で減員の影響は?

新美有加キャスター:
和歌山1区では、維新が擁立した元和歌山市議会議員の林佑美氏が、自民前職の門博文氏ら3候補を下した。

政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏:
自民党和歌山県連の幹部によれば、かつてなく完璧な選挙をやったが負けた、見えない敵と戦う感じだと。維新の勢いを肌身で感じたということ。

井上信治 自民党幹事長代理:
元々野党議員の議席で、一定の善戦はした。だが維新が勝ち切ったことは謙虚に受け止める。

反町理キャスター:
馬場さんは「アリもゾウを倒せる」と。アリにしては勢いがあるのでは。大阪で府知事・市長を取り、奈良知事選に勝った。

馬場伸幸 日本維新の会代表:
政権与党の自民党は巨象。組織力や企業のバックアップなど全く違う。だが街角に立つと、国民は自分たちのためになる政治をやってくれればどの党でもいいのだと感じる。隣の大阪は有言実行の維新で良くなっている。和歌山でも、という雰囲気があり、日を追うごとに支持が集まった。

新美有加キャスター:
千葉5区では野党各党が独自候補を擁立する中、7名の候補者の戦いを英利アルフィヤ氏が制した。

政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏:
英利さんが固めたのは自民支持層の6割ちょっと、公明党支持層の5割弱。野党がバラバラだったことが最大の勝因。

大串博志 立憲民主党選対委員長:
政治とカネの問題からの補選で、自民党に利することは避けたい、野党統一したいとお願いした。だが応じてもらえなければそうならない。うちの候補が弱ければ譲歩し下ろすことも可だとは言っていた。

大串博志 立憲民主党選対委員長
大串博志 立憲民主党選対委員長

馬場伸幸 日本維新の会代表:
自民に勝つための野合・談合の組み合わせはいらないという国民の方も多くいる。独立独歩で戦う姿勢を見せないと。

井上信治 自民党幹事長代理:
マイナスからのスタート。自民党支援者にこそ厳しく見られたと思う。無党派層にも今一歩浸透できなかったが、いい候補者のもと協力をして勝ち切った。割れたことで野党が不利になったとは必ずしも思わない。維新や国民民主が保守票を自民党と食い合うこともある。

新美有加キャスター:
野党が強いとされる大分の参院補欠選では、自民党新人の白坂亜紀氏が元社民党党首でもある立憲の前職、吉田忠智氏を341票の僅差で下した。

大串博志 立憲民主党選対委員長:
大変残念で責任を感じる。政党支持率は他県と同じで無党派層の支持が必要だが、最も票が多く無党派層の多い大分市を取りきれなかった。重なる統一地方選挙がなく、投票率が他市町村に比べ20ポイントほど低かった。活動量が少なかった。

井上信治 自民党幹事長代理
井上信治 自民党幹事長代理

井上信治 自民党幹事長代理:
よく勝ち切ったと嬉しく思うが、最後に伸びて勝ち切った。時間があれば差を広げられたかも、という思いも。

政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏:
知名度で吉田さんが圧倒的だったが、白坂さんは事実上知名度ゼロからどんどん伸びた。女性であることと若さのためだと思う。

選挙区数が現在の4から3に減る
選挙区数が現在の4から3に減る

反町理キャスター:
山口は勝敗より減員の話を。選挙区数が現在の4から3に減る。安倍元総理の後継で今回当選した吉田真次氏の選挙区が、次は林外務大臣の3区と大きく重なる。

政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏:
中心都市の下関は林さんの支持者が多いが、吉田さんは今回6割ほど取った。安倍昭恵夫人も次も吉田さんで戦いたい意向。自民党選対の一番の悩みでは。

反町理キャスター:
コスタリカ方式(小選挙区比例代表並立制で、同政党の2候補者が小選挙区での出馬と比例区での出馬を選挙ごとに入れ替える方式)の可能性も?

井上信治 自民党幹事長代理:
党内にいろんな知恵がある。様々なことを考え、これから調整する。

躍進する維新の勢いは全国で通用するか

新美有加キャスター:
統一地方選挙で維新が躍進。現状の約1.5倍となる600人以上の地方議員獲得を目標としていたが、結果は774人で大きく超えた。

馬場伸幸 日本維新の会代表:
この600は2022年の参院選、2021年の衆議院選挙で頂いた比例票の数を分析し、諸要素を加味して出した数字。今回超えなければ、衆院選で野党第一党を目指す次のステップに進めない。

反町理キャスター:
奈良県知事選では維新の山下真氏が勝ったが、自民党系2候補の得票数を足すと軽く山下氏を超える。

井上信治 自民党幹事長代理:
保守が分裂すれば結果を出せない。大きな反省点。

政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏:
一旦分裂して首長を取られると、取り戻すのにだいたい10年以上かかる。極めて深刻な問題で、県連会長の高市早苗氏が責任を取らないのはどうか。

新美有加キャスター:
伊吹文明元衆議院議長の発言。「維新の勢いはすごい」「我々が政権を失った民主党の鳩山政権成立前夜と似ている」「当時は事前活動をほとんどしていない、あるいは地域に全く馴染みのない人が当選した」。

大串博志 立憲民主党選対委員長:
当時の民主党政権には、民由合併(当時の民主党と自由党の合併)後に過半数に近づき実力をつける期間があった。全国的に組織ができ上がりつつあった。

馬場伸幸 日本維新の会代表
馬場伸幸 日本維新の会代表

馬場伸幸 日本維新の会代表:
自民党は熱心に地域活動をしており、地方議員からたたき上げる風潮が残っていて地力がある。我々ベンチャー政党では、「風」で当選して地域活動を全くしない議員もいる点が弱み。ただ、民主党の政権奪取時は確たる実績がなかった。我々は大阪で実績を積んでいる。

政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏:
維新に期待するのは、かつて新自由クラブや日本新党が実現できなかった保守2党論。今後全国展開できるか。

井上信治 自民党幹事長代理:
維新の勢いは認めるが全国に波及するか。伊吹さんは維新のリスクを言っている。イメージ先行の改革や、吉村洋文大阪府知事や橋下徹氏の人気先行で、地元の活動をしてこなかった方が当選している。仮に政権を取ったとき本当に担えるか。

反町理キャスター:
維新の目標は衆院の全289選挙区での候補者擁立。現状は?

馬場伸幸 日本維新の会代表:
現役と予定者を合わせまだ70名。大至急候補者の発掘・擁立をするよう指示している。

政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏:
千葉5区のように非自民票が割れ、自民の議席が増える心配は。

馬場伸幸 日本維新の会代表:
過渡期には候補者の乱立が起こり自民党が有利になるかもしれないが、切磋琢磨して有権者が期待しなくなった政党が消えることを何度か繰り返さないと。それを全国レベルで仕掛けないと政治は良くならない。一本化はやめた方がいい。原発問題でも各党の立場は違う。統一候補を立て「原発の問題は選挙後に考えます」では絶対に支援は得られない。

新美有加キャスター:
今国会の重要課題として意見が割れるのが、GX脱炭素電源法案、原発の運転期間の延長と再稼働・新増設について。立憲は反対、維新は修正協議を進めていく立場。

大串博志 立憲民主党選対委員長:
考え方が違えば一緒にならないのは、国会の中の通常の理。合うところだけやる。だが国政選挙になると論点は多い。連立政権とは民意を汲み取る一つの形だと私は思う。議会制民主主義でそれを追求するかどうか。私たちの度量も問われている。

解散総選挙は10月ごろとなる可能性

反町理キャスター:
広島サミットが5月21日まで、通常国会会期末が6月21日、8月が自民党役員の任期。今年中の解散総選挙は。

政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏:
可能性は非常に高い。だが今回の補選の結果を見ると、自民党には支持層を固めきる時間がいる。早期解散の可能性も低く、9月解散で10月選挙ではと思う。

政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏
政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏

大串博志 立憲民主党選対委員長:
解散総選挙はいつあってもおかしくない状況。私たちは対応できる準備をすること。150選挙区での候補者擁立が元々の目標。日程を見て具体的に考える。

馬場伸幸 日本維新の会代表:
今回の選挙はそこそこの成績で、自民党内では岸田総裁で解散総選挙という雰囲気があると思う。今後の動き次第だが、このままでは解散総選挙は結構先になるのでは。

井上信治 自民党幹事長代理:
総理自身が今は全く考えていないと述べており、その通りなのだと思う。解散には大義が必要であり、何を争点にするかが大事。それがしっかりあるときに解散するのでは。

(BSフジLIVE「プライムニュース」4月24日放送)