上院で共和党が勝利

 
 
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6日に投開票が行われたアメリカの中間選挙で、連邦議会上院の過半数をトランプ大統領の与党共和党が制した。

上院は改選議席数が共和党8に対し民主党は27もあったため、比較的早いうちから共和党が有利とされていた。加えて、選挙戦終盤ではトランプ大統領が上院の過半数確保を最優先した遊説日程を組んでいたので、大統領にとってみれば一安心だろう。

とはいえ、上院では5分の3の賛成を得られなければ、予算案も法案も本会議での採決に進めない。党派色の強いトランプ共和党が民主党議員の取り込みをそうそうできるとは考えにくく、大統領の残り任期2年においても、議会運営ではかなり苦労するに違いない。

上院が持つ人事承認権限は再選戦略に不可欠

年内に辞任するヘイリー国連大使
年内に辞任するヘイリー国連大使

にもかかわらずトランプ大統領が上院の過半数確保を重視した理由は、単純過半数で最高裁判事をはじめ連邦裁判所の判事、政府の閣僚や大使などの人事を承認できるからだ。

今後2年の間に最高裁で現在最年長の85歳の判事と2番目で80歳の判事が退場する可能性が考えられるが、2人はいずれもリベラル派だ。その後任にトランプ大統領が保守派の判事を指名し、共和党が支配する上院が承認すれば、最高裁の保守化は一層確固たるものとなる。トランプ大統領が共和党支持層から高く評価されることは間違いなく、2020年大統領選で再選を目指す上で大いにプラスだ。

また、ヘイリー国連大使が年内に退任するため、後任の国連大使を早急に上院で承認してもらう必要がある。国連大使はトランプ外交のPR役となっている。民主党が上院の過半数を奪取していたら国連大使人事がいつまでも承認してもらえない事態があり得た。

 
 

もう一つ、上院が単純過半数で実行できることがある。それは自由貿易協定の承認だ。2021年まで有効のTPA=大統領貿易促進権限法の規定により、トランプ大統領が11月末に署名するであろう改訂版NAFTA=USMCAやこれから交渉を始める日本との貿易合意などは単純過半数の賛成で承認される。二国間の交渉でアメリカに有利な貿易合意を得ることは、これまたトランプ支持層へのアピールとなり、再選戦略の重要な柱だ。

つまりトランプ大統領は、自分の再選のためには共和党が支配する上院が不可欠と考え、選挙応援では上院の過半数確保を優先した。そして狙い通りの勝利を収めたと言える。

民主党は2020年に上院を奪取する可能性高まる

投票する人々
投票する人々

一方、負けたとはいえ野党民主党は、改選議席数27の大半を守った。これにより、2020年の選挙で民主党が上院を奪取する可能性が大いに高まったと言える。2020年は33議席が改選されるが、民主党の議席はその3分の1なのに対し、3分の2は共和党の議席だからだ。

議会下院の方だが、民主党が奪取するか、あるいは共和党が確保し続けるか、その結果が出るのは少し先になりそうだ。それを待って、トランプ政権の対日姿勢がどうなるのか。また、各国が中間選挙の結果をどのように受け止めるかなどを別稿で解説しようと思う。

(執筆:フジテレビ 解説委員 風間晋)

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風間晋
風間晋

通訳をし握手の感触も覚えていたチャウシェスクが銃殺された時、東西冷戦が終焉した時、現実は『過去』を軽々と超えるものだと肝に銘じました。
「共通の価値観」が薄れ、米も中露印も「自国第一」に走る今だからこそ、情報を鵜呑みにせず、通説に迎合せず、内外の動きを読み解こうと思います。
フジテレビ報道局解説委員。現在、FNN Live news α、めざまし8にレギュラー出演中。FNNニュースJAPAN編集長、ワシントン支局長、ニューヨーク支局記者など歴任。