3月22日、国土交通省が公表したのは、全国2万6000地点の2023年の土地価格の指標である「公示地価」。全国平均は、2022年に比べ1.6%上昇していました。

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これは15年ぶりの高い上昇率となっており、コロナ禍からの回復傾向が現れた形となります。

都内の住宅展示会場には、今後の土地の価格や住宅価格の値上がりを懸念し、早めの購入を考える人の姿がありました。

オープンハウス 矢頭肇 取締役:
30代の方が中心なんですけれども、少しずつ20代のお客さまの数が増えてきているかなと。お客さまのテレワークも徐々に以前のような形に戻りつつある印象で、それを踏まえて、利便性の高い、都心に近い所へのニーズが改めて高くなってきているかなと。

人気が高まっているのは都市部。東京・江戸川区に土地を購入したという男性は、「将来売ることを考えたら、都内の方がいいんじゃないかって」と、将来的な“資産価値”も考慮に入れて購入したと話します。

また、都内の住宅地では最大の8%を超える上昇を見せた足立区の綾瀬駅前では、至る所に建設中のタワーマンションが。

実は今、こうした都市部の人気によって、“あんドーナツ化”とでも呼ぶべき現象が起きていると言います。一体それはどんな現象なのか?不動産コンサルタントで、土地の価格変動に詳しい長嶋修氏に詳しく話を聞きました。

不動産コンサルタント 長嶋修氏
不動産コンサルタント 長嶋修氏

地価が全国最下位の11万倍!都市部に人が集中「あんドーナツ化現象」とは

「公示地価」とは、毎年3月に国交省の土地鑑定委員会が、その年の1月1日時点での1平方メートル当たりの土地価格について、全国で大規模な調査を行い、結果を公示したもので、土地を売買する際の価格の目安などになります。

今年は2万6000地点について行われ、2008年以来15年ぶり、リーマン・ショック以前と同じ1.6%という上昇率まで回復しました。

また、調査が行われた2万6000地点のうち、58%が上昇しており、国交省は「コロナ前への回復傾向が顕著」に表れているといいます。

全国で最も公示地価が高いのは、東京・銀座4丁目。1平方メートルあたり5380万円と、前年比1.5%上昇していました。これは、全国最下位の470円に比べて約11万倍です。

上昇率が高いのは、最大都市圏(東京・大阪・名古屋)で2.1%、東京圏で2.4%、東京23区にしぼると3.5%と、いずれも都市部に集中しています。

通常、都市部で地価などが上がると、都内から郊外へと人口が流出する、いわゆる「ドーナツ化現象」が発生します。

しかし、現状の東京圏ではその逆、むしろ都市部に人が集中し、地価がさらに上がる「あんドーナツ化」現象が起きているのです。

不動産コンサルタント 長嶋修氏:
どうしても多くの方が利便性を求めるとういことになるので、首都圏でいうと、最初はやはり東京の中心部、中央・千代田・港区のあたりに火がついて、この10年くらい地価が上昇してきたんですね。この地価上昇の流れが東京23区に広がり、やがて神奈川、千葉、埼玉と郊外に拡大していくという動きが、この10年間ぐらいありました。

Q.東京近郊でも地価が下がっている場所もありますが、何が違うのでしょうか。

不動産コンサルタント 長嶋修氏:
昨今の世帯というのは、大半が共働きなんですね。そうすると、通勤も2人分になりますし、都市で生活している利便施設というのはやっぱり駅前、駅近くにあると。また、昨今は若年層であるほど、マイカーの保有率も下がっているんですね。住環境を求めるというよりは、駅からの距離をはじめとする「利便性」を重要視するということになるんですね。

マンション価格が高騰…12年で「8割増し」買い時は?

都市部で顕著な地価上昇の背景には、マンション価格の高騰があります。

関東地方の住宅の不動産価格指数(季節調整値)を見てみると、2010年を基準の100として、一戸建て住宅や住宅総合の値も上昇する中で、マンションの価格指数は180.4と、12年で「8割増し」という勢いで上昇しています。

都市部でマンションを購入したい場合、いつ買えばいいのでしょうか?2人の専門家に聞いたところ、それぞれ以下の回答が返ってきました。

第一生命経済研究所 永濱 利廣 首席エコノミスト:
4月~5月あたりに固定金利が下がる見込み。そこが買い時。

不動産経済研究所 松田忠司 上席主任研究員:
建設業は人件費などのコストが上がっており、23区内はマンション価格値上がりの見込み。よって今が買い時。

どちらの専門家も「今」が買い時だと言います。

今後の地価の変動は「大きく三極化」

少子高齢化が進む日本で、今後人口が減少していく中、地価はどのような変動をみせるのでしょうか?長嶋氏は、不動産市場は大きく三極化しているといいます。

不動産コンサルタント 長嶋修氏:
利便性の高いところは、今後も下がる見込みもほとんどないどころか、上昇の余地すらまだあります。不動産市場というのは、価格維持・上昇の土地が10~15%、なだらかに下落を続ける土地が70%、限りなく無価値・下落の土地が15~20%と、大きく三極化しています。
今後さらに三極化が進むと、地価上昇あるいは維持するような一部の地域、そして大半のだらだらと下がる地域。さらに、限りなく無価値になってしまう。あるいはお金を払ってもいらない、タダ同然、マイナス価値の土地と、大きく三つに分かれていくというような状況だと思います。

(めざまし8「わかるまで解説」より3月27日放送)