エレベーターには必ず、「定員○名」「積載○○kg」といった積載表示が書かれている。

その積載表示を超えるとどうなるのか? また、積載表示を超えた時、何キロまでエレベーターは耐えられるのか?

こうした疑問を解消する動画を、エレベーターの製造やメンテナンスを手がける「京都エレベータ」がYouTubeで公開し、非常に興味深い結果が示されている。
 

まず、前提として、積載表示を超えると、「荷重検出装置」が動作し、エレベーターは動かなくなる。

そのうえで、この動画では、安全に配慮した状態の1階でエレベーターにおもりを積んでいき、一体、何キロまでエレベーターが耐えられるのか、限界を超えた時にどうなるのか、検証している。

検証で使用するエレベーターは「定員9名」「積載600キロ」。つまり、600キロまでは安全に乗ることができるということだ。

エレベーターの積載表示(提供:京都エレベータ)
エレベーターの積載表示(提供:京都エレベータ)
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まず、600キロのおもりを入れる。この時点で、撮影のカメラマンを入れると600キロを超えていて、「満員」の表示はされるが、特に変化はない。

600キロのおもり(提供:京都エレベータ)
600キロのおもり(提供:京都エレベータ)

その後は、20キロのおもりを1つずつ積み込んでいく。

1個20キロのおもり(提供:京都エレベータ)
1個20キロのおもり(提供:京都エレベータ)

積載表示の倍となる「1200キロ」を超えても変化はないのだが、積載表示の3倍近くとなる「1720キロ」になったところで…

1720キロのおもり(提供:京都エレベータ)
1720キロのおもり(提供:京都エレベータ)

突然、エレベーターが下に落ちてしまったのだ。

下に落ちたエレベーター(提供:京都エレベータ)
下に落ちたエレベーター(提供:京都エレベータ)

下に落ちた理由を確認するため、機械室に設置していたカメラの映像を確認すると、ロープは切れておらず、エレベーターの床も抜けていない。

ロープだけが、エレベーターのカゴの重さに耐えられなくなり、動いてしまい、その結果、カゴが下に落ちたというのが今回の検証結果だとしている。

ロープだけが重さに耐えられなくなった(提供:京都エレベータ)
ロープだけが重さに耐えられなくなった(提供:京都エレベータ)

また、今回の検証結果を受け、以下のような見解も示している。

エレベーターのピットには緩衝器と言って、ズドーンと落ちても、その衝撃をやわらげるバネみたいなものがついています。
それがあることによって、強い衝撃を与えることなく、ズドンと落ちたことになります。これがもし、2階とか3階とかでやっていたら、大変なことになりますよね。

エレベーターの緩衝器(提供:京都エレベータ)
エレベーターの緩衝器(提供:京都エレベータ)

2月24日公開したこの検証動画は話題となり、54万回以上の再生回数となっている(3月17日現在)。

非常に興味深い結果だが、そもそも、エレベーターに関する動画をYouTubeで公開している理由は何なのか? また、今回の検証結果を踏まえ、エレベーターを安全に利用するためには、どのようなことに気を付ければいいのか?

「京都エレベータ」の担当者に“安全に利用するための注意点”を聞いた。

検証のきっかけはTwitter

――YouTubeでエレベーターに関する動画を公開している理由は?

自社のプロモーションの一環としておこなっています。

YouTubeを始めた当初は「エレベーター」で、YouTubeを検索してみると、趣味でエレベーターの外観をあげている方か、メンテナンス会社の会社案内の動画がほとんどでした。

最初の方は、普段、お客様に説明しているような内容や、普段は見ることができないエレベーターの裏側といった映像をあげていたのですが、そのうち、普段より再生回数が伸びる動画があったり、見せ方を変えたりして、試行錯誤を繰り返しながら、今の形になっています。

去年、「エレベーターの隙間にカギを落とすとどうなるのか?」という動画がバズりました。エレベーターのメンテナンス会社からすると、普段、見慣れている光景なのですが、一般の方からすると、「隙間にものが落ちたら、どうなるんだろうか?」と思っている方が、かなりの数がいたんだと思って、驚きました。

この動画は、315万回以上、再生されているので、お客様との話のネタにも活用させていただいています。

エレベーターの隙間にカギを落とすとどうなるのか?(提供:京都エレベータ)
エレベーターの隙間にカギを落とすとどうなるのか?(提供:京都エレベータ)

――今回の検証を行った理由は?

動画のネタをどうしようか考えているときに、ツイッターで「エレベーターの重量がオーバーするとロープが切れるの?」「いや、底が抜けるのが先らしい」という話題を目にしました。

エレベーターのメンテナンス会社からすると、「どちらも違うだろう」という思いと、「実際に映像にしたら面白そう」という思いで、自社のテストタワーのエレベーターを使って、動画にしてみました。


――今回の検証結果、どのように受け止めている?

重量オーバーした後、どんどん、おもりを積んでいくと、ロープが切れるわけでもなく、床が抜けるでもなく、ブレーキが耐えられなくなるのが先だと想定していました。

結果は、シーブ(巻上機の滑車)にかかっているロープが滑るという結果になり、想定外の結果となりました。

安全に利用するための注意点

――積載量のおよそ3倍の重さまで耐えられるようにしている理由は?

エレベーターの基本設計というのは、「制動装置(ブレーキ)は定格の125%の積載負荷において、停止時にかごの位置を保持すること」とされています。

今回のエレベーターはカゴの積載重量が600キロなので、750キロは保持できる設計になります。3倍の荷重に耐える設計ではなく、結果的に「今回は3倍の荷重に耐えた」と考えていただいた方が、理解しやすいと思います。


――今回の検証結果を踏まえ、エレベーターを安全に利用するための注意点は?

普段、使っているビルやマンションのエレベーターで積載重量以上の重さをのせることはほとんどないと思うので、安心して使っていただければと思います。

ただ、フォークリフトでエレベーターに荷物を積み込むなど、特殊な環境の場合は、積載荷重をしっかりと確認していただき、事故のないようにしていただけたらと思います。

積み込んだおもりを片付ける様子(提供:京都エレベータ)
積み込んだおもりを片付ける様子(提供:京都エレベータ)

京都エレベータは、この他にも「エレベーターの中で跳ぶとどうなるのか?」「エレベーターで地震が起きるとこうなります」など、エレベーターに関する興味深い動画を多数公開している。エレベーターをより安全に利用するためにも、こうした動画をチェックしてみてはいかがだろうか。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。