政府が力を入れている「リスキリング」について、正社員の約8割が「必要」と思う一方、実際に昇給した人は1割程度だった実態が明らかになった。

(画像はイメージ)
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「リスキリング」とは、職業に直結するスキルを得ることで、1月の国会での岸田首相の「育児中の学び直し」発言が議論をよんだことを記憶している方もいるだろう。

そんなリスキリングについて、総合転職情報サイトの「マイナビ転職」が20~59歳の正社員800人に実態調査を行い、3月7日に結果を公表した。

「必要」だと思うが「昇給した」は1割…理想と現実にギャップ

まず「今の自分にリスキリングは必要だと思うか?」聞くと、「とてもそう思う」と「ややそう思う」を合わせた79.6%の人が必要性を認めた。

特に20代は「とてもそう思う」と答えた人がほかの年代より多く、社会人歴の短い若年層ほどスキルアップの必要性を感じている様子がうかがえる。

(マイナビ転職調べ)
(マイナビ転職調べ)

リスキリングに期待することについては、「仕事・働き方の幅を広げること(40.1%)」が最も多く、2位は「学んだ知識をいまの仕事・業務に役立てること(35.9%)」。「昇給」を期待する人は29.6%だった。

(マイナビ転職調べ)
(マイナビ転職調べ)

ではリスキリングを実践した結果はどうだったのか。
調査対象者のうち358人のリスキリング経験者に、やったことでの変化を聞いたところ、最も多い答えは「資格の取得ができた(26.8%)」だった。

しかし、2位以下は「時間確保やコストの確保が大変だった(18.4%)」、「身に付けたスキルを生かせていない(16.8%)」「身につけたが、もう忘れてしまった(14.5%)」とネガティブな声が続く。

約3割の人が期待した「昇給」は11.2%。「昇進・昇格」は6.4%と、理想と現実にギャップがあるようだ。

(マイナビ転職調べ)
(マイナビ転職調べ)

制度面の整備が整っていない

リスキリングは必要だと思っているのに、昇給した人は少なく、理想と現実のギャップがあるのはどうしてなのか?マイナビ転職の担当者に聞いた。
 

――約8割の人がリスキリングを必要と思っているのはなぜ?

AIやDXの推進など社会の大きな変化により、現在の業務での知識やスキル不足を感じながら働いている人も多くなってきていることが予測されます。そのため、「今のスキルだけでは通用しなくなるかも」と不安を感じ、リスキリングの必要性を実感していると考えます。


――リスキリングをしても、なぜ昇給できない?

現状はリスキリングをプライベートの時間でやっている人が多いため、スキルアップしていることを会社が認知できていないケースが1つ考えられます。また、「身に付けたスキルを生かせていない」という回答も一定数見られたため、スキルを身に付けても発揮する場がなかったケースも挙げられます。


――なぜリスキリングには理想と現実のギャップがある?

政府の推進や企業の制度導入などで「スキルアップを促進する」風土の整備は進みつつあるものの、企業側の「身に付けたスキルをどの様に評価するのか」という制度面の整備が整っていない部分だと考えます。

リスキリングは今後増えていく

――ネガティブな意見も多いが、リスキリングはするべき?

リスキリングをすることで仕事や働き方の幅がより広がると考えます。そのため、社内で希望の仕事やポジションに近づくだけでなく、転職や副業でやりたい仕事ができるようになる。また、新しい業界にチャレンジできるなど、より自分に合ったキャリア形成に繋げる、手段の一つにもなるかと思います。


――リスキリングは今後 増えていく?

政府や企業が推進していますし、変化の早い社会で、企業がより成長していくためには、リスキリング人材の存在は不可欠であり、増えていくのではと思います

(マイナビ転職調べ)
(マイナビ転職調べ)

ちなみに今回の調査で「リスキリングを今していない理由」を聞いたところ、答えが集中したのは「時間がない/忙しい(39.1%)」、「何から始めればいいか分からない(20.6%)」、「勉強にお金をかける余裕がない(19.8%)」だった。

この答えに頷いている人も、まだリスキリングの理想と現実にギャップはあるが、今後を考えると早めにとりかかった方が将来の選択肢が広がるのではないだろうか。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。