福岡・北九州市民の“台所”として長年親しまれてきた小倉北区の旦過市場。2022年4月の大規模火災から1年、そして2度目の大規模火災から約8カ月がたった。

失意のどん底に落とされ…

整地された焼け跡には、最大26店舗が入居可能な仮設店舗「旦過青空市場」が2023年4月に完成。復興は着実に進んでいるかのように見える。

この記事の画像(10枚)

この「旦過青空市場」を複雑な思いで見つめる荒巻松美さん。

荒巻松美さん:
待ちに待った仮設店舗ということで、すごく楽しみに待ってたんですけど、費用的な問題が起きてるんで…

荒巻さんは、旦過市場で海鮮料理が看板の店「お食事処あらまき」を営んでいた。しかし2022年8月に旦過市場を襲った2度目の大規模火災で店は全焼。失意のどん底に突き落とされた。

荒巻松美さん(2022年8月):
涙が止まらない。早く、一歩前に進もうと思っても今は考えられない

被災後、店の再開への行動を移せずにいた荒巻さん。そうした中、2022年11月、旦過市場での店再開へ背中を押す発表があった。

北橋健治市長(当時):
旦過地区再整備事業のさらなる推進、また旦過市場のにぎわい創出を目的として整備するものであります

経営者を悩ます問題

旦過市場の焼け跡に、現在の青空市場となる仮設店舗の建設が発表された。入居対象となったのは、建物老朽化やそばを流れる川の氾濫に対応するため、市が火災前から進めていた再整備事業のエリアで、荒巻さんの焼けた店も対象に含まれていた。

荒巻松美さん:
すごくうれしかったですよ。仮設店舗ができてから、これからどうするか決めようと

なじみがある場所でお客さんと言葉を交わすことができるのはこの旦過だけ。絶対にこの場所で再開すると動き始めた矢先、入居をちゅうちょせざるを得ない現実が浮かび上がってきた。

荒巻松美さん:
見積もりを出してもらったら、結構、予想よりも金額が張ってきたんで

荒巻さんが二の足をふむ理由、その1つがお金の問題だ。1区画あたりの面積はわずか5坪。飲食店を再開しようとする荒巻さんには厳しいものだった。

荒巻松美さん:
厨房(ちゅうぼう)を作って、お客さん入れるためにカウンター作って

店のサイズに合わせて冷蔵庫などをそろえなければならず、サイズダウンした店で家賃に見合う集客ができるか不安が募る。

さらに追い打ちをかけたのが、契約期間の短さだ。再整備後に立つ商業施設に入居を希望している荒巻さんだが、その場合、わずか2年で仮設店舗を出ることになり、高い費用で購入する機材を新たな店では活用できない可能性もある。

荒巻松美さん:
火事で焼けた前の店は、オープンして4年たってなかったんですよ。まだローンを返してる途中で…

「市場から離れたくないのが一番」

被災店舗へは最大で120万円の助成金もあるが、荒巻さんは再度、依頼した見積もりを待っている状況だ。

荒巻松美さん:
できる限り仮設店舗で営業できればなと思ってる。市場のなかで育ってきているから、離れたくないのが一番

大規模火災から1年がたち、復興が目に見えるかたちで進む旦過市場。一方、さまざまな事情で旦過での再開を夢見つつ、葛藤し続ける人がいるのも事実だ。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
テレビ西日本

山口・福岡の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。