12月22日(木)から始まる全日本フィギュアスケート選手権。
今回、アイスダンスには6組が出場。
その中で注目が集まるのは、小松原美里・尊組と村元哉中・高橋大輔組だ。
どのチームも狙うのは「優勝」。全日本選手権で優勝すれば、1枠しかない世界選手権の切符も手にできる。
去年、北京五輪の出場権を争った2組は、今年どんな演技を見せてくれるのか。海外を拠点にプログラムを磨いてきた2組の全日本への思いに迫る。
五輪出場の夢を叶えた小松原美里・尊組
昨シーズンは北京五輪に出場し、長年の夢を叶えた小松原美里・小松原尊組。
“チームココ”の愛称を持つ2人は、2026年のミラノ・コルティナ五輪も視野に入れ、現役続行を決意した。

アイスダンスの名門チーム、アイスダンスアカデミー・オブ・モントリオールに所属し、世界のトップダンサーたちと腕を磨いている。このチームは、北京五輪トップ10のうち6組を輩出し、今年の世界選手権では表彰台を独占した。
このチームには2018年から所属していたが、コロナ禍や国籍取得、ビザの関係で2人は、30カ月もの間、別の場所で練習していた。名門チームに所属しながらもオンラインで練習を見てもらっていたが、去年10月以来9カ月ぶりにコーチ陣と対面した。
オフシーズンの7月、このモントリオールで話を聞くと、昨シーズンに夢を叶えたことに喜びながらも同時につらさも味わったと振り返る。

「2人で一緒にすべてに向き合いながら戦ったシーズン。苦しいこともあったけど、一番成長した。夢が叶った良いシーズンだったと思う」(美里)
「子どもの頃からの一つの夢を叶えられて、とてもうれしかったシーズン。でもやっぱりつらいこともあって、自分の選手人生の中で、一番全部入っている」(尊)
練習場所や出場した大会などで思い通りにいかなかった昨シーズン。しかし今シーズンは腰を据えて、モントリオールが“拠点”と言える中で初めて挑むシーズンを迎えた。
リズムダンスは「シャキーラ メドレー」。
フリーダンスの『映画「フィフス・エレメント」より』は、1997年のブルース・ウィルス主演の映画のワンシーンの楽曲を使用する。序盤はラモンメールのルチアというオペラが続き、中盤以降アップテンポになってダンサンブルな部分も見られる。
今シーズンからリズムダンス、フリーダンス含めて、同じ形のリフトをしてはいけないというルール変更などもあり、モントリオールで細かい調整を重ねてきた。
2人は今シーズンを「“チームココ、シーズン2エピソード1”が始まる感じ」と新しい章の幕開けだと表現する。
新章に突入した2人はライバルの存在に感謝
新章を迎えた今シーズン、2人にはそれぞれにテーマがあるという。
「リミットレス」と掲げる美里は、「心のなかですごく大切にしていて、こうやらなきゃいけないとか決めつけないで、もっといろいろなことに挑戦して、点数もリミットレスに上げていけたら」と語る。
「スパイシー」を大切にしているという尊は、「20年以上滑っているので、踊りたいダンスをしたい。味のあるチームに、今季のリズムダンスもラテンなのでちょうど良い」と話した。

全日本4連覇を経験し、突き進む今シーズン。
9位となったGPシリーズNHK杯では、ライバルである村元哉中・高橋大輔組が6位と差をつけられ、全日本には背水の陣で挑む。
そこでカギとなるのは、どこまでプログラムのレベルを取りきれるかだ。
NHK杯を終え、ブラッシュアップを重ねたというプログラムに自信をのぞかせる。

2人が目指すのは、全日本のその先にある世界選手権の代表の座。初めて出場した2019年、さいたまスーパーアリーナ開催の世界選手権で、フリー進出を逃した悔しさを晴らすことと、そのリベンジも誓う。
そのための最大のライバル、村元・高橋組との激しい代表争いが全日本では予想される。
そんな2人の存在を美里、尊はこう語った。
「本当に昨年はギリギリの戦いで。シングルの選手たちは毎回こうなのかなと思いました。自分を高める面ではすごく力になるし、大ちゃんたちがいなかったら、自分たちを追い込んでいなかった。起爆剤になって、成長できていると思うので、高めあっていきたい」(美里)
「選手として戦うことはすごく大事。2組ともこの2年の間にすごく成長してきました。互いに戦うことは、日本のアイスダンスのためにもすごく良いことだと思います。5連覇を目指すこと、2組で競えることも楽しみにしています」
村元哉中・高橋大輔組は悩んだ末の3シーズン目へ
北京五輪代表を逃し、悔しさを味わった“かなだい”こと、村元・高橋組。
それでもつかんだ1月の四大陸選手権ではアジア初の銀メダルを獲得した。
3月の世界選手権にも出場し、村元は「2年間で新しいチームとして成し遂げたことはすごいことだと思う」と語った。

昨シーズンを終えた後、2022-2023シーズンも競技を続行するか、その答えを2人は保留にしていたが、拠点のフロリダの地でスタートを切った。
村元は当初から“かなだい続行”に意欲を見せていたが、高橋が「この流れのまま続けたらいけない」と保留にしたという。
考え抜いた末、2シーズンアイスダンサーとして成長を実感した高橋は「もう1年やったほうがいいと思った」と決意を新たにし、3年目をスタートさせた。
3シーズン目のテーマに2人は悩みながらも「余裕」というワードを挙げる。

「これまではこなすことに必死だったけど、余裕を持って自分のパフォーマンスに集中している」と村元。高橋も「世界選手権トップの人たちはやっぱり余裕がある感じがする」と、アイスダンスのトップ選手としてのマインドを持ちたいと話した。
今シーズンはプログラムづくりをする中で、高橋がアイデアを出す場面も去年の後半から増えてきたという。そのアイデアに村元やマリーナコーチも絶賛し、チームの強みがさらにプラスされた。
そんな中、4月のスターズ・オン・アイスに出演した際、「これまでになかった手を出したらそこにいる感覚を味わえた」と2人のチームとしての成熟度も感じたという。
「オペラ座の怪人」は高橋の念願叶った楽曲
そして、今年も出場したGPシリーズでは、2戦ともに6位。フリーダンスも後半グループで滑り、3シーズン目も着々と成長を見せている。
今シーズン、2人にとって初めてリズムダンスとフリーダンスを同時に変更した。

リズムダンス「『コンガ』ほか」。2人の華やかさが引き立つこのリズムダンスは、マリーナ・ズエワコーチからも「この速さはあなたたちにしかできない」と称賛される、2人の武器を最大に活かしたプログラムだ。
今シーズンからパターンダンスがなくなり、より自由度が増したため、「かなだいにとってはラッキーかな」と2人は受け止めていた。

フリーダンス「オペラ座の怪人」は、高橋にとって、シングルで2006-2007年シーズン以来、16年ぶり。自身もすごく好きな楽曲ということもあり、二十歳になる年に滑り、36歳を迎えるシーズンになった今、アイスダンサーとして滑ることでいろいろとアイデアが浮かんでくるという。
村元も「私は大ちゃんの世界観に入っていくだけ」と全幅の信頼を置く。
シーズン始まる前から彼らは「全日本優勝」と明確な目標を掲げている。
3度目の出場となる全日本に向けての思いを12月中旬のインタビューで、2人はこう語った。
「1年目も2年目もバタバタした全日本でした。自分たちの経験も浅い中での全日本はプレッシャーもすごく大きかった。3年目の全日本は、落ち着いて自信を持って挑みたい。周りの雑音にとらわれず、自分に集中してミスなく、今できることを全力で出し切りたい」(村元)
「昨シーズンは、五輪にとらわれいる自分もいました。行けるんじゃないかって気持ちにもなって一層緊張して。今回も試合なので緊張感は高くなるけれど、3シーズン目に入ってこれまでの経験を活かして、思いっきり全日本で落ち着いて、アイスダンサーとして初めて挑めるんじゃないかと思っています」(高橋)

そんな高橋は、フリーダンス「オペラ座の怪人」について「僕がシングルのときは、歌入りがダメだったので、いつか“歌入りを滑りたい”と思っていました。それが試合で滑るとは思わなかったですけど(笑)。アイスショーで滑れたらとか、それにはパートナーがいるなとか思っていたら、まさかこういう形でやることになって」と念願叶ったプログラムだと明かした。
彼らにとって思い入れの強い全日本。そこに照準を合わせ、本気モードだ。2人はその舞台で「自分たちのパフォーマンスを全力で出したい」と、それによって結果がついてくると語った。
高橋は「全日本が終わるまでは考えずに過ごしたい」とまずは、目の前の大会に集中したいと話し、村元もうなずく。
2人の目標である「全日本優勝」。
そして2年連続の世界選手権代表の座も狙う。
それぞれチームカラーの異なる2組。今年はどんな戦いを見せてくれるのか。
アイスダンスのリズムダンスは、22日14時45分から始まる。
全日本フィギュアスケート選手権2022
フジテレビ系列で12月22日(木)から4夜連続生中継(一部地域を除く)https://www.fujitv.co.jp/sports/skate/japan/
全日本までの道の詳しい概要はフジスケで!https://www.fujitv.co.jp/sports/skate/figure/toJPN.html