2月1日から「緊急地震速報」が変わる。これまでの震度予想に加え”長周期地震動階級”が新しく追加されることになった。この聞き馴染みのない”長周期地震動階級”とは何か?変更後、私たちが注意すべきことは?

長周期地震動で高層階の揺れ大きく

これまで、緊急地震速報は”震度の予想”によって発表されてきた。発表基準は「震度5弱以上を予想した場合」、発表の対象となる地域は「震度4以上を予想した地域」。2023年2月1日より、それに”長周期地震動階級”の予想値が追加される。まずは長周期地震動階級がどういうものなのか、専門家に説明してもらった。

広島大学 先進理工系科学研究科・三浦弘之 准教授:
一般的な地震は小刻みに揺れることが多い。その場合、”低層の建物”が大きく揺れる

この記事の画像(9枚)

模型を使って、低層と高層の建物の揺れの違いを比較。三浦准教授が手で土台を小刻みに動かすと、確かに、高層よりも低層の建物の揺れ幅の方が大きい。

広島大学 先進理工系科学研究科・三浦弘之 准教授:
長周期地震動というのは、ゆっくりとした周期の長い波の大きさを表すもの。地面がゆっくりした揺れになると低層の建物にはほとんど影響がないが、高層の建物はこの模型のように非常に大きく揺れてしまう

模型で長周期地震動を説明する三浦准教授
模型で長周期地震動を説明する三浦准教授

土台を大きくゆっくりと前後させると、高層の建物が扇を描くように大きく揺れた。その揺れは模型の先端(高層階)へ近づくほど大きい。

震源から”遠く広範囲”に伝わる

長周期地震動には、3つの大きな特徴がある。
1) 地震の強さを示すマグニチュードが大きい地震ほど揺れが大きくなる
2) 地震が発生した場所から数百キロメートル離れた場所でも大きく長く揺れる
3)ビルの高層階や免震構造の建物ほど揺れやすい

「長周期地震動」で実際に起きた被害のケース。2011年3月の東日本大震災では、震源から約700キロ離れた大阪市(最大震度3)のビルの高層階で、エレベーター停止による閉じ込め事故や内装材や防火扉が破損する被害があった。
また、東京都内のビルでは、同じ建物でも階によって被害の程度が大きく異なった。2階と24階の被害を比べると、2階は棚から本が床にパラパラと落ちた程度。一方、24階では棚ごと倒れて大きく崩れてしまった。同じ震度とは思えない”被害の差”が生じている。

長周期地震動は短い周期の揺れに比べて減衰しにくいため、遠くまで伝わる。大阪市の高層ビルの被害では、地上で観測された震度は3だった。震度が小さくても高層階で大きな揺れになることがある。

広島大学 先進理工系科学研究科・三浦弘之 准教授:
震度ではゆっくりとした揺れの大きさは表現できなかったので、高層マンションに住んでいる人などに対して、揺れが大きくなるという注意を促すことが難しかった。南海トラフ巨大地震のような、マグニチュード9クラスの地震の場合には、非常に大きな長周期地震動が発生すると予測される。長周期地震動によって、広い範囲で建物が大きく揺れることが心配されます

震度とは別の「階級」で知らせる

震度では表せなかった高層ビル高層階の揺れの大きさを把握するため、気象庁は新たに長周期地震動階級を策定。「階級」は以下の4つに分けられる。

階級1 「室内にいた人ほとんどの人が揺れを感じるなど」
階級2 「室内で大きな揺れを感じ、物につかまりたいと感じるなど」
階級3 「立っていることが困難になるなど」
階級4 「立っていることができず、はわないと動けない。揺れに翻弄されるなど」

2月1日からは「階級3」以上が予測された地域にも緊急地震速報が発表される。つまり、発表基準は「震度5弱以上または長周期地震動階級3以上を予測した場合」となる。しかし、発表基準が新たに加わっても、私たちが取るべき行動、命を守る行動はこれまでと変わらない。今まで通りの対応を、落ち着いて迅速に行うことが大切だ。

緊急地震速報を見聞きしたら…
〇頭を保護し体勢を低くして身の安全を確保する
〇揺れが収まるまで無理に火を消そうとしない
〇(ビルなどで)慌てて出口や階段に殺到しない
〇エレベーターは最寄りの階で停止してすぐ降りる

緊急地震速報の発表に新たな基準が加わることで、人命に係る重大な被害の軽減が期待される。これを機に、家具やオフィス機器の固定など地震への備え、身の回りの安全を確認しておきたい。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
テレビ新広島

広島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。