近年、働き方改革が進み、「長時間労働・低賃金・ハラスメント・高離職率」などのいわゆる、ブラック企業と言われる環境は減少傾向にあるとされる。一方で、最近では「ゆるすぎるホワイト企業」が増加し、そのゆるさが原因で離職するケースがあるという。

こうした中、「Job総研」を運営する株式会社ライボが「ゆるすぎるホワイト企業」に関する調査を実施し、その結果を1月16日に公表した。

昨年12月28日~今年1月4日にかけて、682人の社会人の男女を対象に実施した「2023年 働く環境の実態調査」で、これまでのキャリアで働く環境がゆるすぎると感じる企業に勤めた経験の有無を聞いたところ、全体の34.2%が「経験あり」と回答したことが分かったのだ。

さらに、「経験あり」と回答した233人に、ゆるすぎる環境がきっかけで転職をした経験の有無を聞いたところ、48.9%が「経験あり」と回答している。

年代別で見ていくと、ゆるすぎる環境が原因で転職をしたのは50代が100%で最多回答になり、次いで40代が66.7%、20代が65.4%、30代が37.0%という結果になった。

ゆるすぎる企業に勤めた経験 ゆるすぎて転職をした経験(提供:株式会社ライボ)
ゆるすぎる企業に勤めた経験 ゆるすぎて転職をした経験(提供:株式会社ライボ)
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今回の調査で、職場のゆるさが原因で離職するケースが示されたわけだが、そもそも、「ゆるすぎるホワイト企業」というのは、どのような企業を指し、職場がゆるすぎると、転職したくなるのは、どうしてなのか?

また、「ゆるすぎるホワイト企業」に勤めている人は、どうすれば成長できるのか? そして、「ゆるすぎるホワイト企業」側は、転職されないために、社員とどのように接すればいいのか?

ワークライフバランスを重視する働き方がある中で按配が難しい面があるが、株式会社ライボの担当者に、企業側に必要な対策を聞いた。

「ゆるすぎるホワイト企業」の特徴

――ゆるすぎる労働環境に注目し、調査を行った理由は?

ライボが運営している、就職・転職・キャリアに特化した匿名相談サービス「JobQ(ジョブキュー)」にて、労働環境についての質問の増加が顕著になりました。

その中で、「ブラックな環境も悪だけど、ゆるすぎる環境もアウト」「ゆるすぎる環境で自分の成長が不安」など、同様の投稿が見られたことから調査するに至りました。


――「ゆるすぎるホワイト企業」というのは、どのような企業を指す?

捉え方は個人の価値観も大きく影響すると思いますが、下記のようなことが代表的に挙げられます。

・業務量が少なすぎる
・スキルに対して業務が簡単すぎる
・管理体制が甘すぎて、サボれてしまう
・業務に対するフィードバックが甘すぎる
・自身のスキル向上が見込めない

「ゆるすぎる環境は成長にならない」

――「ゆるすぎる企業に勤めた経験あり」が34.2%。このうち「ゆるすぎる環境が原因で転職をした」は48.9%。この結果をどのように受け止めればいい?

これには前提として、“ブラックな環境”なのか、“ゆるすぎるホワイトな環境”なのかは、個人の価値観や仕事観が大きく影響していることが挙げられます。

Aさんはブラックだと感じる環境でも、Bさんにとってはとても働きやすい環境ということもあり、その逆でホワイトな環境をブラックだと感じる人もいるといった具合に、ブラックな環境とホワイトすぎる環境というのは表裏一体なのだと思います。

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――職場の環境がゆるすぎると転職したくなる。これは、どのような理由が考えられる?

全体的には、ゆるすぎる環境によって、将来に対する漠然とした不安を抱きやすくなることや、自身の成長にならないということが挙げられます。

回答者の記述回答から抜粋して、特に多かったものを4つ挙げます。

・業務量が極端に少なくて暇な時間が多く、自身の成長のスピードに不安を感じた
・目標管理などが特にされていないので、基本的に業務への評価をされない
・リモートワークの管理体制がないので、どこで何をしていても何も言われないし、成果報告もない
・稼働時間に制限がなく、自由な場所と時間で働けるので、サボろうと思えば、サボれてしまう

「ゆるすぎるホワイト企業」で成長するためには?

――「ゆるすぎるホワイト企業」は、ゆるすぎるという理由で転職されないために、どうすればいい?

重要なのは、社員全員で職場環境を作り上げていくという、職場全体の雰囲気と意識を作り上げることだと思います。会社組織というのは、誰か一人のものではないので、社員全員で理想的な職場を作り上げていくことで、それに近づいていくのだと思います。

この職場はブラックだとか、ゆるすぎると言ったことで、何もせず、ただ、その環境を受け入れるのではなくて、みんなでその環境を作り上げる動きを具体的にしていくことこそが、その企業独自の雰囲気や文化を作り上げて、結果的に理想的な環境の醸成につながると思います。


――ブラックな働き方が嫌われる一方で、ゆるすぎても離職される。管理する企業側は社員にどのように仕事をふればいい?

任せる業務に対して、なぜそれをするのか、その業務の重要性、または自身の成長に影響することなどを踏まえて、具体的に仕事をふるのが良いと思います。

ライボの調査では20代の7割が「仕事で叱られた経験がない」といった結果もあり、年代別では圧倒的に多い結果になっています。それに対して、全体的な割合としては少ないですが、「叱られたい」という考えを持っているのも、20代が最も多いことも分かっています。

マネジメントする側は、残業が発生しない程度の業務量や進捗状況の把握、また、ハラスメント扱いされないようにといったことに気を配りすぎて、業務量が甘くなったり、業務に対するフィードバックも甘くなってしまう傾向にあります。

しかし、特に今の20代は、ある一定の厳しさを求める傾向があるので、根拠のある厳しさを出していくことは有効になると思います。

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――「ゆるすぎるホワイト企業」に勤めている人は、どうすれば成長できる?

前述したように、この職場はブラックだとか、ゆるすぎると言ったことで何もせず、ただ、その環境を受け入れるのではなくて、自身が職場の環境を創る一員だということに意識を変化させることが最も重要だと思います。

また、置かれている環境が改善しないならば、他に視野を広げてみて、新しいことを学び、新しいスキルを身につけ、そして新しい業務や職業に就くようなリスキリングをすることも重要です。

一貫して言えることとしては、環境を醸成する一員であるということや、その環境を選択する権利もあるということをベースに、自身が具体的にアクションをしていくことが重要だと思います。



ブラック企業が減少傾向にある一方で、今、増えているという「ゆるすぎるホワイト企業」。ゆるすぎる環境に不満を持たれ、転職されないためには、根拠のある厳しさを出していくことが有効だという。

また、「ゆるすぎるホワイト企業」に勤めている人は、その環境を受け入れるのではなく、自分が職場の環境を創る一員だということに意識を変化させてみてはいかがだろうか。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。