3月に入り、食品では3,000品目を超える商品が、また値上げされる見通しだ。とどまるところを知らない値上げラッシュ。その波は、缶詰にも及んでいる。

値上げラッシュが“缶詰”にも…

「はごろもフーズ」は、5月1日から22品目の値上げを発表し、この内、サバの水煮缶は参考小売価格で220円が275円(税抜)に引き上げられる。

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不漁の影響やエネルギーコストの上昇などで製造原価が上昇し、企業努力だけで吸収することは極めて困難だとしている。

福岡市内のスーパーでも、コロナ禍に入って以降、自宅で簡単に食べられる「サバ缶」の販売量が増え、店内の目立つ場所に並べていたが、サバの不漁を受けて商品自体が少なくなり、影響が出ているという。

食卓の味方だったサバまでもが遠い存在になってしまうのか?水揚げが減る中、注目を集めているサバが佐賀・唐津市にある。

消費者に支持される完全養殖の「唐津Qサバ」

永松野々花記者:
脂ののったサバ。実は、完全養殖されたサバなんです。プリプリで身が引き締まっています。魚の生臭さが全くないです

唐津市の飲食店で出されているのは、唐津市のブランドサバである「唐津Qサバ」。九州大学との共同研究で生まれた「完全養殖」のマサバだ。この店で「Qサバ活き造り」は税込み4,000円。

天然モノより高価だが「Qサバ」が消費者に支持され選ばれるのにはワケがある。

活魚料理「潮路乃」・田中沙織さん:
完全養殖ということで、アニサキスもいないですし、活きのいいままお刺身で召し上がっていただけます。すごく脂が乗っていて、トロトロで、マグロの大トロを食べているみたいと、一度食べた方はリピーターで必ず頼んでいただけます

生でも安心して食べられる完全養殖の「唐津Qサバ」はどのように育てられているのか。唐津市は、2011年に九州大学と共同で、「唐津市水産業活性化支援センター」を設立し、実に2年がかりでマサバの完全養殖に成功した。

唐津市水産業活性化支援センター・村山孝行センター長:
ここでサバが泳いでます。大体、生まれて1年弱くらいのサバです。親のサバから卵をとって、それをふ化させて、ある程度の大きさまでここで育てます

完全養殖とは、人工的にふ化させた稚魚を親魚まで育て、その親魚から卵を取って次の世代を生み出していく技術。

このセンターでは、稚魚を7cm程度にまで育てて養殖業者に卸し、その後1年半ほど海で育てた後に市場に出荷している。

エサには配合飼料を使うため、脂ののりが一定に保てるだけでなく、生のエサを食べないことで食中毒の原因となる「アニサキス」のリスクを減らすことができる。刺身でも食べられるというわけだ。

唐津市水産業活性化支援センター・村山孝行センター長:
10年間やっているなかで、体形がぽっちゃり型になって肉付きが良くなった。いい形質が受け継がれて、どんどん成長もよくなっているような気がします

養殖の成功から約10年。当初は約3,000匹だった販売数も、いまでは2万匹にまで増え、今後はさらに多くの「Qサバ」を提供できるよう、稚魚の数を増やすことが目標だ。

唐津市水産業活性化支援センター・村山孝行センター長:
唐津はサバの水揚げ基地だったので、おいしいサバがたくさんあったんですが、それを「唐津Qサバ」で継承していくというか、新しい名物として提供していくことができればと思います

サバの記録的な不漁が続く中、日本の食文化と水産資源を守る養殖サバの価値はさらに高まりそうだ。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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