去年12月23日、米Twitterのイーロン・マスクCEOは、ツイートの表示回数を表す「View Count」を実装したと投稿した。Twitterはこれまでにも、いいねの数やリツイート数を表示していたが、「View Count」は単純に表示した回数で、同社は「2回以上閲覧すると、複数回カウントされることがある」としている。
例えば、マスク氏のこのツイートには約40万の「いいね」と、約3万件の「リツイート」がされたと表示されるが「View Count」は約5637万となっている。(1月11日時点)
Twitter is rolling out View Count, so you can see how many times a tweet has been seen! This is normal for video.
— Elon Musk (@elonmusk) December 22, 2022
Shows how much more alive Twitter is than it may seem, as over 90% of Twitter users read, but don’t tweet, reply or like, as those are public actions.
この新たな変更に対し、日本のユーザーからは賛否両論が噴出した。
「(数字が)邪魔すぎる」「そんなに競争させたいの?」「承認欲求モンスターが生まれてしまう」と言った否定派がいる一方、「影響力の可視化はTwitter側にもユーザにも利点ありそう」「ビジネスでTwitter使う分には悪くないかもね」「詐欺に遭う人が少しは減るか」などメリットを見出すユーザーもいた。

Twitterは、11日、ツイートの取り消しや長尺動画の投稿ができる有料サービス「Twitter Blue」を日本でも開始した。マスク氏はCEO就任以来、自由な言論の場としてのTwitterやマネタイズの面などから様々な改革を行い、12月21日には、後任が見つかればすぐに辞任する考えを明らかにするなど混乱も生じさせている。
実数が見えるのは、ちょっと精神的に良くないところはある
では「View Count」によってどのような影響が出ているのか?そもそもTwitterは、どんな狙いがあって「View Count」を導入したのか?
ITジャーナリストの三上洋さんに聞いてみた
――Twitterの「View Count」をどう思う?
まず「View Count」は、正確には「インプレッション」という数字で、そのツイートに関する表示回数を始め、リプライの数や、いいねの数など、あらゆるものを足しています。「何人が見たか」という数字だと思いがちですが、そういうものではありません。「インプレッション」とは、一般的には例えば1人が10回リロードしたら10回プラスになります。だから1000万と表示されていても、1000万人が見たわけではないんです。国内ユーザーのツイートでもView Countが1000万とか2000万になっているものもありますが、日本のtwitter人口は多くても数百万人ぐらいでしょうから「見た」人数ではないんですね。
――「View Count」の導入でどんな影響がでている?
まずフォロワーを買ってる人たちが丸見えになっています。何十万もフォロワーがいるのに閲覧数が100とかだと明らかにインプレッションが低すぎますので、フォロワーを販売する業者にお金を払ったりして水増ししてるということです。こういう不正が分かるのはプラスだと思います。
企業や広告代理店にとっては、「こんなにプロモーションをしてるのに、これしかインプレッションがないんだ」と思われると、ちょっとやりづらいかもしれないですね。
一般ユーザーでも、閲覧数がすごく少なくてショックを受けることがあるかもしれません。例えば私は12年か13年ぐらいTwitterをやってるので、フォロワーが5万人弱いるんですけども、そのほとんどが今は使われていないアカウントなんです。だからリツイートもない「素」のツイートのインプレッションは2000~4000ぐらいなんですね。そういう少なさにショックを受けるようなこともあると思うので、やっぱり実数が見えちゃうというのは、ちょっと精神的に良くないところはあると思います。
あとフェイクニュースなどは数字が大きく見えるため信じる人が増えるかもしれません。フェイクニュースは、だいたい既存のメディアで取り上げてないキーワードで出回りますので、新しい情報だと思って一応見る人がいるんです。だからどうしてもインプレッションが上がっちゃうんですね。すると、これだけ閲覧数があるということは本当の情報なのかな、と信じちゃう人が出てきて、さらに広まってしまう可能性があります。

――ユーザーが承認欲求に取り憑かれてしまう危険性はある?
やっぱり数字至上主義は良くないと思います。
今までも例えばinstagramの「いいねの数」や、facebookの「シェアの数」などはSNSのコミュニケーションをいびつにしてきた、ということで数年前から問題視されていたんですね。
数字を稼ぐために、 レンタルしてでもブランド品を掲載しようとか、 かっこいい写真を撮るためにわざわざ旅行しようとか、極端なことが起きてしまうので、これは良くないというわけです。
またTwitterでは、残念なことに感情的な書き込みや一方的な書き込みの方がリツイートが増えるんです。例えば、何かを批判する時に両論併記をするツイートと、悪いことばかり書くツイートでは、後者のほうが注目されて閲覧数が多くなります。
このようなことから、「数字」至上主義になってしまと、SNSのコミュニケーションがすごくいびつになってしまうんです。
――TwitterはなぜView Countを導入した
twitter側の目的は、これを課金に繋げたいんだと思います。今後、課金することでView Countが増えるというオプションを作るのかもしれません。
――マスク氏による様々なTwitter改革を三上さんは評価している?
してないです。というのは、まず既存のユーザーから嫌われる方向の改革が多いんです。それらの改革がまだ収益に繋がってないので、イーロン・マスクはいろんなことをやっているわけですけども、迷走しているなと言う感じがします。

ユーザーにとって便利なツールに進化するのか、それとも迷走していくのか今後も注目して行きたい。