12月22日から始まった全日本フィギュアスケート選手権。

今年は大阪府門真市の東和薬品RACTABドームで開催される。

23日に行われる全日本選手権のペア・ショートプログラム。

今年は2組が出場する予定だったが、三浦璃来・木原龍一組が欠場。そのため、“二刀流”で臨む村上遥奈・森口澄士組、1組の出場となった。

全日本への強い思いを持っていた三浦・木原組だけに、欠場を決めたことがどれだけつらい決断だったか想像に難くない。

“りくりゅう”苦渋の決断で「欠場」

22日、三浦・木原組はトロント発そして経由地バンクーバー発のフライト大幅遅延とロストバゲージのため、全日本の欠場を発表。

早朝に日本へと帰国し、会場へ到着した2人は会見を行い、今の心境を語った。

三浦は「仕上げていたので残念。2年出ていなくて(全日本に)かける思いがあった」、木原は「全日本は目標であり大切な試合でした。出られないのが悲しい」と悲痛の表情を浮かべる。

飛行機はバンクーバーで遅れ、22日午前0時頃に成田空港、朝3時に羽田空港に到着し、午前7時30分頃に伊丹空港に着いた。

「悪いことが重なった」と語る木原。欠場の理由はスケート靴や衣装などが届いていておらず、22日中にも届いていないという。

また、フライトの遅延により4日間、氷の上に乗っていない状態のため、安全にリフトをすることができない可能性が「欠場」を決めた大きな要因だと明かした。

2人は「せっかくたくさんの人に注目してもらってからの全日本だったので残念。気持ちの整理がつかない」と肩を落とした。

4年後に向けて今シーズンは「挑戦の年」に

昨シーズンも大活躍を見せた、三浦・木原組。

今年2月の北京五輪団体のメダル獲得に大きく貢献し、個人種目でも過去最高の7位入賞を達成。

さらに3月の世界選手権でも日本人カップルとしては初の銀メダルを獲得し、昨シーズンを飛躍の年で締めくくった。

今年3月の世界選手権では銀メダルを獲得
今年3月の世界選手権では銀メダルを獲得
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次の4年後に向けて2人は今シーズンを「挑戦の年」と位置づけた。オフシーズンには新たなリフトの習得にも励み、フリーでは得意のスロージャンプを後半に2つ組み込んだ。

2022-2023シーズンの目標として、「ショートプログラム75点、フリー145点、合計225点」を掲げる。達成したら、三浦がまだ食べたことのない「コストコのティラミス」がご褒美で食べられるという。

そんな今シーズン、勢いが止まらない2人。出場した大会はすべて優勝している。

初戦のGPスケートカナダで、グランプリシリーズで初めてとなる優勝を果たす。続くNHK杯ではショートで目標としていた75点超えを達成。

安定感のある演技でGPシリーズを2連勝し、GPファイナル進出を決めた。

去年も出場が決まっていたGPファイナルは、コロナ禍で中止に。ようやく出場が叶ったGPファイナルで、今年はショート・フリーともに1位で完全優勝をおさめ、キスアンドクライでは涙を流した。

ショートに込めた思いが2人の道のりと重なる

2人は2019年8月からカナダ・トロントを拠点としている。三浦は当時まだ、高校生だった。

今年7月取材に訪れると、今シーズン一新したショートプログラムとフリーを練習していた。

トロントのリンクで練習に励む
トロントのリンクで練習に励む

結成後、コロナ禍によりほとんどの大会が中止に追い込まれたことで、出場機会を失った。そんな苦しいときを2人で乗り越えてきたのが、トロントのリンクだ。新型コロナウイルスの影響によりリンクが規制された際には、真冬の中、外でアップしていたこともあるという。

今シーズンのショートは「You'll never walk alone」。歌詞の通り、「決して1人じゃここまで来られなかった」という思いが込められている。

木原は自分たちの成長はブルーノコーチのおかげだと感謝した
木原は自分たちの成長はブルーノコーチのおかげだと感謝した

木原は、その思いが自分たちの道のりと重なると話す。

「僕たちもここ(トロント)に来たとき、たくさんの人に支えられて乗り越えてきて。コロナの時期も現地の方々に助けていただいた。去年の五輪、世界選手権と乗り切るのは決して1人じゃできなかった。チームもそうですし、璃来ちゃんもいなかったら僕たちは来ることができなかった。(コーチの)ブルーノ(・マルコット)もいなかったらここまで成長することはできなかった。そんな思いを込めたプログラム」

一方のフリーは「Atlas: Two」。三浦が「大好きな曲で、聞いているだけですごく幸せな気持ちになる」と語るように、歌詞に「love you」の言葉がたくさん出てくるアップテンポでキュートなラブソングだ。

「ピュアなラブソングは私たちやったことなかったのですごく新鮮な気持ち。私たちはペアスケーターなので、こういう曲も滑っていきたいと思った」と三浦。

今年3月の世界選手権のフリー
今年3月の世界選手権のフリー

昨シーズンは成長を実感し、世界で戦える確かな手応えをつかんだ。

三浦は「毎試合、過去の自分を超えることができた、成長できたシーズン」、木原は「試合を重ねるたびに成長していくことが実感できて、世界と戦える自信が生まれた。(昨シーズンは)“過去の自分たちに勝つ”ことを目標にやって駆け抜けてきた。なんか上手くいっちゃったねっていうシーズンでした」と振り返る。

2年間出られなかった全日本への思い

2019年に結成後、コロナ禍で2年間出場できなかった全日本。

そして今年は「欠場」という苦渋の決断をした2人。7月に取材した際には、全日本への強い思い、そして世界選手権への思いも語ってくれた。

「去年の自分たちを超えることは、確実に持っている目標です。2年間出られていなくて悲しい。今年は全日本王者も1つの目標で獲りたい!」(木原)

“世界に通用する日本人ペア”にとって、全日本は特別な場所だった。

「年に1回、日本のみなさんの前で試合できる機会なので。オリンピックイヤーの全日本は本当に特別で、みなさんの前でご挨拶もしたかったんですけど、コロナで叶わず。すごく全日本の時期が悲しかったです。日本に帰りたかなったなという思いはありました」(木原)

世界選手権(2022年3月)の表彰式後、インタビューに応じてくれた三浦・木原組
世界選手権(2022年3月)の表彰式後、インタビューに応じてくれた三浦・木原組

今シーズン2人が目指すのは、2023年3月にさいたまスーパーアリーナで開催される世界選手権だ。

木原は「去年の世界選手権は勝ちに行く覚悟がなかった。試合が終わって2人で話して、今年は去年の悔しさや失敗を忘れずに練習からもう一度見直しました。その借りを返したいと思っています」と意気込む。

さらに「璃来ちゃんとなら絶対に自信を持って出場できるので。もう一度、あそこに戻りたい」とリベンジを誓う。

そんな2人の背中を追うのが、今シーズン結成したばかりの“はるすみ”こと、村上・森口組だ。

“二刀流”カップル誕生!全日本で大技に挑戦

新カップルの村上・森口組は、全日本ジュニア選手権で推薦を勝ち取り、全日本への出場を決めた。

2人はともに22日の女子ショートと23日の男子ショートと、シングルでも出場する“二刀流”カップル。

全日本ジュニア選手権では8位の村上遥奈
全日本ジュニア選手権では8位の村上遥奈

村上はジュニア選手として10月の近畿選手権と西日本選手権で3位と表彰台にのぼり、出場した全日本ジュニア選手権では8位と、個人競技でも実力のある選手。

シニア選手の森口も近畿選手権と西日本選手権で表彰台に立ち、シングルの全日本の切符もつかんだ。

今シーズン、ペアとの二刀流で奮闘する森口澄士
今シーズン、ペアとの二刀流で奮闘する森口澄士

彼らはシングル競技も磨きつつ、今年の夏にはペアの“先輩”たちの元へ。三浦・木原組が拠点とするカナダのリンクに赴き、ともに練習をした。

結成したばかりでもあるため、ペアならではの技は習得途中だけに、精度は安定していない。しかし、シングルでもトップクラスの2人はソロジャンプやスケーティングの質が高く、それが2人にとっての武器でもある。

全日本ジュニア選手権で優勝し、全日本の切符を手にした村上・森口組
全日本ジュニア選手権で優勝し、全日本の切符を手にした村上・森口組

特にフリーの3回転サルコウ+3回転トゥループ+2回転アクセルの3連続ジャンプは、全日本ジュニアでも成功させている。

この連続ジャンプは、ペアの世界トップチームでも組み込まない、2人ならではの大技だ。

結成1年目にしてジュニアGPファイナルにも出場し4位に輝いた。

シングルでフリーに進出すれば、村上は4日間で4演技、森口は1日2演技を2日間でこなすハードな全日本になりそうだ。

全日本フィギュアスケート選手権2022
フジテレビ系列で12月22日(木)から4夜連続生中継(一部地域を除く)
https://www.fujitv.co.jp/sports/skate/japan/

全日本までの道の詳しい概要はフジスケで!https://www.fujitv.co.jp/sports/skate/figure/toJPN.html

フィギュアスケート取材班
フィギュアスケート取材班