乱射したライフル銃は18歳の誕生日直後に購入

アメリカ・テキサス州ユバルディ市の小学校で、児童19人と教師2人のあわせて21人が死亡した銃乱射事件。日本にいて信じられないのは、警察との銃撃戦の末、射殺された容疑者が18歳で、犯行に使用したAR-15半自動ライフル銃を誕生日直後に合法的に購入したことだ。

サルバドール・ラモス容疑者(18)
サルバドール・ラモス容疑者(18)
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ABCなどによると、容疑者の18歳の誕生日は5月16日。22日に地元の連邦政府認定ディーラーから購入。そして24日が犯行日だ。購入する際には犯罪歴の照会などバックグラウンド・チェックが必要で、それには数日かかるので、誕生日とほぼ同時にAR-15の購入手続きをし、22日に銃を手にした筈だ。その2日後に乱射事件を起こしているので、計画的で、強い動機があっての犯行と分かる。今後の捜査の焦点だ。 

ライフル銃は18歳、拳銃は21歳から購入“合法”

一方、アメリカでの銃の購入・所持の制度は一体どうなっているのか?

良く知られている通り、銃を持つ権利は合衆国憲法修正第2条で認められている。そして、アメリカ連邦政府のルールでは、購入者の最低年齢は、ライフル銃は18歳。拳銃は21歳とされている。ちょっとびっくりじゃないですか?それにより、現状、アメリカの50州のうちテキサス州を含む44州では、18歳になったら合法的にライフル銃を購入できる。残りの6州は、2018年にフロリダ州パークランドの高校で起きた銃乱射事件を受けて、18歳から21歳に引き上げられた。その事件では19歳の犯人が17人を殺害した。使われた銃は、今回と同様、AR-15半自動ライフル銃だった。

AR-15は、アメリカ軍が使うM-16自動小銃の民生型で、高性能と信頼性がウリだ。そのためアメリカ社会に広く普及しており、一方で殺傷能力も高いため、銃乱射事件での登場頻度も高いベストセラーだ。そんなライフル銃を18歳になったばかりで(親の同意などもなしに)合法的に買える。それが銃社会アメリカの実態だ。

ところで、ライフル銃は18歳で拳銃は21歳という点に、そうなの?逆じゃない?と思う人も少なくないのではと思う。その違いは“隠匿性”だ。俗にライフルの類いは long gun、拳銃は short gunと言うが、長ものは狩猟、スポーツ(レジャー)、護身用など広く使われるが、隠し持つのは難しい。対して“短”銃は主に護身用だが、比較的隠しやすいので犯罪に使われることも少なくない。そこが規制の差につながっていて、いわゆる仕込み銃の類いは最も厳しく販売が規制されている。

お酒は20歳になっても飲めないのに…

もう一つ、年齢との関係で言えば、アメリカの成人年齢は18歳だが、一部の州は19歳や21歳などと定めている。飲酒については全米一律21歳になってからだ。成人年齢と銃の購入、そして飲酒の年齢はそれぞれに関連し合っていそうだが、「成人になっても酒は飲めないが、AR-15は買える」。それが憲法が認めるアメリカであり、NRA=全米ライフル協会はこの状況を守り抜くために、一切の規制強化に反対する。

日韓歴訪から帰国したばかりのバイデン大統領が、その疲れにもかかわらず感情的な演説をしようと、そんなのは笑止千万なのだ。

【執筆:フジテレビ解説委員 風間晋】

風間晋
風間晋

通訳をし握手の感触も覚えていたチャウシェスクが銃殺された時、東西冷戦が終焉した時、現実は『過去』を軽々と超えるものだと肝に銘じました。
「共通の価値観」が薄れ、米も中露印も「自国第一」に走る今だからこそ、情報を鵜呑みにせず、通説に迎合せず、内外の動きを読み解こうと思います。
フジテレビ報道局解説委員。現在、FNN Live news α、めざまし8にレギュラー出演中。FNNニュースJAPAN編集長、ワシントン支局長、ニューヨーク支局記者など歴任。