新型コロナウイルスのオミクロン株の後遺症は、従来株、デルタ株に比べ睡眠障害を訴える人の割合が高いことが新たにわかった。岡山大学病院の調査によって明らかとなった。

岡山大学病院では2021年2月に新型コロナの後遺症を専門的に診る「コロナ・アフターケア外来」を開設した。昨年12月末までに受診した患者526人について、従来株・デルタ株・オミクロン株の3種類で症状を分析したところ、全ての株で一番多いのは倦怠感だったが、オミクロン株では睡眠障害を訴える割合が27%に増加し、従来株(12%)、デルタ株(13%)における睡眠障害に比べて、2倍以上に増えていたことがわかった。

コロナ後遺症に⾒られる睡眠障害(画像提供:岡山大学病院)
コロナ後遺症に⾒られる睡眠障害(画像提供:岡山大学病院)
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コロナ後遺症の各症状を訴える人数(画像提供:岡山大学病院)
コロナ後遺症の各症状を訴える人数(画像提供:岡山大学病院)

そもそも睡眠障害とはどんな病気か?岡山大学病院の大塚文男副病院長によると、睡眠に対する不足感から身体的・精神的・社会的な支障をきたしている状態のことで、不眠の症状は〈1〉寝つきが悪い「入眠障害」、〈2〉途中で何度も目が覚める「中途覚醒」、〈3〉朝早くに目が覚めてしまう「早朝覚醒」、〈4〉熟睡できない「熟眠障害」の大きく4つのタイプに分けられるという。

従来株・デルタ株・オミクロン株を含めた全体の睡眠障害の割合は、75%が「入眠障害」、48%が「熟眠障害」、40%が「中途覚醒」、7%が「早朝覚醒」の症状であった。オミクロン株の後遺症による睡眠障害の症状についても4つのタイプのいずれも認められた。

また、夜間の不眠を自覚していなくても、日中に強い眠気におそわれる過眠の症状を訴える人も見られた。他の症状については、倦怠感や頭痛のオミクロン株の割合は、従来株・デルタ株に比べ高く、味覚障害や嗅覚障害は低かった。

睡眠障害と併せて、倦怠感や頭痛などを訴える人も

傾向の変化が分かってきたわけだが、では、睡眠障害はどのくらい続く場合が多いのか? また、流行の兆しを見せるオミクロン株の「XBB.1.5」の場合、後遺症の傾向は変化するのか?

岡山大学病院の大塚文男副病院長に詳しく話を聞いてみた。


――睡眠障害になりやすい年代は?

年齢的には、コロナ後遺症全体としては、30代から50代の比較的若い方が全体の60%を占めています。年代については、睡眠障害の有り無しで、特別な差はないようです。


――睡眠障害はいつまで続く場合が多い?

コロナ後遺症として出現する睡眠障害では、倦怠感や頭痛などその他の症状も伴うため、これらの症状によって睡眠障害の程度も違ってきます。比較的軽度な不眠であれば生活習慣を正しく導くことで改善につながることもありますし、必要に応じて、睡眠導入剤などの投薬が効果的なケースもあります。睡眠障害は適切な治療で改善することが多いですが、オミクロン株から増えてきた後遺症の症状で、個人差も大きいので、もう少し症状の経過を見る必要があります。


――他に、オミクロン株のコロナ後遺症の睡眠障害についてわかっていることは?

オミクロン株の後遺症では、睡眠障害と併せて、倦怠感や頭痛、ブレインフォグのような頭がスッキリしないという症状を訴える人も多く、これらの体調不良が影響して睡眠障害を悪化させている可能性もあると考えられます。また睡眠障害のある場合は、ブレインフォグ症状も多いようです。そのため、睡眠障害単独での治療ではなく、後遺症全般として、他の症状も含めて総合的に改善を図る必要があると言えます。


――後遺症が回復するまでの期間のデータはある?

すべての株での集計でみますと、半数以上の方が治療終了となっています。現在まで、従来株での後遺症の77%、デルタ株の74%が治癒していますが、オミクロン株の後遺症では64%の方がまだ通院中です。平均すると、感染してから回復するまで約180日を要しています。

「XBB1.5」で後遺症の傾向が変化する可能性も

――後遺症の原因はどんなことが考えられる?

後遺症の発症メカニズムの詳細は、まだ解明されていませんが、これまでに分かっていることとしては、感染によって体と心の両面が疲労している状態があります。炎症を起こす「サイトカイン」という物質がウイルス感染により増えた状況になると、臓器や組織が傷んでしまいます。

そしてウイルスを退治しようとして起こる免疫反応が、健康な細胞も攻撃してしまういわゆる「過剰な免疫応答」が起きている可能性があります。そのほか、微小な血栓が残っているのではないか、あるいはウイルス自体の破片が残っていて、それに対する免疫反応が起きて組織や細胞にダメージを与えているのではないか、という可能性もあり、現在も研究が進んでいるところです。


――なぜウイルスの株ごとに後遺症の傾向が違う?

ウイルス株ごとに後遺症の傾向が異なる理由については、まだ分かりません。しかし、新型コロナに感染した急性期の症状も、株ごとに違っているように、変異株によって、それぞれの組織や細胞への影響が異なっている可能性があります。株によって後遺症の症状が異なることは、コロナ後遺症がウイルス感染に関連した病態であることを裏付けているのかもしれません。


――オミクロン株の「XBB1.5が流行の兆しを見せているが、同じ株でも後遺症の傾向が変化する可能性はある?

その可能性はあります。実際、従来株やデルタ株では、味覚・嗅覚障害や脱毛といった後遺症状が目立ったのに対し、オミクロン株が主流となってからはそういった症状は減りました。

「XBB.1.5」は、複数のタイプの新型コロナウイルスが組合わさった変異ウイルスですが、その後遺症については、まだ不明です。BA.2に由来しているため、オミクロン株としての後遺症の特徴がある可能性を考えておりますが、海外のデータを踏まえて、注視する必要があります。


――我々にできる対策は?

コロナ後遺症への対策として、水分や栄養素をバランス良くとり、睡眠・覚醒などの日内リズムを整え、規則正しい生活を心がけ、体力をできるだけ保っておくことが重要です。現状では後遺症に特効薬はありません。長期にわたる後遺症にならないためには、何よりも感染しないことです。ワクチン接種をはじめとする基本的な感染予防対策とその継続が大切と考えています。

※イメージ
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もちろん感染しないことが一番だが、もし感染した場合でも長期にわたる後遺症は避けたい。
我々にできることは、基本的な感染予防対策に加え、水分や栄養素をバランス良くとり、睡眠・覚醒などの日内リズムを整え、規則正しい生活を心がけることのようだ。こうした対策をして、自分の身を守ってほしい。

記事 4809 プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。