11月23日に行われた、サッカーワールドカップ。強豪・ドイツ相手に歴史的な勝利を挙げた日本ですが、目標のベスト8進出に欠かせないのが、現地での快適な生活環境です。その裏には、“影の日本代表”とも言われるスペシャリストたちの存在があります。その実力とは?

選手の胃袋を支える専属シェフ 「目の前で調理」のこだわり

今回のFIFAワールドカップ カタール大会での過去最高とも言われる環境作りには、“影の日本代表”とも言える、28人のサポートスタッフの存在が大きく関わっています。

その1人が、胃袋を支える料理人、日本代表専属シェフの西芳照(にし・よしてる)氏(60)です。日本初のサッカーナショナルトレーニングセンター「Jヴィレッジ」の元総料理長で、W杯への同行は今回で5度目となります。

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日本代表の食を一手に支える西シェフですが、いまや名物とも言える“こだわり”も。
それが、西シェフ考案の「ライブクッキング」です。メインディッシュを選手の好みに合わせて目の前で調理し、提供しているといいます。

ライブクッキングが生まれたきっかけは、専属シェフとして初遠征した時の出来事でした。
作り置きのビュッフェスタイルで食事を提供したところ、食事に手を付けない選手が続出。西シェフは「料理から湯気も出ないし、いわゆる“シズル感”がない。どうやったら食べてもらえるかを考えた」といいます。

そこで、選手の食欲をそそるために考案したのが「ライブクッキング」だったのです。

勝負飯はコレだ!“試合前の夕食ローテーション”

そんな日本代表の“勝負飯”が、西シェフ考案の“試合前の夕食ローテーション”です。

試合3日前はハンバーグ、試合2日前は銀ダラの西京焼き、試合前日はウナギの蒲焼き、そして試合後はカレーライスです。

実は一度、選手が飽きてしまわないようにとこのローテーションを変更したところ、「何できょうはこれが出ないんだ」と、選手たちから怒られたといいます。
そこで西シェフは「いいパフォーマンスを発揮してもらうためにも、きちんとルーティンを守ってやっていきたい」と思い、このローテーションになったということです。

スポーツ選手にとってすべての源であり、まさに勝利の鍵を握る存在の、食事。
日本代表をブラジル大会から3大会連続で現地取材し、今大会もカタールで現地取材を行っている、サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」編集部の西川結城さんに話を聞きました。

「エル・ゴラッソ」編集部 西川結城さん:
西さんは、本当に選手たちからの信頼が厚い。
例えば森保監督が大事な試合で勝って、食事会場に戻って「西さん勝ちましたよ!」と言ったので、西さんが「おめでとうございます」という感じで返したら、森保監督が怒って「そんな他人行儀な発言やめてください。一緒に戦っているんですから」みたいな。本当にもうチームの一員という形になっています。
ただ、今大会で西さんは引退ということを表明されているのですが、日本サッカー協会の方に話を聞いたところ、協会としてはそんな簡単に辞めてもらっては困るというところがあるようで、「大会が終わってから話してみます」とおっしゃっていました。

日本代表が絶大な信頼を寄せる、西芳照シェフ。まさに影の日本代表です。

(めざまし8「わかるまで解説」11月24日放送)