ロシアによる核兵器使用の脅威が高まる中、G7広島サミットに期待を寄せる高校生たちがいる。激変する世界情勢に目を向け、サミットについて「高校生として何か伝えるチャンス」と奮闘する“新聞部”に密着した。

広島出身 綾瀬はるかさんに直球質問

広島市中区の広島国際会議場で2月26日、「G7広島サミットユースフォーラム」が開かれた。

広島国際会議場(広島市中区)
広島国際会議場(広島市中区)
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ゲストには広島市出身で女優の綾瀬はるかさんや被爆者が登壇し、県内の中高生たちと戦争や平和について考えた。その中で、会場の客席から積極的に綾瀬さんに質問する高校生の姿が…。彼らは広島市西区の崇徳高校・新聞部のメンバーだ。

ゲストへ質問しようと手を挙げる崇徳高校・新聞部のメンバー
ゲストへ質問しようと手を挙げる崇徳高校・新聞部のメンバー

崇徳高校 新聞部:
戦争の話をいろんな方から聞かれてきて、それをこれからどのように還元していくのか、どんな活動をしていくのか。また、今後はどんな人に話を聞きたいと思いますか

綾瀬はるかさん:
被爆者の方は少なくなってきましたが、聞ける機会があったらお話を聞かせていただきたいなと思っています。それを、またこうしてみなさんとともに共有できたらいいなと考えています

部員150人超!受賞歴のある新聞部

崇徳高校・新聞部は、部員数150人を超える全国有数の新聞部。

新聞部に結成された「G7広島サミット取材特別編成班」
新聞部に結成された「G7広島サミット取材特別編成班」

平和、社会、スポーツなどさまざまな分野を取材し、2021年と2022年には全国高等学校総合文化祭の新聞部門で最優秀賞を受賞するなど、注目の存在だ。

その新聞部が今、最も関心を寄せているのがG7広島サミットである。「G7広島サミット取材特別編成班」を結成し、その活動に使うロゴを生徒たち自ら作成するなど気合十分。ロゴは、平和を象徴する折り鶴に“Road to G7”の文字が七色にデザインされている。

生徒たちがデザインした「Road to G7」活動のロゴ
生徒たちがデザインした「Road to G7」活動のロゴ

中心メンバーの1人、2年生の坂田勇太さん。

崇徳高校 新聞部・坂田勇太さん:
G7サミットが広島で開催されることがうれしいのもあるし、高校生として何か伝えるチャンスだと思います
(Q:同級生とサミットについて話すことは?)
皆無ですね。それは問題だと思っていて。真面目に新聞を作っているんだよではなく、「一緒に考えようよ」みたいな感じで新聞を出していきたい

県警サミット対策課を高校生が取材

新聞部の稲田寛汰さん。広島県警がG7広島サミットに向けて「県警史上最大の警備と位置付けて準備を進めている」という情報に興味を持った。そして2月2日、新聞部の取材班で広島県警のサミット対策課を訪問。

広島県警を訪問した新聞部(一番左が稲田さん)
広島県警を訪問した新聞部(一番左が稲田さん)

県警がサミットに臨む姿勢や期間中の警備について、植義則課長に独自の視点で取材した。

サミット対策課・植義則課長を取材
サミット対策課・植義則課長を取材

崇徳高校 新聞部・稲田寛汰さん:
24時間、警察官でなければいけないという思いをもって業務を遂行されていると言われていて、すごくプレッシャーがかかる仕事なんだなというのをひしひしと感じました

取材メモをもとに、1週間あまりで記事を仕上げていく。

稲田さんの取材ノート
稲田さんの取材ノート

花岡健吾教諭が記事をチェック。よくあるカタカナ表記の間違いに指摘が入った。

崇徳高校・花岡健吾 教諭:
「シュミレーション」だっけ?調べてみて

崇徳高校 新聞部・稲田寛汰さん:
シュミ…あれ?「シミュレーション」でした

部活とは思えない、本格的な新聞作り。細かな表記まで見落とさず訂正していく。
そして3月1日、稲田さんの記事を載せた「崇徳学園新聞」が全校生徒に配布された。

新聞には、植課長が身に着けている「G7エルマウサミットのカフスボタン」の話や学校内での意識調査など、高校生ならでは視点で丁寧に取材された内容が詰まっている。

G7にかける被爆者の思いを引き出す

冒頭の「G7広島サミットユースフォーラム」でも、報道陣に交じって取材する新聞部のメンバーたち。鋭い質問で被爆者の思いを引き出した。

被爆者の田中稔子さんを囲む報道陣と新聞部
被爆者の田中稔子さんを囲む報道陣と新聞部

崇徳高校 新聞部・坂田勇太さん:
田中さんは、いろんな取材を受ける中で「原爆投下後に垣間見えた青空が心に残っていて、絶望の中にも希望がある」とおっしゃっていました。ロシアによるウクライナ侵攻は絶望に近い状況にあると思うのですが、今の希望は何だと思いますか

被爆者・田中稔子さん:
今はアメリカとロシアの二極に分かれていますよね。仲介できることもあるんじゃないかと。それには日本が大きな力を発揮することを期待しています。核兵器禁止条約というすばらしいものがある。もう一度原点に返って、日本も核兵器禁止条約に目を向けてほしい。岸田首相は広島出身ですから勇気を持ってほしいと思います。政治屋じゃなくて平和の戦士になってほしいです

「政治屋ではなく、平和の戦士に」…高校生記者のまっすぐな思いが引き出した被爆者の言葉だ。生徒たちは“新聞”を通してさまざまは人と出会い、平和について考え続けている。

崇徳高校 新聞部・坂田勇太さん:
もう使われることはないと思われていた核兵器が今や使われそうになっていて、先が見通せない状況。G7サミットで政治家として首脳が広島に集まるのですが、首脳たちには広島で見たものから田中さんがおっしゃったような“平和の戦士”になって、大胆な策を講じてほしいです

被爆地・広島で初めて開かれるG7サミット。被爆地に眠る無数の声なきメッセージを、首脳らは受け取ることができるのか。次世代を担う若者たちの期待がかかっている。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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