バス業界は、待遇や労働時間を懸念した、なり手不足や離職者が多いことから人手不足が続いている。そんな中、長崎県営バスに2022年、過去最年少の20歳で運転士になった若者がいる。
子どもの頃からの夢をかなえた彼の思いと、バス業界の現状を取材した。

“過去最年少”でバス運転士に

21歳のバス運転士、野田光太郎さん(2023年4月現在)。この日は、諫早市の自宅から車で約30分かけ、午前6時半に長崎県営バス矢上営業所(長崎市)に出勤した。

21歳のバス運転士・野田光太郎さん
21歳のバス運転士・野田光太郎さん
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長崎県営バス 運転士・野田光太郎さん:
法廷速度遵守で乗務します。健康状態異常ありません。薬の服用や睡眠不足ありません。安全運転で行ってきます

バスの点検やアルコールチェックを済ませ、午前7時過ぎに最初の便に乗車する。

野田さんは福岡の専門学校を卒業後、長崎県内の鉄道会社に就職。しかし、子どもの頃から抱いていたバス運転士の夢を諦められず、2022年8月、20歳で長崎県交通局に入った。

長崎県営バス 運転士・野田光太郎さん:
小さいときに(バスに)乗って、大きいバスを運転している姿は、やっぱりかっこよく見えた。高校卒業して運転免許を取って、運転が好きだと思うようになり、仕事にして人の役に立てるのはすばらしい職業だと思った

課題は運転士不足・高齢化…対策も

バスの運転士になるには、「大型二種免許」が必要だ。これまで免許取得の条件は21歳以上だったが、2022年5月に道路交通法が改正され、「一定の教習を受講すれば」19歳から免許を取得できるようになった。

バス業界では、慢性的な「なり手不足」に加えてコロナ禍で離職が増え、「運転士不足」が課題だ。

長崎県営バスグループは長崎市、諫早市、大村市に79路線があり、395人の運転士が必要だが、16人が不足している。運転士が休日出勤してダイヤを維持している現状がある。

長崎県北部(佐世保市など)をメインに運行する西肥バスでは、佐世保市内だけで20人から30人ほどの運転士が足りず、2023年4月1日に運行本数を減らすダイヤ改正を行った。

長崎バスでは、新型コロナの影響もあり、2022年2月以降、35人の運転士が離職。減便ダイヤで運行を続けるなど、市民生活にも影響が出ている(2023年4月現在)。

運転士の高齢化も課題の一つだ。

先輩運転士(66):
乗りたての頃と違って感覚が鈍ってきたかと思う。客の命を預かっている以上、神経を使って運転している

長崎県営バス、長崎バス、西肥バスの運転士の平均年齢は、いずれも50歳を超えている。

法改正やバス会社独自の取り組みによって、若手が入りやすい状況に変わりつつある。
長崎県営バスでは若い運転士を育てるため、採用の条件から「大型二種免許」の所持を外した。さらに、40歳未満なら免許の取得費用の30万円分を補助する(勤続5年以上の条件あり)。

21歳の野田さんも入局後に大型二種免許を取得し、教習などを経て2022年12月、憧れの運転士になった。

長崎県営バス 運転士・野田光太郎さん:
バスの運転士は、世間の人には良い点が分からない。だから、なりたいと思う人もいない。ならないと(運転士の良さは)分からない

長崎県営バスには、野田さんを含めて20代が8人、30代が31人いて、若手の運転士も徐々に増えてきている。

「責任感」と「感謝の思い」原動力に

野田さんのデビューから5カ月。4月からは、交通量の多い長崎市中心部も担当している。

長崎県営バス 運転士・野田光太郎さん:
お客様から「ありがとうございました」と言ってもらえるとうれしくなるし、こちらが感謝しないといけない

乗客:
いつも降りたときに「ありがとう」と言うと、(野田さんが)返事をしてくれる

乗客:
マイクがよく聞こえる。誰も乗ってなくても「発車しまーす!」と言って行く

乗客の評判も上々のようだ。

長崎県営バス矢上営業所・小柳祐司運行係長:
野田くんには3月にも2件、「良い運転士を雇っていますね」とか、仕事に行くときに「行ってらっしゃい」と声かけをしてもらい、仕事に気持ちよく行くことができたというお褒めの言葉を2件いただいた。

午後8時半。最後の乗客を運び終え、野田さんの一日が終わった。

長崎県営バス 運転士・野田光太郎さん:
朝乗せた方を家まで送らないといけないので、大変だけど頑張れる。乗ってもらえて成り立つ仕事、感謝して毎日頑張っている

市民生活を支える「責任感」と乗客への「感謝の思い」が野田さんの原動力だ。
人手不足のバス業界に若い風が吹き込み始めている。

(テレビ長崎)

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