2022年12月、長崎市の中心部に伝統のフランス菓子を販売する洋菓子店がオープンした。店のお菓子づくりを任されたのは29歳の若きシェフパティシエだ。異色の経歴を持つ若きパティシエが働き方改革にも取り組み、菓子業界に新風を巻き起こしている。

五感を使って楽しむフランス菓子

長崎市の中心部に、2022年12月にオープンした「BLUEPRINT(ブループリント)」。

この記事の画像(14枚)

大粒のイチゴをふんだんに使ったタルトに、上質な素材にこだわったショートケーキなど、伝統のフランス菓子を忠実に再現している。

童話に登場するレンガ造りの家をイメージしたおしゃれな店構えは、オーナー企業である建築業の会社がデザインした。

シェフパティシエとしてお菓子作りを任されているのは、佐世保市出身の神﨑琢也さん(29)。美しいフォルムやなめらかな口溶け、ザクザクとした食感など五感を使って楽しむことができる商品づくりを目指している。

BLUEPRINT 神﨑琢也さん:
今までフランス菓子というものをある程度学んできたと思っているので、そこを少しでも自分の中で表現できるようにと

父親の夢をかなえ 母親の夢の実現に

神﨑さんがお菓子作りを本格的に学び始めたのは高校を卒業した後だった。

それまでは野球一筋。長崎の強豪校・波佐見高校に通い、2011年には正捕手として、春のセンバツにも出場した「甲子園球児」だ。

BLUEPRINT 神﨑琢也さん:
父親の夢が「甲子園に行ってほしい」。じゃあ一個かなえられたなと思って

父親の夢をかなえた神﨑さん。大学の野球部などからの誘いもあったが、卒業後に選んだのは母親の夢だったパティシエの道。菓子の専門学校に進み、19歳で海外へ。3年半、焼き菓子づくりの基礎を学んだ。

2年前、佐世保市のハウステンボスにある洋菓子店に転職。独立を目指していた神﨑さんの腕や人脈、店づくりへの思いが評価され、新店のシェフパティシエに抜てきされた。神﨑さんは店舗での販売だけでなく、大手ホテルや企業がインターネットで販売する、焼き菓子などの卸も手がけている。

この日は福岡の取引先がやってきた。神﨑さんの印象は?

ネオバンジー(福岡の取引業者) 友岡正司さん:
顧客のことをしっかり考えてくれて、お菓子には、僕の経験上ですけど誰よりも熱い情熱を持って提案されている。

神﨑さんは、材料の原価や製造コストがすべて頭に入っているため、商品の金額を瞬時に提示する。メールよりも電話や対面でやりとりするなど、スムーズな商談を心がけている。

BLUEPRINT 神﨑琢也さん:
自分が逆の立場(交渉側)だったらそれがいいなと思う。ちょっと折り返し電話しますと、1週間、2週間後に電話するぐらいなら忘れられる

「フランス菓子を長崎で一番にしたい」

スタッフへの指示も的確で、スキルアップや作業の効率化にも力を入れている神﨑さん。背景には「労働時間が長く、低賃金」と言われる菓子業界の働き方を変えたいという思いもある。

BLUEPRINT 神﨑琢也さん:
僕自身も低賃金で今まで仕事を覚えさせてもらうというところでいくと、当たり前だったのかもしれないですけど、今の若い子たちにそこを僕は押し付けたくない

作り手の顔が見えるオープンキッチン
作り手の顔が見えるオープンキッチン

作り手の顔が見えるようにオープンキッチンにし、スタッフのやりがいにもつなげたいと考えている。働き方改革にも取り組み、この1年を飛躍の年にしたいと意気込んでいる。

BLUEPRINT 神﨑琢也さん:
BLUEPRINTさんに任せればよかねって言ってもらえるお店にしたい。フランス菓子を長崎で一番にしたい。

働く人も味わう人もわくわくする店にしたい。菓子作りをこよなく愛する若きパティシエが業界に新たな風を起こしている。

(テレビ長崎)

テレビ長崎
テレビ長崎

長崎の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。