福岡県田川市で当時1歳の三男をエアガンで何度も撃ったほか、自宅に放置して死亡させた罪に問われている父親の裁判が始まった。母親の確定判決では、妻に対するDV行為も認定されている父親。三男の骨折の原因にも関わっているのだろうか。

極度に痩せていた当時1歳の三男

2023年1月16日、福岡地裁101号法廷。

この記事の画像(15枚)

逮捕から3年余り。再び公の場に姿を見せた男は全身黒ずくめの服装で証言台に立った。

裁判長:
おはようございます。体調に変わりなどないですか?

常慶雅則被告:
はい大丈夫です

裁判長:
職業は?

常慶雅則被告:
いまは無職になるんでしょうか

保護責任者遺棄致死などの罪に問われている田川市の常慶雅則被告(27)。この日、裁判員裁判の初公判が開かれた。

三男・唯雅ちゃん(当時1)
三男・唯雅ちゃん(当時1)

2019年11月8日の午前8時前、常慶被告の身柄が検察庁に送検された。起訴状などによると、常慶被告は2018年、田川市の自宅で当時1歳の三男、唯雅ちゃんに向けてエアガンを至近距離から何度も撃ってけがをさせたほか、妻の藍受刑者と共謀し、重度の低栄養状態だった唯雅ちゃんに適切な治療を受けさせず、肺炎で死亡させたとされている。

唯雅ちゃんは、体脂肪がほとんどなく、極度に痩せていた。さらに全身にはエアガンで撃たれた合計71カ所の弾の痕があり、両手両足やあばら骨は23本、合わせて31カ所も折れていた。

藍受刑者をよく知る女性:
(唯雅ちゃんの)お葬式に見た時の体が、あばらがすごく見えていた。体も全部、傷だらけと聞いた

唯雅ちゃんが亡くなってから約1年後に逮捕された常慶被告。警察の調べに「エアガンは長男が撃ったのではないか」「骨折や低栄養はわからなかった」などと容疑を否認した。

「違います」父親は起訴内容を否認

注目が集まった初公判の場で、裁判長から起訴内容について尋ねられた常慶被告は、比較的早口で起訴内容を否認。自身の「潔白」を訴えた。

裁判長:
公訴事実について何か意見はありますか?

常慶雅則被告:
違います

弁護側も冒頭陳述で「被告は暴行を加えておらず、被害者の要保護状態を認識していなかった」「犯罪の証明がない時は、判決で無罪の言い渡しをしなければならない」などと述べ、常慶被告の無罪を主張した。

しかし、事件の裁判をめぐっては、保護責任者遺棄致死の罪に問われた妻の藍受刑者に対する懲役8年の判決がすでに確定している。

一審の裁判員裁判で、藍受刑者は夫の常慶被告と同様に「子どもの異常には全く気付かなかった」などと無罪を訴えたが、判決で福岡地裁は「藍受刑者の証言は信用できない」「藍受刑者、および夫は共謀も認められる」「悪質性の程度が相当高い」として懲役8年を言い渡した。

二審で福岡高裁は控訴を棄却。最高裁も藍受刑者側の上告を棄却し、2022年11月に刑が確定した。藍受刑者の確定判決では、常慶被告による唯雅ちゃんへのエアガン虐待も認定された。

消防隊員の供述「妙に落ち着いていた」

16日の初公判で、常慶被告側は無罪を主張したが、検察側は「腕や足など多数の骨折で患部が腫れ、衰弱して動くのがままならない被害者を標的にしてBB弾を撃ち込んだ」と述べた。

また、証拠調べで唯雅ちゃんが自宅で亡くなった当日、藍受刑者の119番で駆け付けた消防隊員の供述調書を読み上げた。

検察側(消防隊員の供述調書):
雅則と藍は床に座ったまま消防隊の心臓マッサージの様子を見ていた。普通の親なら取り乱す場面だが、妙に落ち着いていて違和感を覚えた

さらに検察側は、唯雅ちゃんが救急搬送された病院の医師の供述調書も読み上げ、唯雅ちゃんが虐待を受けていた可能性を示唆した。

検察側(医師の供述調書):
1歳4カ月の乳児は、少しの落下で簡単に骨折するものではない。1歳4カ月で骨折がある時点で虐待が疑われる。背中の骨折は背中を踏みつぶされたもの。大きな他人からの衝撃、複数回あったといえる。かなり痛がり泣いたはず

藍受刑者の知人:
外ではめっちゃ良い子。ニコニコやし、人当たりはいいと思う。けど、キレたら危ないかな。そのときに見たのが、藍をたたく男だった。顔とか踏まれるし、髪の毛引っ張るし、止めるしかないみたいな

妻の藍受刑者の確定判決では、妻に対するDV行為も認定されている常慶被告。唯雅ちゃんの27本の骨、計31カ所が骨折していた原因にも関わっているのか。常慶被告の公判は集中審理で開かれ、今後、妻の藍受刑者が証人として出廷する予定だ。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
テレビ西日本

山口・福岡の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。