宜野湾市の普天間第二小学校にアメリカ軍のヘリコプターから窓が落下して5年。2022年12月13日、学校では事故の記憶を継承する全校集会が開かれた。事故後、第二小学校に校長として赴任し、子どもたちの安全を守るため奔走した桃原修さんは、五年目の節目をどんな思いで迎えたのか。

現実にないような事を言われた

放課後、ミニバスケットボールの練習に励む普天間第二小学校6年生の屋良大翔さん。
あの日の記憶は鮮明だと話す。

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普天間第二小学校6年生 屋良大翔さん:
その時算数のテストをしていて、何か鳥みたいなのが落ちてきたのが見えたんですよ

上空から重さ約8キロのヘリの窓が学校の運動場に落下したとき、大翔さんは運動場に最も近い教室にいた。

普天間第二小学校6年生 屋良大翔さん:
(当時は)1年生だから言葉とかわからなくて状況がつかめなかったんですけど。現実にないようなことを言われたので、ありえなかった。

突然の校内放送に何が起きたか分からず不安だったと話す知念紗奈さん。
この日から学校生活は一変し、運動場で遊ぶことも出来なった。

普天間第二小学校6年生 知念紗奈さん:
休み時間とか外で遊んでいるときにヘリが通ったら必ず避難になるから、遊びが中断される

「とにかく毎日無事に過ごしてほしい」元校長先生の思い

子どもたちが体育の授業を行う運動場にアメリカ軍ヘリの窓枠が落下するという衝撃の事故から5年。当時1年生だった児童も今では6年生となった。

そんな子どもたちの成長を見守っているのが普天間第二小学校の元校長・桃原修さんだ。

普天間第二小学校 元校長 桃原修さん:
(子どもたちは当時)意味がわかんなかったと思っている。とにかく毎日1日1日無事に過ごすというのがいいなと思う

2018年から定年退職するまでの2年間校長を勤めた桃原修さん。
赴任した当初、学校には事故によってもたらされた混乱が色濃く残っていたと振り返る。

普天間第二小学校 元校長 桃原修さん:
(学校の雰囲気が)どんよりとして、会議も。しかし正しい結果があるかっていうと、ないんですよ

普天間第二小学校 元校長 桃原修さん:
とにかく守らんといかん、策を講じないといけないと

運動場は笑い声から避難を呼びかける声に

取材の合間にも米軍機は我が物顔で空を飛ぶ

子どもたちの安全を守ろうと学校上空の飛行禁止を求める学校側に対しアメリカ軍は「最大限避ける」と口約束のみでアメリカ軍機は学校上空を飛び続けた。

楽しい遊び場だった運動場には沖縄防衛局によって避難シェルターが設けられ、ヘリが飛行するたびに子どもたちは避難を強いられる。

避難訓練も常態化し、運動場に響く声は子どもたちの明るい笑い声から避難を呼びかける声に変わっていった。

のびのびと遊ぶことも、ままならない子どもたちの姿に胸が締め付けられる思いだったと桃原さんは振り返る。

普天間第二小学校 元校長 桃原修さん:
避難する子供たちを目の当たりにしたときには、本当涙出てきて。音が聞こえたら空を見上げろ、何が飛んでいるかを確認して、どこへ飛んでいるか、どう飛んでいるか確認して、そしてどの方向に逃げた方がいいっていうところを教えてね。これを各自で、自分たちでやるんだよっていうところをずっと言い続けて

心無い誹謗中傷が学校へ

子どもたちに「避難方法」を教え込まなければいけない状況に、複雑な思いを抱いていた桃原さんたちのもとには心無い言葉も寄せられていたと言う。

普天間第二小学校 元校長 桃原修さん:
こんな危険な場所で、この騒音の中で授業ができるとか、過ごしている、校長以下職員、子供たちみんな病気だよって、よく平気でいられるねと

普天間第二小学校 元校長 桃原修さん:
なんか切り捨てられているような感覚に陥ったり。それでも絶対諦めるなっていうことでね、生きている子供たちがいるからって

子どもたちを守るため事故の記憶を伝え続ける

しかし、事故から5年が経っても子どもたちの安全が脅かされる現状は変わっていないと桃原さんは話す。

当時を知る最後の世代は2023年の春、卒業を迎える。

大川珠澪さん:
私達しかもうわからなくなるから、また同じことが起きたら怖いなと思っている
こういうことがあったよっていうのを伝えて、また次もないように願いたい

普天間第二小学校6年生 屋良大翔さん:
最後の学年だからこそ下の世代にちゃんと伝えて、6年生は5年に、5年生は4年生に伝えてもらえれば嬉しいです

事故の後、学校には謂れなき誹謗中傷が寄せられることもあり、桃原さんはもどかしい思いを抱いてきた。

それでも子どもたちの安全が脅かされる現状を変えるため「事故の記憶」を伝え続けてきた。

普天間第二小学校 元校長 桃原修さん:
何度も言うけど繋げる、広げる、現状をね。事故が起きたのも事実さ、とても大切なことじゃないかな。歴史もそうだけどこれも歴史の一つ、歴史を知らないと未来作れないと僕は思っているので

子どもたちの笑顔を守りたい、その願いが届くまで桃原さんは語り続ける。

沖縄テレビ
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