入管法改正案は28日、衆議院の法務委員会で与党などの賛成多数で可決された。これに対して、名古屋市の入管施設で亡くなったウィシュマさんの遺族が「外国人の人権を無視している」と強く抗議した。その訴えを取材した。

入管法改正案が可決した衆院法務委(28日午後)
入管法改正案が可決した衆院法務委(28日午後)
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「国は外国人の人権を尊重する必要がある」

ワヨミさん「遺憾に思います。この法案は外国人の人権を無視するものです。国は人権を尊重する必要があります」

入管法の改正案は衆議院法務委員会で28日、自民・公明両党と日本維新の会、国民民主党の4党が賛成し、賛成多数で可決された。立憲民主党は反対に回った。法案は5月上旬にも衆議院を通過する見通しで、審議の舞台は参議院にうつる。

採決後ウィシュマさん遺族が記者団の取材に応じた
採決後ウィシュマさん遺族が記者団の取材に応じた

法案の可決後、委員会を傍聴していたウィシュマさんの妹ワヨミさんは強く抗議した。

「すべての人に利益をもたらす法案でないといけないと思います。難民を人として尊重し、人権を侵害しない法案にしてほしい。そして難民の個人的な事情についても1人1人検証して、特に日本に住むしかない難民の子どもたちのことも考えてください。子どもたちが家族と分離させられることがあってはならないと思います。彼らの生活が保障されるような法案でなければならないです」

「姉の真相究明すらまだされていない」

そしてワヨミさんは、姉ウィシュマさんの死についてこう語った。

「姉の真相究明すらまだなされていません。入管で何が起こったのか、検証しようとしないで法案を通そうとするのは、政府の間違いだと思います。この法案を通す前に、何があったのか検証しないと再発防止は不可能だと思います」

来月上旬にも法案は衆議院を通過し、舞台は参議院にうつる。しかしワヨミさんは諦めないという。

「たとえ法案が通ったとしても私たちが姉のために声を上げ続けることは変わりません。私たちは姉の正義を求めていきます。私たちは絶対諦めない。最後まで全力を尽くして、姉に正義がもたらされるように声を上げ続けていきます。どうか私たちを応援してください」

ウィシュマさんの妹ワヨミさん(右から2人目)「姉の正義を求めていく」
ウィシュマさんの妹ワヨミさん(右から2人目)「姉の正義を求めていく」

「国に帰れない外国人を考えてください」

法案は、3回目以降の難民申請者は手続き中でも本国へ強制送還することを可能とする。これに対して難民申請者や支援者らは「保護されるべき人が送還される」と廃案を求めている。

「この法案は絶対廃案にしてください。人権を尊重してください。外国人だって同じ人間です。二度と姉のように入管の中で殺されることがあってはなりません。絶対にしないでください」(ワヨミさん)

また妹のポールニマさんは「外国人は様々な問題を抱えています。国に帰れない、言葉が話せない、安全が無いという状況にいる外国人を考えてください」と訴えた。

「この法案を廃案に追い込んでいきたい」

遺族の代理人の指宿昭一弁護士はこう語る。

「『異例の審議時間をとった』と言いますが、時間を取ればいいのか。議論は尽くされていません。ウィシュマさんの問題は真相が明らかになっていないし、誰も責任を問われていない。であれば当時の関係者を国会に呼んで話を聞くべきではないか。やるべき審議をしないで多数の力で強行採決されたのは非常に遺憾です」

指宿弁護士(左)「この法案を廃案に追い込んでいきたい」
指宿弁護士(左)「この法案を廃案に追い込んでいきたい」

そして指宿氏はこう続けた。

「参議院でこの法案を廃案に追い込むことはできます。私たちはウィシュマさんの遺族とともに、入管法の問題点と真相を明らかにしてこの法案を廃案に追い込んでいきたいと思います」

G7の中で突出して難民受け入れに厳しい国が日本だ。「誰一人取り残さない社会の実現」を、日本も目指すSDGsは掲げている。保護されるべき人が保護される、当たり前の法制度を実現できるのか、いま日本に問われている。

【執筆:フジテレビ 解説委員 鈴木款】

鈴木款
鈴木款

政治経済を中心に教育問題などを担当。「現場第一」を信条に、取材に赴き、地上波で伝えきれない解説報道を目指します。著書「日本のパラリンピックを創った男 中村裕」「小泉進次郎 日本の未来をつくる言葉」、「日経電子版の読みかた」、編著「2020教育改革のキモ」。趣味はマラソン、ウインドサーフィン。2017年サハラ砂漠マラソン(全長250キロ)走破。2020年早稲田大学院スポーツ科学研究科卒業。
フジテレビ報道局解説委員。1961年北海道生まれ、早稲田大学卒業後、農林中央金庫に入庫しニューヨーク支店などを経て1992年フジテレビ入社。営業局、政治部、ニューヨーク支局長、経済部長を経て現職。iU情報経営イノベーション専門職大学客員教授。映画倫理機構(映倫)年少者映画審議会委員。はこだて観光大使。映画配給会社アドバイザー。