コーヒーというと南国のイメージが強いが、実は日本でも栽培されている。温暖化と品種改良が日本でのコーヒー栽培を可能にした。広島・瀬戸内では、この秋、初収穫したコーヒー豆の実の部分を使ったスイーツ造りに取り組んでいる。いろんな夢が詰まったその試みを取材した。

温暖化と品種改良で瀬戸内でもコーヒー栽培が可能に

広島市東区に本店をかまえる「ニシナ屋珈琲」。創業89年、地元の人に愛されるコーヒー豆の販売店だ。

ニシナ屋珈琲(広島市東区)
ニシナ屋珈琲(広島市東区)
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70年間使い続けた焙煎機。慣れた手つきで扱うのは、社長の新谷隆一さん。

新谷さんが東広島市・大芝島で2021年から取り組んでいるのが国産のコーヒー栽培。

育てている場所は、かつてビワを栽培していたという耕作放棄地。

コーヒーをとりまく状況は、いま大きな変化が訪れようとしている。温暖化で主な産地の生産力が落ちるとされている「2050年問題」
だからこそ、新谷さんはこの瀬戸内にコーヒー豆の産地としての可能性を感じているという。

新谷隆一さん:
いまから15年ほど前に瀬戸内海コーヒーアイランド構想というのを私なりにぶち上げた。2050年問題で生産国の生産量が落ちてくるので、逆にこれは我々にとってはビジネスチャンスだ。コーヒーを日本で、瀬戸内で作って、逆に海外にも輸出できると。メイドインジャパンのコーヒーを海外の方に飲んでもらうのは、これはもう究極の夢だ

新谷隆一さん
新谷隆一さん

この夢を実現すべく、新谷さんは一般の産地より寒い瀬戸内でも育つ品種改良された苗を2021年春にビニールハウスに植えた。そしてこの秋、待望のコーヒーの実がなった。

品種改良は、コーヒーの種をいったんマイナス60度まで冷やした後、解凍する方法で耐寒性と成長速度を高めたもの。

新谷さん:
実は果物なんで、食べられる。ぜひ、摘んで食べてみて

金田祐幸アナウンサー:
確かに少し柔らかくて果実の感じがある。意外と苦みがある

初収穫のコーヒーの実を食べてみる
初収穫のコーヒーの実を食べてみる

捨てられていたコーヒーの実をスイーツに

一般にコーヒー豆と呼ばれているのは、コーヒーの実の種の部分で、赤い実の部分は食べることができるが、産地ではほとんどが捨てられている。大量に廃棄されたコーヒーの実が腐敗し、環境問題になっている国もあるという。廃棄される部分を無駄にしたくないと新谷さんは思っていた。

新谷さん:
コーヒーの果実を使ったスイーツというのもひとつの方法。それをなんとか商品化できたら面白いなということで、いま、取り組んでいる最中だ

11月、江田島で行われたコーヒーの実を使ったスイーツの発表会。会場には、商品開発に携わった関係者が集った。
完成したのはコーヒーチェリーと呼ばれる実の部分を活かして作った「コーヒーチェリーアイス」

このアイスを手掛けたのが発表会の会場にもなった高級ホテル・江田島荘の小竹隼也シェフ。フランスのミシュランガイド2つ星レストランで修行したシェフだ。
今回のアイスの発表会では、アートのような盛り付けで参加者を驚かせました。

アート的な盛り付けのコーヒーチェリーアイス
アート的な盛り付けのコーヒーチェリーアイス

ホテル江田島荘・小竹隼也総料理長:
コーヒーの実はすごくフレッシュでフルーティーなので、どうしても合わせた食材に負けがちでちょっと喧嘩してしまう。

小竹総料理長:
それを防いでコーヒーチェリーを活かすために、層にして口の中に入れたときに一番はじめにコーヒーのチェリー風味と味がくる構成にした

金田祐幸アナウンサー:
コーヒーの実の青さ、苦みが残っている。ミルクアイスの甘みと相まって絶妙なバランスです

農福連携でのスイーツづくり

実は、このアイスが作られているのは江田島市にある就労支援事業所「ひまわりくらぶ江田島」。この日も障がいのある人たちが抹茶アイスを作っていた。将来的には、アイスの製造だけでなくコーヒーの実の摘み取りから参加してもらうなど、「農福連携」も考えているという。

江田島市の就労支援事業所
江田島市の就労支援事業所

瀬戸内でのコーヒー栽培は「耕作放棄地を活用」そして「捨てられていたコーヒーの実を活かしたスイーツ作り」を実現。

さらに「障がいのある人の支援」につなげることを目標に地道な努力が続けられている。

「コーヒーを通して地域を元気に」という新谷さんの思いは、このように環境問題など、いくつもの課題解決と地域活性化に貢献している。

(テレビ新広島)