大阪関西万博の目玉として期待される「空飛ぶクルマ」。14日大阪城公園で、機体を開発するアメリカの「リフト・エアクラフト」社と総合商社の丸紅が共同で飛行実験を行った。

"空飛ぶクルマ"が大阪城公園で飛んだ

アメリカから来たエンジニア集団が持ち込んだのは、日本初飛行となる世界最新鋭の「空飛ぶクルマ」。大阪・関西万博を期に「空飛ぶクルマ」が注目を浴びる

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大阪で、世界中の技術者が憧れる機体を披露しようというのだ。さかのぼること5日前、関西テレビは機体の組み立て作業が行われる現場に向かいました。

記者リポート:
空飛ぶクルマを乗せたトラックが、神戸空港の隣にある施設に入ります

トラックから取り出される巨大な荷物。その持ち主は、空飛ぶクルマを開発するアメリカの企業・リフト・エアクラフト社の天才エンジニアたちだ。

リーダーは飛行実験でパイロットも務めるナイスガイ、ジェイスだ。

今回日本に持ち込まれたのは、アメリカでは実用化が近いとされる「HEXA(ヘクサ)」と呼ばれる、自分で操縦する1人乗りタイプの機体だ。

空飛ぶクルマをめぐっては2月、大阪・関西万博での運行を目指し、4つの事業者が発表された。現段階で「ヘクサ」は含まれていないが、リフト社は今後、安全性などを証明し、万博で飛ばすことを目指している。

機体の重さはわずか200キロほど。ほぼ全ての工程を手作業で組み立てることができる。

ジェイスを中心に作業を進めていると、トラブルが…

エンジニア:
4つのフロート(土台)しかトレーラーに乗らない。ここからはみ出るよ。あの図面のサイズはなんだったんだ

運送会社の担当者:
(事前に)聞いているサイズと違うから

機体を支える部品の横幅が事前に聞いていたよりも広く、完成後、搬送するトラックの荷台に乗らないことが判明した。

パイロット・ジェイスさん:
運ぶためのサイズに合わせて2つのフロートは外さないといけない。大阪城に着いてから付けるよ

ジェイスの判断で飛行実験が行われる大阪城公園で最後の組み立てを行うことにした。

その後は順調に作業が進み、少しずつ空飛ぶクルマの形に近づく中…、ジェイスが作業からはずれ、突然VR(仮想現実)ゴーグルを装着。

パイロット・ジェイスさん:
機体の飛行実験に向けてトレーニングするんだけど、そのシミュレーションだよ。コントロールを使うと、実際の搭乗ととても似ていて、いいトレーニングになるよ

作業は夜まで続き、ようやく空飛ぶクルマの本体部分が完成。

(Q:コックピットにある、この機械は何ですか?)
丸紅・太田俊介さん:

このジョイスティック一本で操作を行う。これで(機体を)上げ下げして左右に倒して、離着陸は自動で行うので、このボタンをひとつ押したら自動で離着陸するような設計になっています

乗り心地を確認するパイロットのジェイスは…

パイロット・ジェイスさん:
良さそうだね。かっこいい。ここに座って車を飛ばすのは素晴らしい体験になる

そして3月14日、機体は無事に大阪城公園へ運び込まれ、いよいよ、フライトの時が来た。大阪城を横目に悠々と空中散歩するジェイスは、余裕の表情でサムズアップ!リフト社によると、講習を受ければ誰でも簡単に操縦することができるそうだ。

会場には、まさに万博へ向け「空飛ぶクルマ」の開発にいそしむ4事業者の1つ「スカイドライブ」社の社長の姿も。

スカイドライブ・福澤知浩代表取締役:
ただひたすらに飛んでいてうらやましい。(我々も)大変ですけど頑張っています

(Q:2025年はスカイドライブの空飛ぶクルマが飛ぶことは期待しても?)
スカイドライブ・福澤知浩代表取締役:
もちろん

テストフライトを受け大阪府の吉村知事は…

(Q:万博で14日の(リフト・エアクラフト社の)機体が飛ぶ可能性はある?)
大阪府・吉村洋文知事:
ゼロではないと思います。自転車に乗るような感じで、将来的には空飛ぶクルマで空を遊覧できる時代が来ると思っています

各社がしのぎを削る最先端事業。未来の乗り物にますます期待が高まる。

空飛ぶクルマ「HEXA」はどんな機体?

実証実験を行ったアメリカのリフト・エアクラフト社製の「HEXA」の特徴は以下の通りだ。

▼全長4.5m、総重量200kg
▼18個のプロペラを搭載
 (飛行中に最大6個が停止しても安全に飛行できる設計)
▼足元には6本のフロート
 (水上からも離発着が可能)

「HEXA」は現状、万博には採用されていない。万博で披露される「空飛ぶクルマ」運航事業者は、すべてパイロットの他に乗客を乗せる2人乗り以上を予定している。

実証実験を行ったリフト社の「HEXA」は1人乗りのため、万博では飛ばない予定になっています。しかし国交省の空飛ぶクルマ企画室の担当者によると、「万博でもデモフライトなら飛べる可能性がある」と回答している。

すでに決定している4事業者が、実際に客を乗せて運航する様子は確実に見られるのか。現状について空飛ぶクルマの研究をしている慶應義塾大学の中野教授に聞いた。

中野教授は「2025年の万博での商業運航は楽観視できない。前例のないルールづくりと技術開発に時間がかかる」と厳しい見方をしている。

(Q:どういった機体なら安全かというルールづくりと並行して、機体の開発が進められています。”ゴールなき中”での開発は難しいのでしょうか)
関西テレビ・神崎博解説デスク:
航空機やヘリコプターは既存の技術とルールがあるのですが、空飛ぶクルマは何もないところからスタートしていて、ルール作りやパイロットはどうするのかなどを法律で決めていかないといけません。また、事業者ごとに求められる技術やレベルも異なるので、2年後までにどこまで進められるのか注目です

(2023年3月14日 関西テレビ「報道ランナー」放送)

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