学校と保護者が一体となり、子どもたちの成長を見守る「PTA」。仕事との両立が難しいなどの理由でPTAの役員になることを負担に思う保護者は少なくない。しかし今、そのPTAのあり方に、これまでにない動きが生まれている。

「PTA役員」どんなイメージ?

PTAの役員にどんなイメージを持っているか、街で聞いてみると…

PTAのイメージは…
PTAのイメージは…
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PTA未経験者:
「みんなで役員を押し付け合う」といった話を聞く。PTAのために仕事も早く帰らなくてはいけないとか

PTA未経験者:
大変そうなイメージ。できればやりたくない

PTA経験者:
楽しいときもあれば、連絡を取り合うのが面倒なときもあった

PTA経験者:
私もときどき、妻の代わりで参加する。役員の決め方を当日になって言われるとか…

(Q.決め方は?)
最悪、あみだくじ

新潟市の小学校が行った「PTA改革」

参加が任意の団体でありながら、役員決めなどに強制的なイメージがつきまとうPTA。共働き世帯が増えるなど、生活が多様化する今、そのあり方に変化が起きている。

新潟市中央区にある白山小学校。土曜日の体育館では、子どもたちがボールや竹馬などで元気に遊んでいた。見守っているのは、地域のボランティア、そして保護者だ。

白山小学校(新潟市中央区)
白山小学校(新潟市中央区)

土曜日の学校を開放し、子どもたちに遊び場を提供する白山小学校の「かがやきランド」。2021年度までは、PTA役員の保護者が割り振られた日に見守りをしていたが、2022年度からは、開催ごとに全保護者にメールを送り、参加を募っている。

保護者ボランティア:
これまでは、下の子が通う幼稚園のスケジュールと小学校のスケジュールを調整しながら役員になると考えると、気が重くなりがちだった。ボランティアになって気持ちは軽くなって、ポジティブに受け止められる

(Q.仕事はしている?)
保護者ボランティア:

平日は仕事、土日は休み

(Q.これまで、どんな気持ちで役員決めに参加?)
ガッツリ役員になってしまったら、その役員を1年間やらなくてはいけないので、逃げたい気持ちも多少あった。それに比べて、ボランティア制は参加しやすい。自分の子どもが友達と遊ぶ様子も見られるので、親としても、ボランティアスタッフとしても楽しく参加している

ボランティア制になる前は…
ボランティア制になる前は…

児童数が210人ほどの白山小学校。PTA役員の選出に長年、悩みを抱えてきた。

白山小学校 藤塚重光 PTA会長:
限られた人数の保護者から役員をお願いしなくてはいけない。その中で、家庭や仕事の都合で気軽に役員を引き受けられない事情がそれぞれにある。まるで罰ゲームのようなやり方で役員が決められていた

さらに、新型コロナウイルスの影響で、ほぼ全てのPTA行事が一時的に中止となった。

白山小学校 藤塚重光 PTA会長:
このままでは組織として成り立たないという認識が強まった

新型コロナも契機となった、白山小学校のPTA改革。

2021年度までは年間で27人の役員を選んでいたが、2022年度から会長・副会長の3人以外はボランティアに切り替え、行事のたびにメールで参加を募っている。

運動会では、用具の準備などに20人ほどのボランティアを募集したところ、想定以上の32人が参加した。この仕組みが学校側にも良い影響を与えていると言う。

白山小学校 金子淳嗣 校長:
運動会では、競技の進行に関わる部分を保護者に担っていただいた。その分、教員は、熱中症対策など、子どもたちの安全管理に目を向けることができた

PTA改革の初年度、「運動会以外の行事でも、十分な数のボランティアを集めることができた」と話す藤塚PTA会長。

白山小学校 藤塚重光 PTA会長:
各行事で仕事が足りないくらい参加いただいている。結果から見れば、組織改革をやって良かったと思っている

多くの悩み抱えるPTA 「ボランティア制」について議論

2023年2月4日。新潟市内の小・中学校のPTA役員など、約130人が集まった交流会で白山小学校の藤塚PTA会長がボランティア制度に移行した経緯などを発表。発表後、藤塚会長に「ある言葉」が掛けられた。

参加者:
すごい革命だ!

ボランティア制の導入が「革命」と言われるほど、今、多くのPTAが役員選考や組織体制に悩みを抱えているのだ。

全国的には、役員になることを嫌い、PTAに加入しない、いわゆる「未加入問題」が取り沙汰されている。

新潟市小中学校PTA連合会の佐藤邦栄会長は、「PTAの未加入の問題は今後、新潟でも顕在化してくるのではないか」と危惧している。

新潟市小中学校PTA連合会 佐藤邦栄 会長:
PTAは、新型コロナウイルスをきっかけに、変わろうとしている。変わらなくてはならない組織だと感じている

前向きなPTAのあり方を考える一例として紹介された白山小学校の組織改革。発表を受け、参加者たちは熱い議論を繰り広げた。

元 小学校PTA会長:
理想の形。本来、PTAはボランティアであるべきものだから

小学校PTA会長:
ボランティア制は、確かに気になっている。ただ、参加者が集まらないのが怖い

前 小学校PTA副会長:
ボランティア制に移行しても、中心となる会長・副会長は存在しなくてはいけない。そこをどうやって決めるのか

小学校PTA会長:
半ば強制的に役員になっても、終わってみたら「やって良かった」ということもあるのがPTA。ボランティアの場合、手を挙げた人しかやりがいが見つけられない可能性もある

中学校PTA副会長:
うちも役員の削減は進んでいる。ボランティアに移行するのは、すごく良いと感じる一方で、いきなりPTAの仕組みを変えるのは難しい。学校の状況を見ながら、徐々に変えていくことが必要

白山小学校の藤塚会長自身も、この1年で見えた課題を発表した。

白山小学校 藤塚重光 PTA会長:
PTA活動に保護者ボランティアとして参加して下さる方が固定化してきている

この「ボランティアの固定化」という問題についても、様々な声が挙がった。

参加者:
ボランティア制にしても、やらない人はやらない。今のままでも、立候補する人はする

参加者:
ボランティアであっても、「1人何回はマスト」みたいなルールは作らなかったのかな?

参加者:
ルールを作ると、結局「縛り」になって毛嫌いされてしまうかもしれない

参加者:
母親だけが参加するとか、親でなくてはダメというPTAの概念を取っ払えるのもボランティア制かなと思う。ご両親が忙しいなら、おじいちゃん・おばあちゃんがボランティアで来てもいいと思う

議論を終えたテーブルの中央には「来年度は、子どものためのPTAと思える広報をしたい」「強制感・イヤイヤのないPTA作り」といった文字が残されていた。

「保護者・教職員が協力する姿」を子どもに

2023年1月のある日。白山小学校で、年度末に配布するPTAの広報紙の打ち合わせが行われていた。

広報誌を作るのも、もちろん保護者ボランティアだ。これまでの誌面を参考にしながらも、新たなデザインに取り組んできた。

保護者ボランティア:
パソコン入力などは嫌いではないので参加した。楽しい雰囲気の広報誌ができればいいと思う

白山小学校の金子淳嗣校長は「PTAのボランティア制は、子どもたちにとっても意味があった」と話す。

白山小学校 金子淳嗣 校長:
一番身近な大人である保護者と教職員が協力して、行事の成功に向けて取り組む姿を子どもが見るのは大事なことだと思う。実際に、子どもたちは大人に支えてもらっている喜びを感じ取っている。そこから「今度は自分たちがクラスのために、学校のために、地域のために、できることがあるのではないか」と考え始めている

参加しやすいPTA、子どもの成長につながるPTAとはどんなものなのか…

「PTAのこれから」を模索する動きは、各学校で続いている。

(NST新潟総合テレビ)

NST新潟総合テレビ
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