現在国内に120万人いるとされる心不全患者。よく耳にする病名だが、具体的には知らない人もいるだろう。患者数が2030年には130万人になると推測されるこの病気と向き合うためには何が大切なのか、心臓分野のエキスパートに聞く。

意外と知らない「心不全」

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金沢大学附属病院 薄井荘一郎准教授:
心不全という病を知っていますか?
稲垣真一アナウンサー:
確か祖父が心不全で亡くなった気がしたんですが…当時は歳も歳だし、心臓が弱くなったかなと。
薄井准教授:
「心臓が弱る」はある意味正解です。心臓は身体中に血液を送るポンプの役割を果たしています。

高血圧や心筋症など様々な原因でポンプ機能が弱ってくると何が起きるのか。

血液が十分に送り出すことが出来ない事によって、疲労感や動悸、手足の冷えや血液の流れが滞ることによって生じる息切れ、呼吸困難、むくみなどが起こる。これら一連の症状を併せて心不全と呼ぶ。

増え続ける心不全患者…2030年には約130万人に

稲垣アナ:
国内でどれぐらいの患者数がいるんでしょうか?
薄井准教授:
現在は120万人と言われています。2030年には130万人になると推測されています。

心不全が発症した時に適切な治療が行われなかった場合、最も重症な人では1年で50~60%の人が亡くなるそうだ。そして比較的軽症な人でも5年で40~50%が亡くなるとされている。

薄井准教授:
心不全患者とがん患者の生存率を比べた海外のデータになります。心不全患者の5年生存率は50%前後とされています。膀胱がんや大腸がんと同程度となっています。
稲垣アナ:
お話を聞くとちょっと怖くなってきますね。心不全を予防することは出来るんですか?

薄井准教授:
心不全を4つのステージで分類しますが、心不全は一旦発症してしまうと何度も再発がしやすく、その都度、身体機能が落ちて治療が難しくなってきます。ですので、発症前のステージでしっかりと予防することが大切になってきます。

心不全の危険因子とは?

それでは、心不全を発症しないために具体的には何をすれば良いのだろうか?

薄井准教授:
心不全の危険因子は、高血圧や糖尿病、肥満、動脈硬化など生活習慣病です。

薄井准教授によると、心不全の予防方法も生活習慣病と同じく、禁煙・節酒・適切な運動が必要とのこと。さらに食事では、塩分制限、そして入浴の際はヒートショックを避けるなど心臓に優しい入浴を心掛けると良いそうだ。

薄井准教授:
更に2022年2月、私たち県内の心臓病の治療に従事する医療従事者の協議会が県と共同でこのような手帳を作成しました。

薄井准教授が取り出したのは「心不全地域連携パス・手帳」

心不全を発症した患者さんに渡しているもので、患者の基本データや心不全の重症度、治療指標、入退院歴などに加え、日々の体重や血圧、脈拍、更に自覚症状を書く欄がある。

万が一の際、どの医療機関を受診してもこの手帳のデータを元に迅速に治療が始められるようになっているのだ。

薄井准教授:
心不全は再発を防ぐことが非常に重要です。病院での治療やリハビリはもちろん、退院してからの生活、栄養指導など多くの職種が連携して患者さんを支えていくことが重要です。今後も様々な取り組みによって患者さんがより質の高い生活を送れるように医療連携、地域連携を行っていきたいです。

(石川テレビ)

石川テレビ
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