亡き妻の絵手紙。長野市の男性が自宅にギャラリーをつくり、妻が残した6000点にのぼる絵手紙を少しずつ飾り始めている。作品に囲まれ、今でも妻がそばにいるように感じている。
亡き妻の絵手紙を飾る
この記事の画像(13枚)(ネコの絵手紙)
何をしようか 今日もやっぱり忙しい
(山桜の絵手紙)
春のときめき 隠しきれない
(カボチャの絵手紙)
元気が なにより宝です
やわらかなタッチの水彩画に言葉を添えて…。
部屋には心温まる絵手紙が飾られている。こちらは長野市小柴見の小林勝さん(77)の自宅。2022年11月、応接間をギャラリーにした。
絵手紙を描いたのは妻・節子さん。大量の作品を残し、2021年、亡くなった。(享年74)
小林勝さん:
多くの人に見てもらおうかなというのがひとつと、亡くなった節子と一緒にいられるような感じがするので私も寂しくない、ひとりでいてもね
祖父が画家ということもあって、子どもの頃から絵に親しんでいた節子さん。結婚した52年前には、絵手紙を始めていたと言う。小林さんが香川県に単身赴任すると毎日、節子さんから絵手紙が届いた。
小林勝さん:
熱心な子だなと、甘え上手だよね。これだけ慕われると変なことできないよ、毎日、来たから…。自慢じゃないけど返事書いたのは2回だけ
本格的に絵手紙に取り組むようになったのは3人の子育てを終えた頃。その後、作品が評判となり、絵手紙作家として教室を開き多くの「門下生」を持つまでになった。
作品が年賀状のイラストに採用されたこともある。多い時は1日40通以上。節子さんは毎日欠かさず絵手紙を描き続けていた。
しかし、2021年、卵巣がんが見つかり、半年間の闘病生活の末、亡くなった。
小林勝さん:
なんで私をみとらないんだという気持ちもあるんだけど…これはしょうがないよね
6000枚の絵手紙が語りかけてくれる
亡くなってから1年ほどがたった頃、小林さんが遺品を整理していたところ、箱に入った大量の絵手紙が見つかった。
かつての門下生たちが中心となり、2022年6月、「追悼展」が開かれた。多くの人が足を運び、節子さんの絵手紙の魅力を改めて認識した小林さん。残りの作品も見てほしいと2022年、自宅にギャラリーを設けた。
オープン日は11月21日。2人の結婚記念日だ。
小林勝さん:
(節子さんは)明るい子だね、料理とかはあんまり上手じゃない(笑)。くよくよしない性格なので、この中に迷ったような言葉がないじゃん
小林さんのお気に入りはこちらのネギが描かれた作品。
(ネギの作品)
ふとくて短い人生も 長くて細い人生も 自分では選べない ただひたすら 自分の道を歩こう
小林勝さん:
文章を見ていると節子が語りかけているようなね。あまり寂しい気がしない、不思議なんですよ
作品は季節ごとに替え、春には桜の絵手紙などを飾る予定だ。
今も語りかけてくれる亡き妻の絵手紙。節子さんを感じながら小林さんは日々を送っている。
小林勝さん:
亡くなった節子の絵手紙と一緒にいるとね、私も心が落ち着くよ。(節子さんは)喜んでいるよきっと、絶対に。私の生前にこういうふうにやってくれれば良かったのにと思っていると思うよ。化けて出てこないし、出てきてもらってもいいんだけどさ、出てこないところを見るとそれなりに満足してるんじゃないかと
(長野放送)