静岡浅間神社で毎年4月5日に披露される「稚児舞楽」。戦国時代に始まり、460年以上続く伝統の神事だ。この稚児舞楽に初めて挑戦する小学生3年生の男の子を追った。苦戦しながらもどう踊ればいいか、考え工夫する姿がそこにはあった。
460年以上続く伝統

小さな体を大きく動かす、小学3年生の小倉橙也くん。静岡浅間神社に奉納する「稚児舞楽」の舞の稽古だ。

静岡市葵区の静岡浅間神社。毎年4月に開催される神事「廿日会祭」では、子供たちが華やかな衣装で舞を奉納する「稚児舞楽」が行われる。

戦国時代から460年以上続く神事で、天下泰平と五穀豊穣、それに疫病退散を祈る。2022年3月には国の重要無形民俗文化財に指定された。

静岡浅間神社 権禰宜・福島 麗司さん:
我々もずっと先輩方から受け継がれてきておりますので、それを次代に引き継ぐというのは重い責任があると痛感しています
初挑戦の小学3年生

2023年3月21日。稽古が始まる前に、稚児舞楽を披露する小学生4人が神社を訪れた。市内の小学生4人が選ばれ、神前で奉告された。
橙也くんは、父親に神社関係者の知人から稚児舞楽に出てみないかと話があり、本人も「やってみたい」と参加を決めた。

小倉 橙也くん:
練習で頑張れば本番もうまくいくから、練習はなるべく毎日行きたい
日々の反省を練習ノートに

翌日から神社で稽古が始まった。この日は、披露する舞の1つ「安摩(あま)」。しかし、橙也くんは細かい動きを覚えることに苦戦していた。
小倉 橙也くん:
ずっと続けていると、ジャンプするのも大変になってきて、手をまわすのと手順もわからなくなって、右足と左足を出すのもどっちかわからなくなって止まったりしちゃう

初めて稚児舞楽に挑戦する橙也くん。自分で練習ノートをつけ始めた。毎日反省点を書き込み、次の稽古に生かしていた。
小倉 橙也くん:
足をもう少し閉じるとか、背中をもう少しピンとさせておしりを出した方がかっこいいとか、先生にたくさん注意されたことを書いています。

本番まであと2日となったこの日。橙也くんは祖父母の家で舞の練習をしていた。父・圭太郎さんのアドバイスを受けながら、動きを確認する。

父・圭太郎さん:
一つのことを一生懸命やる、一度のめりこむとすごく集中してやれる子なので、ドキドキもあるんですけど同時にワクワクしながら楽しみに過ごしています
堂々とした舞 次への意欲も

4月5日、いよいよ本番を迎えた。神社には家族をはじめ、大勢の人たちが集まっていた。

華やかな衣装を身にまとった子供たちが堂々と舞を披露する。橙也くんも細かい動きを完璧に覚え、練習の成果を発揮していた。

小倉 橙也くん:
きょうは楽しく踊れた。よくがんばれたと思う。来年は納曽利をやる予定だから、がんばって覚えたい

静岡浅間神社 権禰宜・福島 麗司さん:
はじめはちょっとおどおどとしたり自信なさげにやったりしていたのが、いざ本番になると立派な姿を見せてもらって感無量ですね。伝統文化ですので、変わらずに続けていけたらなと強く思っています

460年以上にわたり受け継がれてきた稚児舞楽。橙也くんは2024年もまた新しい舞を覚え、この舞台に戻ってくる決意を固めていた。
(テレビ静岡)