卓越した技能を持つ「現代の名工」に、愛媛県今治市の表具師、宇野保夫さんが選ばれた。宇野さんは、「亡くなった息子と周囲の人たちの思いで名工に選ばれた」と喜びを語った。

2022年度の「現代の名工」に今治の表具師 その仕事とは

2022年度の「現代の名工」に選ばれた、今治市の表具師・宇野保夫さん(79)。
高度な「裏打ち」の技術を使って、歴史的価値のある表具の修復にあたる。

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宇野保夫さん:
これがお客さんから持ってきたら、ここの台の上に広げて、1週間か10日、じーっと見よって、どういうようにしていったら絶対に失敗せんかいうのが、頭の中でまとまらんかったら(作業に)かかれんです

これまでに、大山祇神社に所蔵されている東郷平八郎が残した書物の修復などを手がけ、次世代に語り継ぐ表具の保存に大きく貢献したことなどが評価された。

宇野保夫さん:
「現代の名工」をいただいたのも、私だけの力じゃない。大勢の人に背中を押され、そして、大勢の人が協力してくれたおかげで名工にたどり着くことができました。本当に感謝しとります

突然の悲しみ乗り越え…「受賞は息子の置き土産」

33歳の時に愛媛県外からUターンし、妻の実家の家業だった表具店を継いだ宇野さん。以来、40年以上にわたり、ふすま張りや屏風づくりなどの内装業を営んできた。

そんな宇野さんを突然、悲しみが襲った。
跡継ぎだった長男の哲明さんが交通事故に遭い、50歳の若さで亡くなったのだ。

宇野保夫さん:
もう息子が亡くなって、この「現代の名工」もいらん、もうとらん、もう申請もせん言うて、もう何もせん言うて言いよったんですけど、もう大勢の人が「せっかく土俵に上がっとんのに、もう一回申請してみいや」言うて、みんなが後押ししてくれて。僕にしてみたら、(今回の受賞は)息子の置き土産のような感じがするんです。「親父に名工をとらせたい、名工をとらせたい」いうんを、いつも言いよったから

また、哲明さんの思いは、今も消えていない。
孫の悠平さん(22)が、父親と同じ表具師の道を目指しているのだ。

宇野さんの孫・悠平さん(22)
宇野さんの孫・悠平さん(22)

ーーー表具師の仕事は?

孫・悠平さん:
やっぱり難しいっすね。(祖父は)やっぱり作業が早いっすね、正確で。(現代の名工に選ばれて)やっぱり、うれしいと思うとともに、僕もプレッシャーを感じてますね

名工に選ばれた宇野さんが感じる、今、自分に課せられた使命とは…。

宇野保夫さん:
名工になった以上、名工に恥じんような仕事もしていかないかんし。これから大事なのは、若いもんの育成もしていかないかんし。一点でも日本の宝をこの世に残すのが僕の使命じゃなかろうかと思って。次世代に引き継げるように残してゆくのが僕の仕事やないかと考えております

(テレビ愛媛)

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