「食卓の優等生」サバが記録的な不漁となる中、今、イワシが近年まれにみる豊漁となっている。果たしてイワシは「食卓の救世主」となり得るのか。

ウクライナ侵攻などの影響でサバの仕入れ値が2倍に

こんがりと焼けたおいしそうなサバ。この味を求めて多くの客が訪れるのは、福岡市内にあるサバ料理の専門店。約20種類のサバ料理が楽しめるとして人気を集めている。

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「鯖とら」中島宏店主:
お待たせしました。塩サバ定食です

ーーどこ産?

「鯖とら」中島宏店主:
ノルウェーのサバですね。ノルウェーのサバが一番脂がのっていて、おいしいサバです

うま味成分が豊富で手ごろな価格であることから、食卓に並ぶことも多いサバ。しかし、この店では今、仕入れ値に変化が出てきたという。

「鯖とら」中島宏店主:
2年前と比べて、仕入れ値が2倍くらいになっています。仕入れ値が高くなると、お客さまにも負担が増えるわけじゃないですか。そこが心苦しいですね

ウクライナ侵攻や輸送費の高騰などの影響で、2年前に比べてノルウェー産のサバの仕入れ値が2倍に跳ね上がっている。そのため、2022年4月から塩サバ定食の値段を200円値上げした。

また、この店では今、サバに起きている“ある異変”を懸念している。その異変とは?

サバの水揚げ量は10万トン→3万トンに

今シーズンは全国的にサバの漁獲量が減少している。日本有数のサバの水揚げ量を誇る千葉県銚子港で話を聞いた。

「大一奈魚問屋」坂本洋一社長:
サバの水揚げ量は、2021年から2022年で10万トンから3万トンに減っています。サイズも小さい。本当に大ダメージです

2021年から2022年で約7トンも減少
2021年から2022年で約7トンも減少

銚子港でのサバの水揚げ量は、2021年までは約9万トンから12万トンの間で推移していたのが、2022年は約3万トンと激減している。

サバの不漁は、すでに私たちの食卓にも影響が出始めている。全国的にサバ缶が品薄状態になっているのだ。

水産会社の「極洋」は2月3日の出荷分から、サバ缶30商品のうち、実に28商品の販売を当面休止すると発表。さらに「マルハニチロ」は、サバ缶のほぼ全てとなる26商品の参考小売価格について、4月1日の納品分から11~23%値上げすると発表した。

「エムズ」久松浩一店長:
値上げになるっていう話は聞いてます。サバが入ってこないと缶詰も作れないと思いますので、1割から2割は値段が上がるんじゃないかと

サバの漁獲量の減少は、私たちの食卓を揺るがすことになりかねない事態。そんな中、サバに置き替わり「食卓の救世主」となりそうな魚が…。

福岡で水揚げされたイワシは去年の2.5倍

川崎健太キャスター:
博多の台所、柳橋連合市場にやってきました。不漁のサバにかわって食卓の味方となる豊漁の魚があるということなんで、市場で聞いてみたいと思います

「中村鮮魚店」立川義孝店長:
例年に比べて、イワシが揚がっていますね

安くておいしいと、昔から「庶民の魚」として親しまれてきたイワシ。イワシが今、近年まれにみる記録的な豊漁となっている。

熊本・天草市では3月11日、約30年ぶりに大量のイワシが水揚げされた。この日、漁港に水揚げされたマイワシは60トンにも及ぶ。

福岡でもイワシの水揚げ量は増えている。福岡市にある長浜鮮魚市場によると、2023年2月のイワシの水揚げ量は約1,000トンと、2022年2月と比べ、約2.5倍に増えている。そのため、1kgあたりの価格は、2022年2月の170円から、2023年2月は110円と安くなっている。

一方、2023年2月のサバは2022年に比べ、水揚げ量が44%減り、1kgあたりの価格は1.5倍ほど高くなっている。

イワシとサバには因果関係が

明暗が分かれているイワシとサバ。実は、この2つの魚はある因果関係があるのだ。

「水産研究・教育機構」由上龍嗣グループ長:
サバが減ってしまったのではなくて、本来のサバの漁場にサバが来なくなってきているのが、一番の原因だと考えています

専門家によると、太平洋側ではサバが集まるはずの漁場でマイワシが大きな群れを作り、サバがその群れを避けて漁場に寄りつかなくなっているのだという。そのため、これまでサバが獲れていた漁場からはイワシが獲れ、私たちの食卓でもイワシが手に入りやすくなっているのだ。

柳橋連合市場の鮮魚店でも…。

ーー値段は?

「中村鮮魚店」立川義孝店長:
半額ぐらいかな。去年の半額ぐらい

2022年のこの時期は1匹300円だったものが、現在は半額の150円になっている。

今の時期のイワシは脂がたっぷり

物価高が続く中、食卓の強い味方となるイワシ。

「中村鮮魚店」立川義孝店長:
オススメは、普通に刺身。結構、脂はのっとるよ

イワシの刺身 2023年は脂がのっているという
イワシの刺身 2023年は脂がのっているという

今の時期のイワシは脂がのっていて、刺身が最高の食べ方だという。その味は…

川崎健太キャスター:
いただきます。イワシの刺身です。最高にうまいですね、脂むちゃくちゃのってますし。脂が本当にのっていて、おいしい。どんどんいけます

「中村鮮魚店」立川義孝店長:
酒いる?

川崎健太キャスター:
あります?

「中村鮮魚店」立川義孝店長:
ない(笑)

サバに置き替わり、豊漁となっているイワシ。物価高で家計への負担が増える中、安くておいしい食材を見極めるのも必要となってきそうだ。

(テレビ西日本)

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