歯止めのない人口減少は愛媛県も例外ではない。40年後の愛媛の人口は41.3%減少するとも推計されている。この人口減少を食い止めるカギとされるのが「仕事と育児の両立」だ。「子育て」の視点から愛媛の人口減少について考える。

子どもと一緒に出勤できる仕組み

午前9時半、松山市に住む寺坂千尋さんと娘の実乃里ちゃん(2)が自転車でやってきた。子どもの送り迎えのようにも見えるが…実は毎日の「通勤」風景だ。

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寺坂さんが働くのは、松山市中一万町にあるシステム開発や福祉事業を手がける「フェローシステム」。この会社は子どもと一緒に通勤することができる。

寺坂さんが仕事中、実乃里ちゃんは元気に跳びはねたり、オフィスの中を自由に動き回ったりしている。

オフィス内を歩き回るみーちゃん
オフィス内を歩き回るみーちゃん

周りの同僚たちは…。

寺坂さんの同僚:
すごく癒やしをもらっていますし、仕事でウーっとなったときに、いつもみーちゃん(実乃里ちゃん)に力をもらっています

フェローシステム・矢野領子総務部長:
和気あいあいとしている雰囲気っていうのはすごくあるかなと

オフィスの「アイドル的存在」となっている実乃里ちゃん。お母さんはこの環境をどう感じているのだろうか?

寺坂千尋さん:
周りの方が助けてくださるので、すごいありがたいというか、働きやすいと思っています。ずっと主婦をしていて仕事をしたいなと思っていて。でも、なかなか条件が合わない感じで、どうしようかなっていうときにフェローさんが「働いてみない?」ということでお声をかけてもらったんで

フェローシステムは現在、57人の従業員のうち6割が女性。特に、この5年間でその割合が大きくなる中で、子どもと一緒に出勤できる仕組みが生まれたという。

フェローシステム・馬場友加吏取締役:
お子さんを連れてこられるようになったら、みんなでまた働けるようになるんじゃないかとか、産休も取りやすくなるんじゃないかとか、産休後にまた戻ってきてくれるんじゃないかとか。社員と一緒に、みんなで長く働いていくことを考える中で、自然にみんなで取り組んでいったこと

フェローシステム・馬場友加吏取締役:
今後も、もっと本当は託児所が欲しいとか、もっとこういう制度もあったらいいよねとか、思っていること、やりたいことある女性社員さんが、私も含めてたくさんいると思うので、そういうところをみんなで作っていけたら

40年後 働き手不足が深刻化か

懸念される愛媛の人口減少。2022年10月、愛媛県は衝撃の数字を発表した。2020年の国勢調査で133万4,841人だった愛媛の人口が、40年後の2060年には78万3,547人にまで減少すると推計。なんと41.3%も減るという。

20代・アルバイト:
相当ヤバいですね。相当少ないですね

10代・高校生:
信じられない。だいたい半分くらいっていうことですよね。街とかも商店街とかも廃れていったりするのかなと心配になります

では、人口減少が進むと、具体的にどんな問題が出てくるのだろうか。まず、生産年齢人口、愛媛で働く人の数は2020年現在の73.7万人から、約40年後の2060年には37.4万人と半分程度にまで減少し、働き手不足が深刻化する。

40年後、人口は約半分に…
40年後、人口は約半分に…

また、人口が減ることで、1人あたり112万円とされる年間の消費支出の総額は、2060年には今に比べ約6,186億円も減少する見込み。

50代・自営業:
この社会が維持できるかどうかいうのが一番不安。交通にしても運転する人、管理する人がいないとか。お店で働く人がいないとか、そういう現状が広がっていくと非常に厳しいと思うんですけどね

社会インフラの維持や経済システムそのものにも大きな影響が出てくるおそれがある。

20代・会社員:
愛媛の魅力を知らずに出ていっちゃっているという一面もあると思います。愛媛の魅力をもうちょっと僕らの世代にPRすることをやっていったらいい

10代・高校生:
子どもを持つ家庭とかに補助金を出すとか、子どもにやさしい街づくりをしていくことで戻ってくる人も増えると思う

夜3時でも相談可能「オンラインサービス」を展開

人口減少を食い止める大きなカギとされるのが「仕事と育児の両立」。特に、働く女性への支援だ。

2022年11月から愛媛で始まった「産婦人科オンライン・小児科オンライン」の説明会に子育て中のお母さんたちが集まった。

「産婦人科オンライン・小児科オンライン」は、東京の「Kids Public」が全国34の自治体で展開しているオンラインサービスで、LINEのビデオ通話やチャットなどを使って、子どもの病気から子育て中の悩みまで、いつでも専門の医師や助産師に相談できる。

参加した母親:
子どもの夜泣きがひどくて泣きたくなったら、24時間の方の相談に入れたら

Kids Public CEO 小児科医・橋本直也さん:
夜の3時くらいに相談を送ってくださるお母さんもいます

参加した母親:
そうなんですね

「Kids Public」CEO 小児科医・橋本直也さん:
夜間相談だったらアレルギー専門の先生に聞こうとか、発達専門に聞こうとか選べます。婦人科だったら、不妊治療が得意な先生に聞くとかですね。そういうことも選べる

愛媛県のデジタル実装加速化プロジェクトのひとつとして、女性の多様な働き方を応援する会社「エルパティオ」らと共同で実施している。

地域の人たちと実際に触れ合うための「合言葉」

この「産婦人科オンライン・小児科オンライン」、実は、利用するまでに最初にひと手間かかる。実際に子育て支援を行っている地域コミュニティーなどを訪れ、そこで教えてもらう「合言葉」の入力が必要となっている。

母親らが地域の人たちと実際に触れ合うきっかけを作り、子育て中の孤立を防ぐ狙いがある。

エルパティオ・川崎暁子さん:
「1人」で「オンライン」だけで相談するとなると、オンライン上だけのことになる。実際にリアルに活動している人たちとつながって、愛媛のみんなで子育てするというところを広げていきたいなと思う

1歳児の母親:
すごくいい。小児科は新型コロナやインフルがはやっていたら行きにくい。おうちで気軽に聞けるっていうのは、すごいいいサービスかなって思いました

7カ月児の母親:
子育てする世代自体も減る。でも、その子育てする世代は働いていて時間的に余裕がなかったり、気持ちに余裕がなかったりする。医療面だけでもサポートしてもらえる場所があるのは、親としてすごく安心できるなと思います

「デジタル」と「リアル」の2つの安心で子育て世代を支え、人口減少を解決する糸口になるか、期待が高まる。

(テレビ愛媛)

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