いまだに収束する気配を見せない新型コロナウイルス。9月1日も東京都では新たに1万4451人の感染が確認されている。

そんな中で「新型コロナの後遺症」について、嗅覚や味覚の障害を訴える割合が減り、頭痛やけん怠感が増えていることが、岡山大学病院の調査で分かった。

デルタ株から現在のオミクロン株に置き換わったことで後遺症も変化しているようだ。

(提供:岡⼭⼤学病院)
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岡山大学病院は新型コロナの後遺症を専門に扱う「コロナ・アフターケア外来」を昨年2月に開設し、診断・治療にあたってきた。

最も多かった後遺症は「けん怠感」

7月29日までに受診した369人を調べたところ、現在流行しているオミクロン株、第5波で猛威を振るったデルタ株、それ以前に流行った従来株(アルファ株)のいずれでも、最も多かった後遺症は「けん怠感」だった。

デルタ株は、けん怠感(65人)、嗅覚障害(59人)、味覚障害(52人)、脱毛(37人)が多かったが、オミクロン株に置き換わると、けん怠感が80人に増え、頭痛(36人)や呼吸困難(27人)、睡眠障害(30人)、咳嗽(=せき 23人)といった症状が目立つようになった。

また受診患者を年齢別で見ると40代が86人で最も多く、そこから若年・高齢になるにつれ減少。男女比では女性55%、男性45%で、若干女性の方が多かった。

(提供:岡⼭⼤学病院)
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また回復した人は113人(31%)おり、発症から回復までの期間は5~6カ月。通院中の239人(65%)の患者は、発症から現在まで平均272日が経過しており、半年が経過しても症状が残っている傾向がみられるとしている。

(提供:岡⼭⼤学病院)
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コロナ症状が重い人ほど後遺症も⻑期化傾向

なぜコロナウイルスの株によって後遺症が変わるのか? 2学期も始まったが、症状がうまく説明できない子どもの後遺症に気づくにはどうしたらいいのか?

岡⼭⼤学病院の⼤塚⽂男副病院⻑に聞いてみた。


――後遺症を訴える人は増えている?

当院の後遺症外来では、コロナ感染者の数がピークを越えたあと、1~2カ⽉遅れて受診予約が増えて⼀杯になる傾向があります。岡⼭県での流⾏の波ごとの感染者数のうち、約1.5%が当院での後遺症外来の受診へとつながるようです。コロナ感染者数の増加とある程度並⾏して、後遺症患者数も増加するものと考えられます。


――どうしてコロナの株によって後遺症が違う?

オミクロン株による後遺症は、デルタ株と比較してけん怠感を訴える方が増加しており、次いで頭痛・睡眠障害が増えています。⼀方で、嗅覚・味覚障害や脱⽑といったデルタ株で多くみられた症状はむしろ減少しています。

この変化の理由に、まだ明確な回答はありません。急性期の症状や炎症の程度がウイルス株により異なること、喉・⿐から肺に⾄る気道の組織や粘膜へのウイルス親和性、反応性に産⽣される抗体などの影響によると考えています。


――後遺症がある人と、ない人は、どこが違う?

コロナ罹患ののち、約1/3の方に何らかの後遺症が⾒られるとされていますが、後遺症をきたす方とそうでない方の背景に特異的な違いはまだ分かっていません。ただし、感染の急性期の症状が重症であるほど、後遺症の症状も多く、症状が⻑期化する傾向があります。コロナ感染症が重症化しやすい持病や体質がある場合に、特に注意が必要といえます。


――ワクチンや治療薬を使っても、後遺症の罹りやすさは同じ?

ワクチン接種と後遺症については、海外から報告があり、2回のワクチン接種を⾏なっていた方が、後遺症の発⽣リスクが半減することや、ワクチン接種後に感染した場合の検討から、後遺症の発⽣はワクチンにより減るが、しかし限定的であることが報告されています。

ワクチンのウイルス株への有効性にも関連しますので、株ごとに再検討する必要があります。治療薬と後遺症についても明らかな関連性は知られていませんが、急性期に酸素やステロイドなどの治療を受けた重症例では、後遺症が残存しやすい傾向があると⾔えます。

症状が軽症でも後遺症があるケースも

――コロナが軽症でも後遺症はでる?

コロナ感染症の急性期の症状が軽症であっても、後遺症が生じるケースがあります。当院への後遺症での受診患者さんのうち、75%の方が急性期は軽症で経過しており、⾃宅療養やホテル療養をされていた方が受診されています。


――軽い後遺症でも注意が必要?

けん怠感や頭痛などの後遺症の症状が軽い例もありますが、⽇常生活や仕事・学校において十分な活動ができなくなったり、集中⼒が低下する可能性がありますので、急性期の症状が治ったあとも、後遺症の症状が持続する場合には注意が必要です。また、後遺症は⾃覚症状が主で個人差も⼤きいことから、後遺症が軽症かどうかの判断も難しいといえます。


――「けん怠感」はどうやって治療する?

後遺症に限らず、けん怠感という症状は、さまざまな原因で起こります。コロナに罹患したこと以外に、もともとの持病の悪化や、コロナの感染をきっかけに出現してきた⼼や体の病気や不調がないかを十分鑑別したうえで、血液検査で貧血や必要な栄養素・元素の不⾜があれば補充する投薬を⾏い、ホルモンバランスの異常が⾒られれば必要な治療を⾏い、併せて補剤といった漢方薬を⽤いて症状を緩和する対症治療を⾏います。


――親は、こどもの後遺症にどうやって気づけばいい?

これまでの報告では、コロナ後遺症の小児例は成人例と比べると少なく、比較的軽いことが多いとされています。我々の外来から、10代の後遺症の症状を成人患者さんと比較するとけん怠感や頭痛の症状が多く、オミクロン株に限ってみると、嗅覚・味覚異常の症状は殆ど⾒られず、けん怠感や頭痛、睡眠障害が⽬⽴つという特徴が⾒られました。このような小児の症状は⾒過ごされやすいため、朝起きれない、だるい、頭がいたい、眠れない…といった小児・若年者の症状にも周囲の注意が必要といえます。


――政府が打ち出した「感染者全数把握の見直し」をどう受け止めている?

コロナ後遺症は感染者の数のピークのあと、少し遅れて受診者数が増加します。当院では、感染から後遺症外来まで90⽇以上を経て受診される例が多いのですが、感染者数の全数把握は、後遺症の患者数の動きや変化を予測する上で有⽤と感じています。ただし現状では、後遺症の診療は各総合病院やクリニックなど個別に⾏われている状況ですので、その⾃治体エリアでの患者数や重症者数の把握でも、ある程度対応可能かと思われます。

後遺症患者の65%は半年経っても症状が残っていると聞いて、不安になった人もいるかもしれない。今年の夏は3年ぶりに行動制限がなかったが、確実な治療法などが見つかるまでまだまだ感染対策に気をつけてほしい。