コロナ禍で家での子育てに孤独感を感じるお母さん、お父さんは多いのでは?そんな不安や心細さの解消を目指す「伴走型の支援」に取り組む活動を取材した。

近くに両親、友人がいない子育ては孤独

広島市内で子育てをする宮本さん。出産後、広島で暮らし始め、両親や友達が近くにいない中で、初めての子育てだという。

宮本厚子さん、湊月(みつき)くん
宮本厚子さん、湊月(みつき)くん
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1児の母・宮本厚子さん:
知り合いもいなくて寂しくて、もうこのマンションの1室で子供と24時間一緒で1人きりというのが、すごい寂しい育児の始まりでしたね

大人の話し相手は夫だけ。1人息子湊月(みつき)くんへの愛情は、いっぱいなのだが、孤立感が募る毎日だった。

宮本さん:
初めての育児の不安が大きくて、これでいいのかなとか、なんで離乳食食べないのかなとか、ちょっとしたところも、本とかネットしか頼りがなくて、やっぱり生身の人間と話して、気を紛らわしたり安心したいというのがあったんですよね

子育て交流施設もコロナ禍で閉鎖が多く、行き場がない状態だった。
そんな宮本さんが出会い、救われたという場所がある。

保育士がいる子育てオープンスペースが”シェルター“に

保育士:
夜は何時に寝ました?
宮本さん:
11時
保育士:
あら、どうしたんです?
宮本さん:
最近3日間遅いんです

広島市の中心部にある「子育てオープンスペースつばさ」。様々なおもちゃがあり、登録をすれば、1日100円で利用できる。保育士が常駐していて、相談をすることもでき、ママ友作りの場にも。コロナ禍でも利用人数の制限はあるが、できるだけ開けてきたという。

宮本さん、この日は…
宮本さん:
4月から保育園なので、その準備の買い物でデパートに行ってみたり、ブレイクタイムでカフェに行ってみたりで、2時間を過ごしたいと思います

こちらでは「一時預かり」もしていて、1時間250円で、3時間まで利用可能。

お母さんがいなくなり、大泣きをしている湊月くんだったが、保育士さんがおもちゃを見せると3分で泣き止み、2時間後にお母さんが戻るまで楽しく過ごした。

宮本さん:
リフレッシュできました。ちょっとコーヒー飲んで。ほっとできるところなので助かります。こういう場が広島にあるから良かったなと思います

この「子育てオープンスペースつばさ」は、広島市の補助金を受けてNPO法人が運営している。2か所ある施設で、月におよそ1300人が利用している。

利用者のお父さん:
転勤で関西からきているが、やっぱり知り合いも親も近くにいないので、子供を見てもらえるスタッフもいる、こういう空間はすごく助かります

利用者のお母さんA:
家でずっと育児していると閉塞感がたまるんですけど、すごい心に余裕ができるというか、自分にも頼れる人がいるなって思ったりしますね

利用者のお母さんB:
お母さんのようなアドバイスをくださるのが、ありがたくてほっとします

「子育ての当事者は困っていても声を上げられない」

運営の中心を担う香川さん。自身の子育て経験が活かされている。
ひろしまNPOセンター・香川恭子理事:
私も子育てをしていた時に思ったんですけど、当事者として今、こんなことに困ってますというのはなかなか言いにくいんです。なぜなら、自分がお母さんとしてもっと頑張ればいいんじゃないかと自分を責めてしまいがちなんですね、なのでなかなか言いにくい。孤立した状況って声をあげない限り、社会が気付いてくれないんですよね。そこはすごく大きな問題だと思っている

ひろしまNPOセンター 香川恭子理事
ひろしまNPOセンター 香川恭子理事

「子育て世代を孤立させない」という思いを実現すべく香川さんは、長年に渡り活動してきた。
料理教室などの講座を託児付きで開催し、子育て世代も参加しやすい場を早い時期から作った。

無償で家庭訪問し、妊産婦に寄り添う「ホームスタート」。今では、広島県内の別の市にも広がっている。

活動のボランティアスタッフの育成も行い、コロナ禍の外出自粛中には、オンラインでの子育て広場も開催。

一般の統計を見ても、母親は初めての出産では産前・産後の数カ月間、精神面での不調の割合が高く、産後2週間では4人に1人が、産後2ヵ月でも10人に1人が不調となり、重篤化すると産後うつや児童虐待につながると言われている。

こうしたことがないよう、長年、子育て世代に寄り添ってきた香川さん。今、課題に直面しているという。

「値上げはしたくない」活動資金をクラウドファンディングで募る

ひろしまNPOセンター・香川恭子理事:
今、私たちの子育て支援の活動でクラウドファンディングを始めたんです。ニーズが増えてくるとそれに対応するためには、行政の補助金だけでは足りなくなってきてしまって、何とか2月、3月も、切れ目なく支援を続けていくために今、一生懸命クラウドファンディングで寄付を集めています

ひろしまNPOセンター・香川恭子理事:
誰でも利用できるよう値上げはしたくないんです。

特に無償で行う「ホームスタート」は、コロナ禍で利用者が増え、ボランティアに払う交通費確保が課題だ。

資金面で不安を残す中、4月には、国が「子ども家庭庁」を設置し、ますます自分たちの役割は増していると感じるという。

ひろしまNPOセンター・香川恭子理事:
子ども家庭庁ができて、政府はどんな状況でも、どんな立場の方でも切れ目のない支援をするための伴走型の子育て支援を打ち出しています。行政と一緒に連携を取らせてもらいながら、本当に広島で子育てをする方が困ったときに助けてくれるところがあってよかった、という風に思ってもらえるものにしていきたい

活動に感謝する宮本さんも、みんなに知ってほしいと応援。
1児の母・宮本厚子さん:
子どものためにボランティアさんが作ってくれた、絵本のような切り絵ですけど、「子育てオープンスペースつばさ」で全部、作ってくれたもので、本当に手作りであたたかい。心のオアシスになっています。みんなの助けを借りながら子育てできる、環境づくりというのは、社会全体でできると、すごいみんな助かるんじゃないかと思います

ボランティアさんが宮本湊月くんのために作った切り絵
ボランティアさんが宮本湊月くんのために作った切り絵

政府が打ち出した「伴走型相談支援」は産前産後3回の相談と合計10万円の経済支援だが、このNPO法人のように、実際に子育ての現場を支えている人たちへの支援も望まれている。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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