家族の一員として愛するペット。癒やされる一方、どうしても避けられない不安もある。生き物であるペットも年を取り、いずれは人間と同じように加齢による衰えや病気、けがなどによる「介護」が必要になる時が訪れる。
様々な理由で手助けが必要になったペットと、その飼い主に寄り添う女性を取材した。

芝生広場がある福岡・北九州市の勝山公園。夕方になると、愛犬と散歩を楽しむ大勢の人でにぎわいを見せる。飼い主に自慢のペットの話を聞くと、「全部かわいいです! 宝物ですね」、「家族、娘みたいな感じ、なくてはならない存在」、「生活リズムは、犬のために変わります」といった声が聞かれた。

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一方で、ある飼い主からは「病気のこととか調べたり、皆さんに聞いたりしたら、ペットも人間と同じように、年を取ったら、いろいろ大変になるって」と言った不安の声も聞かれた。

ペットの「在宅介護」を…飼い主の思いに応える

尾形美玲さん。職業は「ペットシッター」だ。

ペットシッター・尾形美玲さん:
おじゃまします~。バディくん、おはよう。尾形、来たよ。バディくん、起きられる?

ペットシッター・尾形美玲さん:
はい、おいしい、おいしいね。ママの愛情たっぷりやもんね

世話をしているのは、ボーダーコリーのバディくん(15)。人間の年齢に換算すると、76歳になるという。

ペットシッター・尾形美玲さん:
前足はかろうじて動くんですけど、後ろ足は動かない状況です

バディくんは、1年ほど前から下半身が麻痺し、自力歩行ができなくなった。尾形さんは、排せつの介助や前足の歩行チェックなど、この家庭で週に2回ほど訪問介護を行っている。
バディくんの飼い主は…。

飼い主・神守裕美子さん:
年齢的なこともあって、後ろ足がだんだん弱ってきてたんですよね。で、急に立てなくなって。ただ、家族みんな、フルタイムで働いているので、どうしようかと2日ぐらい寝られずに悩んで

長年連れ添ってきた愛犬の突然の介護。仕事で日中、家を空ける日も多く、家族だけで介護を続けるのは難しい状況だった。

飼い主・神守裕美子さん:
預けに行く介護っていうのは、あるんですよね。でも、この子は車に毎日乗せていくのは不可能だし、ほかの犬とも仲良くできない子なので。これは、誰かが家に来てもらえるようなところを探すしかないと思って

近年増えている介護などが必要になったペットを預かる、いわゆる「老犬ホーム」。しかし、様々な理由で在宅ケアを希望する人は少なくない。尾形さんは、そんな思いに応えるため、ペットの在宅介護サービスを始めた。

ペットシッター・尾形美玲さん:
飼い主さんとワンちゃん、猫ちゃんを切り離して生活させるのは嫌だったので、なんとか上手に在宅ケアでカバーできないかなと思って

ペットシッター・尾形美玲さん:
飼い主の方が不安に思っていらっしゃることを、口に出してもらって。こういうことをしてもらいたいというのを、全て受け入れるようなオーダーメイド型の介護にしています

ペットと飼い主を救いたい…会社立ち上げ

飼い主にもペットにも、寄り添ったサービスをしたい。尾形さんがこの仕事を始めたきっかけは、自身の経験からだった。

ペットシッター・尾形美玲さん:
20年前くらいにゴールデンレトリバーを飼ってたんですね。その犬がガンになって、介護を始めたんですが、介護がこんなに大変って思わなくて。私も働いていましたし、すごく精神的にも参ったりしていて

尾形さんは、愛犬の介護の経験から多くのペットと飼い主を救いたいと、長年勤めた会社を退職。半年で動物介護士など7つの資格を取得し、会社を立ち上げた。

自身でも、犬やウサギなど現在、10匹の動物を飼育。これまで、500匹以上の介護や看取りを経験した。

次に尾形さんが訪ねたのは、福岡・中間市だった。

ペットシッター・尾形美玲さん:
クマくん、おはよう! おはよう、せきは出る?

中間市に住む小澤宣雄さんは現在、ポメラニアンのクマくんと暮らしている。

ペットシッター・尾形美玲さん:
せきが出る時間って、何時くらいですか?

飼い主・小澤宣雄さん:
夜中! 大体、2時くらいにゴホンゴホンってする

小澤さんは現在80歳。クマくんは10歳で、人間に換算すると60歳だ。お互いに体調を崩すことが増え、2021年12月から尾形さんのサービスを利用している。

この日、小澤さんが尾形さんにお願いしたのは、せき込みがちなクマくんを動物病院に連れて行くことだった。

ペットシッター・尾形美玲さん:
今から病院に行きます

尾形さんは介護だけでなく、飼い主の高齢などが理由で通院や散歩が難しい場合も可能な限りの世話を引き受けている。

ペットシッター・尾形美玲さん:
飼い主の方が、ご高齢で免許証を返納しているので、代わりに私たちが病院に一緒に行くことになります

到着したのは車で30分ほど離れた、かかりつけの動物病院だ。尾形さんは、小澤さんから言付かったクマくんの症状を伝え、無事に診察を終えた。

ペットシッター・尾形美玲さん:
おりこう、おりこう。大丈夫、大丈夫

そして、クマくんとともに帰宅。早速、尾形さんは小澤さんにクマくんの症状を報告した。

ペットシッター・尾形美玲さん:
せきは全然、問題ないそうです。気管支が悪いわけでもなく、心臓の雑音があるわけでもないので、ただ、どうしても気管が狭くなるので、ダイエットはして下さいっていうことです

飼い主もペットも必ず直面…抱え込まず気軽に相談を

高齢の飼い主がペットを世話する場合、その負担は想像以上に大きなものになる。頼れる人が近くにいない小澤さんにとって、尾形さんの存在は心の支えになっているという。

飼い主・小澤宣雄さん:
将来、心配ですよね。どっちが早く死ぬか。年齢からいったら、私の方が先だと思うんですよ。そういうのをいろいろ考えるんですよ。私が、急に病気になったりとか、救急車で運ばれたりした場合、どうしようかと。(尾形さんのサービスは)あらゆる面で助かりますよね

飼い主もペットも必ず直面する「老い」。介護の負担の大きさや精神的な苦しさから、ペットを手放してしまうこともあるという。尾形さんは、ペットも飼い主も幸せに暮らせるよう、抱え込まず、気軽に相談してほしいと話す。

ペットシッター・尾形美玲さん:
皆さん、悩みに悩んで心に負担を抱えてるんですよね。だけど、私たちがお手伝いすることによって、その負担が半分くらいになる。まずは「介護で眠れない」、「きつい」、そういうことがあったら、すぐにうちの方に電話してもらえればと思います

飼い主・神守裕美子さん:
自分の不安をぶつけるだけだったんですね。そしたら尾形さんが「大丈夫ですよ」って。泣きそうになったんですよ、わらにもすがる思いで。何かあったら必ず駆け付けてくれる人がいるという心強さもありますね。感謝しかないですね

(テレビ西日本)

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