信州のヘーゼルナッツ。8年前、長野市の男性が栽培を始めてから県内に広がり、今や有名パティシエも注目する食材に。第一人者の男性は「信州の特産品に」と意気込んでいる。

地元産のヘーゼルナッツを使ったアイス

おいしそうな、やわらかアイス。ここは長野市上駒沢の「しぼりたて生アイスの店ふるフル」。一番人気は…

ヘーゼルナッツを使ったアイス(しぼりたて生アイスの店ふるフル・長野市)
ヘーゼルナッツを使ったアイス(しぼりたて生アイスの店ふるフル・長野市)
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客:
ヘーゼルナッツが人気と聞いたので。すごい、ヘーゼルナッツが濃厚

アイスに使われているヘーゼルナッツ、実は「地元産」だ。

 
 

客:
地元でナッツが取れるなんて知らなかったので、すごい

店の裏に畑が広がっている。

ふるフル・岡田浩史さん:
これがヘーゼルナッツの木です。なかなか日本で見た方はいらっしゃらないと思うんですが、無事、8年前に植えて3年目からだんだんと実がなってきている

ヘーゼルナッツはお盆過ぎから9月にかけて実をつける。今、枝についているのは雄花。春になると雌花も咲き、また実をつける。

ふるフル・岡田浩史さん:
当初は何もわからない状態だったので、花がいつ咲いているかも分かってなくて

トリノで出会い 長野で栽培を始めた

店のオーナーでヘーゼルナッツの生産者、岡田浩史さん(62)。栽培を思いついたのは、仕事でイタリアを訪れた時のことだ。岡田さんは長く食品加工機械の輸入商社に勤務。世界を飛び回る中、イタリア・トリノで見たことのない果樹園を目にした。

右から2人目が岡田さん(提供・岡田さん)
右から2人目が岡田さん(提供・岡田さん)

ふるフル・岡田浩史さん:
雪の中に育っている木が全く見たことのない木だったんですね。360度全部、その木が生えていて、通訳に『この木は何だい?』と尋ねたら、『これが世界で一番おいしいと言われるヘーゼルナッツの木です』と言われた時に全身鳥肌が立って、“じゃあ長野でも作れるじゃん”と思って

トリノのあるピエモンテ州の畑
トリノのあるピエモンテ州の畑

トリノは長野と同じく冬季オリンピックの開催地。調べてみると、やはり気温や雨量が長野県と似ていた。

確信を抱いた岡田さんは53歳で会社を辞め、ヘーゼルナッツの栽培に乗り出す。前例はなく農業経験も「ゼロ」だった。

提供・岡田さん
提供・岡田さん

ふるフル・岡田浩史さん:
左も右も分からない、ゼロからのスタート。一番、ギャンブルでもあったんですけど、実際にやってみて、管理がとても楽なんですね。とにかく普段は草を刈るだけ。(3年目に)実を見てからは世界が明るくなりました

ふるフル・岡田浩史さん
ふるフル・岡田浩史さん

焙煎し加工 香ばしい香りの生アイスに

長野でも栽培できる―。手応えを感じた岡田さんは遊休農地を借りて畑を広げ、アイスクリーム店にも力を入れている。

ふるフル・岡田浩史さん:
栽培するだけでなくて、加工して販売するまでが農業という考え方が重要かなと

店では焙煎した実を毎日、アイス用に加工している。成分は油脂と食物繊維がほとんど。粉砕してから、こちらの機械に入れるとペースト状になる。

ふるフル・岡田浩史さん:
こんな感じで少しずつ、少しずつ…。すごく根気がいる作業なんですよ

アイスは長男の晃治さんが早朝から、その日、売る分だけを作る。ペーストに牛乳などを混ぜ合わせたものを殺菌と冷却をする機械へ。すると、やわらかなアイスが出てきた。

長男・晃治さん
長男・晃治さん

ふるフル・岡田浩史さん:
一度も冷凍しないというところが一番大切なところ。-9度くらいでマシンから出てくるので、すごくやわらかい。だから一番おいしい

カチコチに冷凍しなくてもアイスが作れるこの機械、岡田さんが会社員時代、イタリアから輸入していた「優れもの」だ。

ふるフル・岡田浩史さん:
これはわが子のような…。(自分が使うとは?)まったく想定していなかったですね

ヘーゼルナッツの味、香りを最大限に引き出した「生アイス」だ。

(記者リポート)
ヘーゼルナッツの生アイス、いただきます。やさしい、香ばしい香りがいっぱいに広がります。濃厚なんですが、さっぱりとした後味です

有名店ショコラティエ絶賛

栽培と加工に成功した岡田さん。さらなる「夢」がある。

11月15日、長野を訪れたのは国内外で活躍するパティシエたち。会社員時代から付き合いがあり、視察や試食をしてもらった。

国内外で活躍するパティシエたちが訪問
国内外で活躍するパティシエたちが訪問

ミュゼ・ドゥ・ショコラ テオブロマ・土屋公二さん:
イタリアですごくヘーゼルナッツのアイス食べたんですけど、それよりうまいです。これが長野でできる?最高ですね

これまで輸入品に頼るしかなかったため、菓子職人たちも熱視線を送っている。

モンサンクレール・辻口博啓さん:
焼き菓子やチョコレート、いろんなところに使われていく、新しい素材。長野から全国に発信する、世界に発信する、そういう素材なんじゃないか

土屋公二さんは東京・渋谷の有名店「ミュゼ・ドゥ・ショコラ・テオブロマ」のショコラティエ。2021年、岡田さんのナッツを使ったチョコを世界的なコンクールに出品。見事、銅賞に輝いた。

ミュゼ・ドゥ・ショコラ テオブロマ・土屋公二さん:
この距離で新鮮なものが、最高品質なものが手に入ることは、本当にラッキーなこと。世界で戦える材料だと思います

「信州を一大産地に」菓子業界と連携 

岡田さんの次の夢は、ヘーゼルナッツの「特産品化」だ。15日は生産者も集まり、信州産ヘーゼルナッツの研究会を発足させた。菓子業界と連携して生産の拡大を図っていく。夢実現の「下地」は、できつつある。

「遊休農地で栽培でき、手間もかからない」と岡田さんが広めたところ、県内の生産者は375人、木の本数にして6000本近くに増えた。国内生産量の95%を長野県が占めている。

諏訪市・藤森明浩さん:
この木辺りが2020年の4月に植えたもので、もうだいぶ大きくなっています

諏訪市の藤森明浩さんは、定年退職を機に自宅裏の畑で栽培を始め、3年目のこの秋、初めて雄花が付いた。

諏訪市・藤森明浩さん:
このまま実が早くつかないかなという気持ちだけですね

藤森さんは岡田さんの店で修業し、既に「生アイス」の店をオープンさせている。ここでもヘーゼルナッツのアイスは大人気。

今は岡田さんから買い取っているが、来年以降は自身が栽培した実を使いたいと話す。

「信州をヘーゼルナッツの一大産地に」。
8年前、たった一人で始めた挑戦が今、多くの人が期待する取り組みへと成長している。

ふるフル・岡田浩史さん:
とにかく生産者をまず増やしていく。そして信州が中心となってヘーゼルナッツを生産し、これからは国産のヘーゼルナッツがどんどん皆さんに召し上がっていただけるように 活動をずっと続けていきたいというのが一番です

(長野放送)

記事 753 長野放送

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