2022年も新型コロナウイルスに翻弄された1年だった。「地獄のような日々だった」医療崩壊を目の当たりにした医療従事者たち。第8波を起こさない為に私たちは何ができるのだろうか。

「すべての人にとって地獄だった」

豊見城市の友愛医療センターで救急外来の患者の対応にあたる山内素直医師だ。
山内医師は新型コロナウイルスが猛威を振るった2022年を次のように振り返る。

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友愛医療センター救急科 部長 山内素直 医師:
地獄を見たなっていう思いがすごくします

友愛医療センター救急科 部長 山内素直 医師:
毎日のようにコロナ患者が運ばれてきて大変な日々で、みんな疲弊していて地獄でしたけど、医療従事者だけじゃなくて、コロナに罹ってしまった患者。コロナではない病気に罹って、でも適切な医療が適切なタイミングで受けられなかった患者。そういう辛い思いをしている人を見る家族。全ての人にとって地獄だったんじゃないかな

きっかけは米軍由来とみられるオミクロン株

医療従事者にとって地獄のような1年はアメリカ軍由来とみられるオミクロン株がきっかけだった。

国内で海外からの入国を原則禁止とするなど検疫が強化される中で、日米地位協定によってアメリカ軍人・軍属は基地に入る際検疫を受ける必要が無かったことがのちにわかり、年明け早々、瞬く間に県民に拡がった。

玉城知事:
2日から3日で新規陽性者数が2倍以上に増加するなど。その感染力の強さはまさしく驚異的と言わざるを得ません。県としてはこれ以上の感染拡大を抑えるべく、政府に対してまん延防止等重点措置区域医指定の要請を致しました

2022年1月2日には48人だった新規感染者数が8日には1757人とわずか6日間で36倍以上となり、感染の第6波が到来。

飲食店に時短営業などを要請するまん延防止等重点措置が2022年2月下旬まで適用されたこともあり、一時は感染者数も減少傾向となった。

しかし、重点措置の解除から約1か月後だった。

玉城知事:
全ての年代における新規陽性者が増加傾向にあることを鑑みるとこれは第七波に突入したものと認識せざるを得ない

2022年3月末には再び、1000人以上の感染者が連日確認され感染の第7波を迎えた沖縄。

感染急拡大の要因として指摘されたのが「変異株への置き換わり」

オミクロン株の変異株BA.2そしてBA.5へと置き換わりが進むごとに感染も急拡大。
2022年8月3日にはこれまでで最も多い6179人の新規感染者数が確認された。

重症化リスクが高くても医療制限がかかる異常事態

この頃豊見城市の友愛医療センターでは──

友愛医療センター職員:
すみません。今発熱受け入れるベッドがなくてコロナ病床も一度他の病院あたってもらっても良いですか。すみません。お願いします。

Q.今の要請はコロナ疑いの人か

友愛医療センター職員:
そうですね。デイサービスで(感染者が)出たみたいで、濃厚接触者かまだわからないみたいなんですけど。

この日、新型コロナに感染し運ばれてきた80代の女性だ。
通常は重症化リスクが高い為、入院が必要となるがこの時ばかりは高齢者でさえも医療に制限がかかる異常事態。

友愛医療センター救急科 部長 山内素直 医師:
実はあの患者さんは僕たちのとこに来る前に、救急隊が他の病院に受け入れ要請をかけたらしいんですね。そしたら、私達と同じことを言われると、やっぱ入院はできないから、絶対帰って頂くことになりますよと。家族がそれを拒否して、いや絶対入院させてほしいと言って私達のところに要請がかかったんですよ。私達も前の病院と全く同じことを言って

友愛医療センター救急科 部長 山内素直 医師:
(家族が)どこも受け入れてくれるとこないんだったら、もう入院じゃなくてもいいから診てほしいということでそれを了解の上で受けたって形なんですね

「心配だから」と来るのは遠慮を

こうした状況に加え県内では、コロナに感染するなどとして休職を余儀なくされた医療従事者は2022年7月のピーク時には1200人を超えるなど人出不足も深刻な状況に陥った。

県医師会 中田安彦 常任理事:
既にいくつかはもう無理だと声をあげています。患者が増えたからと医者が2倍になるなんてそれはないです

県医師会 中田安彦 常任理事:
コロナでちょっと心配だから来るというのはご遠慮下さい。軽症の患者が来て軽症の順番で重症が診れなくなって、この人が危なくなったという例がもう既に出ている。助けられる命を助けられなかったら医者としてこれほど苦しいことはない

「自分たちの存在を自問自答した時期でもあった」

適切なタイミングで適切な医療を提供できない「医療崩壊」が現実となった当時の心境を山内医師は振り返る。

友愛医療センター救急科 部長 山内素直 医師:
コロナであってもコロナでなくてもですね、助けを求めている患者を助けるのが私達の仕事なので、助けを求めてくる人を断らざるを得ない状況は本当にやるせなかったですし、まるで自分たちの存在意義って何だろうとすごく自問自答した時期でもあった

年末に近づくにつれ運ばれてくるコロナ患者も少しずつ増えてきていることに加え、2022年の冬は新型コロナとインフルエンザとの同時流行が懸念されている。

こうした中、2022年11月発表された新型コロナの新たな判断指標では病床使用率が高止まりをしても緊急事態宣言や、まん延防止等重点措置の強い行動制限は定められていない。

医療崩壊を起こさないためにできること

友愛医療センター救急科 部長 山内素直 医師:
規制がないから何をしても良いとかそういうわけではなくて、第7波で沖縄で起こってしまった医療崩壊っていうのを改めて1人1人が考えて反省して、自分に何ができるか。あなたたち1人1人の考えとか行動が試されているんだよと、受け取るべきなんじゃないかなと思います

再び医療崩壊を起こさない為に山内医師は、ワクチン接種などの他軽症の場合は救急病院ではなく身近な診療所にいくなど医療の適切な利用を呼びかけている。

友愛医療センター救急科 部長 山内素直 医師:
同時流行が来れば、第7波どころでは済まない医療崩壊が起こる可能性は十分あります。だけど、ぜひ県民の皆さん一人一人が協力してもらって、感染予防対策と適切な医療の利用を考えてほしいなと思います

2022年も新型コロナに翻弄された1年。
変異を続けるウイルスの終息はまだ見通せていないが、再び医療崩壊を招かないよう一人ひとりの行動が大切だ。

沖縄テレビ
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