寒い日が続いているが、雨や雪の日にメガネのレンズが濡れてしまった経験がある人もいるだろう。そんな時は、どう対処しただろうか?
長野・上田市にあるメガネ店「張田屋眼鏡院」の店主がTwitterアカウント(@HMomojiro)で、「濡れたメガネはそのままにしないでかならず拭き取ってね」と注意を呼び掛けている。

濡れたままの状態で放置しておくと、水滴の跡が残る“水焼け”になってしまうというのだ。こすれば取れるように思えるが、一度ついたら取ることはできず、気づかないうちにジワジワできるシミだという。
「気にせず自然乾燥させていた」「しっかりふき取っていなかった」というメガネユーザーは、今一度手元のメガネを確かめてみるといいかもしれない。「もしかして、このシミって…」と気になっていた汚れの正体が“水焼け”の可能性がある。
風呂の鏡、車の水垢と同じ
メガネは傘などを使用しても濡れることがあり、場合によっては水で洗ったりすることもある。水焼けを避けるためには、どのような方法で手入れをするのがよいのだろうか?
ポイントなどを店主に教えてもらった。
ーーそもそも、なぜ水滴がシミになるの?
水滴に含まれる汚れの成分によって乾燥する際に表面にシミが残ります。お風呂の鏡が白く曇ったり、車の水垢などと同じ状態です。
ーーサングラスも同じ現象は起こる?
起こります。通常市販されているサングラスは、それほど高品質なレンズコーティングがされていない場合が大半ですので、より起こりやすいと思います。

ーー濡れた場合の手入れのポイントを教えて。
眼鏡が濡れた場合はとにかく拭き取ることです。自然乾燥はNGです。雨水などはホコリが含まれている場合もありますので、そのまま拭き取ると傷つけてしまう可能性があります。流水で流してから拭き取るのがおすすめです。
水を拭き取るにはタオルやティッシュペーパーで良いのですが、おすすめは使い古してヨレヨレの日本手拭いです。しかし、これは私の経験からの個人的な意見で眼鏡業界ではそんなことはいわれていません。
ーーもし水焼けになったら、レンズ交換しか方法はない?
ありませんね。水垢なら重曹やクエン酸などで落ちるんじゃないかと思われるかもしれませんが、アルカリや酸はそれ自体がコーティングを傷めます。
水だけでなく“火・高熱”にも注意!
また店主は今回のツイートで、水だけでなく“火”に対する注意も呼び掛けている。火に近づきすぎることでレンズ表面のコーティングがシワシワになってしまうというのだ。こうなると修復する方法はないため、レンズ交換をするしかないのだそう。

これは“熱クラック”という現象で、シワシワの原因は、レンズ基材のプラスチックは膨張するのに対し、レンズ表面のコーティングは膨張しないという“膨張率”が違うことによるもの。
そのため、火に近づきすぎるだけでなく、寒い外から急にストーブの前に陣取るなどの急激な寒暖差でも同じ現象が起こるという。
サウナに入った場合などでも可能性があり、炎天下の車中に置きっぱなしにすることで起こることも多いという。店主は「車によっては天井などにサングラスの収納スペースがあったりしますが、置きっぱなしはおすすめしません」としている。

“熱クラック”の対策としては、とにかく高熱を与えないこと。どれくらいの温度で起こるのかはレンズの質によるが、ドライヤーの熱風でも起こる可能性があるとのことなので、急激な寒暖差に気を付けてほしい。
メガネの手入れの注意ポイント
ーー手入れについてもう少し教えて。
眼鏡は濡らしてはいけないと思われている方もいらっしゃいますが、ご自分で水洗い出来ます。その場合、専用のメガネシャンプーを使用するか、中性洗剤を洗面器などで薄めてジャブジャブ洗って下さい(アルカリ性、酸性の洗剤は使用不可です)。ただし、眼鏡の素材によっては水洗い出来ないものもあります(べっ甲や木製など)。
また、どうしても暑い場所や湿気の多い環境などで作業しなければならない方もいらっしゃいます。レンズの水やけや防止性能や耐熱性などは品質によって違いますので、信頼の出来るメガネ屋さんにご相談下さい(耐熱保証をして入るレンズメーカーもあります)。

ーーちなみに、メガネを選ぶポイントは?
信頼の置けるメガネ屋さんを選ぶことです。その方のお仕事や使用環境などをじっくり聞いてくれて、また、似合うメガネを提案してくれるなど「提案型」のメガネ屋さんをおすすめします。
さてこれから雪かきか…。
— 張田屋メガネ院(店主 桃次郎) (@HMomojiro) January 24, 2023
この辺では雪の日は傘ささないけど濡れたメガネはそのままにしないでかならず拭き取ってね。水焼けするぞ。こすれば取れるような気がするけど取れません。
熱クラックと違って気付かないうちにジワジワくるシミだぞ。こわいこわい。
メガネ外して雪かきしよ。 pic.twitter.com/BnFd7OYi2O
「張田屋眼鏡院」の店主は毎年、Twitterやブログなどで、水焼けや熱クラックの注意喚起をしている。地域で行われる「どんど焼き」行事で、焚き火での熱クラックを起こす人が多いからだそう。
雨や雪だけでなく、日々の生活の中で水に触れる機会は多い。また、冬や夏の季節では、暖房冷房の点いた室内と、外の気温に大きな差があったりすることも多い。
メガネを着用している人は知っておいた方がいい知識だろう。