旧統一教会の被害者救済に向けて、政府は新たな法案を成立させようとしている。ただ、それだけでは救われない人たちがいる。

「血統が純粋」言われ育った子供時代

噴水と満開のつつじが鮮やかな庭園。旧統一教会の″聖地″と呼ばれる韓国・清平だ。

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聖地を撮影したのは、取材を受けてくれた旧統一教会の元信者の小川さゆりさん(20代・仮名)。写真を撮った1年後に教会から身を引くことになった。

(Q.教会から離れて良かったと思う?)
小川さゆりさん(仮名):
100パーセント離れて良かったことしかないけど、もうちょっと早めに気づけたら良かったなって思っています

小川さん(仮名)の両親は共に旧統一教会の信者です。合同結婚式で結ばれた。

小川さん(仮名)はそんな2人の間に生まれた、いわゆる「祝福2世」として教会の中では特別な存在だった。

小川さゆりさん(仮名):
2世たちは「素晴らしいね、あななたちは希望だね」、「(祝福)2世は生まれながらにして1世と違って罪がなく生まれてくる」、「血統が純粋で尊い」みたいなことを言われていました

「恋愛」 教義の本には「殺人以上の罪」

小川さん(仮名)の父親は地域の教会長で、厳しく「自由」が制限された。

小川さゆりさん(仮名):
一番2世がやってはいけないのが恋愛なんですよ。特に祝福2世は「罪がなく生まれてくるので、その血を汚す」、「神様の血統で生まれてきたのに、サタンに堕落させられる」ということで、小学校の時やっていた教義の本には「殺人以上の罪」って書いてあって、淫乱の罪が。「地獄の底にいきます」

両親が毎月の収入を献金に使うため生活に余裕はなく、小学生の時からいじめも受けていた。

小川さゆりさん(仮名):
貧乏なのでおさがりばかりだし、仲間外れにされた。友達同士で手紙交換とかあるけど、自分はそういうメモとか持ってないので友達にもらったりとか、友達からもらった手紙を全部消して、自分の手紙に使ったりとか親に気を遣う子だったので、「買って」ということを言えなくて

関係者からのセクハラで心が崩れ

自由のない生活でつらい思いを抱えても教会に行くことで気持ちが紛れることもあったと話す小川さん(仮名)。やがて、自身も信仰にのめりこむようになった。高校3年の時に、教会の教義をスピーチする大会で全国2位に。

小川さゆりさん(仮名)のスピーチ:
人間が責任分担を果たして愛の試練も乗り越えて、真の愛を完成させてこそ、神様の理想、すなわち天一国ができます

しかし、この直後、祝福結婚をするための泊まり込みの研修で、教会関係者から受けた「セクハラ」によって心が崩れ始める。

小川さゆりさん(仮名):
最終日にみんなが掃除をしていて、そこで、男性の班長に「ちょっと手伝って」って言われて、みんなが見えないような個室に連れていかれて、そこで肩を抱かれて写真を撮られたり、頭をなでられたり、ほっぺを触られたりした。その後も気持ち悪いメールが届いて「返信しないと天国で合えないよ」とけっこうショック受けて

厳しい「恋愛禁止」のはずが、なぜ…。

両親には“事態を招いたのは悪霊のせい”だと言われ、韓国で行われる40日間の“精神修行”に参加させられた。

小川さゆりさん(仮名):
すごいショックなんですよね。夜に叫びだすんですよね、「死ねー」って、女の子が叫んでいて、最後に救急車が来て、両側から大人2人に引っ張られて無理やり救急車に乗せられるんですけど、めちゃくちゃ絶叫しているんですよ。なのに、みんな慣れているのか「はいはい」みたいな感じで、おかしいんですよ。自分も朝昼晩ずっと除霊をしていておかしくなってくるんですよね

小川さんも精神的に不安定な状態になり、帰国後には遺書を書いて自殺を考えるほど追い詰められていった。

小川さゆりさん(仮名):
(両親は)何も分かってくれないなって思いましたね。「神様はお前にすごく期待しているから、そういうのはすべて神様の愛の試練だな」って言われて…そこですごく泣きましたね。全然通じないなって

「救済法」だけでは救えない

20歳のころ、自宅を飛び出し、両親とも教会とも距離を置いた。それでも、旧統一教会との”切っても切れない関係”が小川さん(仮名)を苦しめる。

小川さゆりさん(仮名):
教会を本当にうらみまくったけど、でも自分が生まれたのって教会があるからで、文鮮明がマッチングしたから、自分の命があって、それもアイデンティティが崩壊しそうになる、自分の存在意義が分からなくなって…すごく死にたくなっていました。(教会がなかったら)生まれてないんで、まだ信仰2世のほうがよかったなって、両親が産みたいと思って産んでくれて、途中から入信してってほうがまだよかったなって。私もう信者増やすために生まれてきただけなので

政府が今国会中に成立を目指している救済法案は、悪質な献金被害に焦点が当てられている。

自身も旧統一教会の元信者で脱会後は2世信者のケアにあたっている東北学院大学の竹迫 之さんは…

東北学院大学 非常勤講師 竹迫 之さん:
お金だけあればいいわけではない。(宗教2世の)居場所を確保すること。しかも宗教2世の事情に多少は明るい人が、サポートにつく体制を作ることが必要だと思う。小川さゆりさん(仮名)のように自ら声を上げる人はいるが、声を上げる人をただ待つだけではなく、迷っている人たちの受け皿になるような仕組みを早急に考える必要がある

夫との出会いで気づかされたこと…

実家を離れた小川さん(仮名)。その後、教会とは関係がない今の夫と出会い、少しずつ心の整理ができるようになった。

小川さゆりさん(仮名):
相談を聞いてくれて、そこから自分が信じてしまっている部分を正直に話して、教会の教えのここは正しいと思うけどどう思うかとかずっと話していて、すごくいいアドバイスをくれて。バランスよく物事を見られる人なので、夫と話していて洗脳が解けて、間違いに気づけて

小川さん(仮名)、ことし春には長男を授かり、母親になった。

小川さゆりさん(仮名):
守りたいって思って。家庭の中って狭い空間で、その中で何が行われているか外からはすごく見えづらくて。宗教的な虐待は、本人たちも加害者意識がなくて、被害者意識もなくて、間違いが認められる世の中にならないと

小川さん(仮名)は、自らの人生を伝えることで宗教2世への社会の理解がすすみ、信仰の自由の名のもとに不利益を受ける子どもたちがこれ以上増えないことを願っている。

 聞き手 関西テレビ・加藤さゆり記者

 (関西テレビ「報道ランナー」2022年11月22日放送)